楽しく役立つ健康講演会

介護

高齢化に備えて地域でできること ~認知症の理解を深める~

投稿日:2016年12月1日 更新日:


はじめに

高齢化が進んでいます。京都市の場合、9年後の2025年には、団塊の世代がすべて75歳以上になり、市民5人に1人の割合に。65歳以上の高齢者でみると、43万人で高齢化率は30%を超えます。これに伴って、認知症の増加も予想され、2025年には認知症高齢者は8万7千人、軽度の認知症予備軍は約6万7千人、合計では15万人を超すと予測されています。住み慣れた地域で暮らし続けるために、認知症に対する理解を深め、見守りや声掛けなどを行い、高齢者が孤立しないように、地域で支えることが重要です。

認知症はどういうものか?

いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなってしまったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(6カ月以上)です。脳の細胞がゆっくり死んでいくタイプには、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、前頭・側頭葉型認知症が、脳の血管が詰まったり一部の細胞が死ぬタイプには脳血管性認知症があります。いずれも病気です。

認知症の症状

認知症の症状は、中核症状と行動・心理症状に分かれます。中核症状は、認知症の人に必ず現れる症状です。行動・心理症状は、性格・素質や環境の影響を受け、全ての人に現れるわけではありません。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

認知症の中核症状

中核症状には、記憶障害や見当識障害、実行機能障害などがあります。

記憶障害

脳の中で記憶を司る海馬が萎縮することで起こります。子どもの頃の話とか、古いこと(長期記憶)は覚えているのに、直前の短期記憶が失われ、何回も同じ質問をするなどの言動となって現れます。

アルツハイマーの人は脳細胞が萎縮して、黒い部分が増えている。

記憶の仕組みをわかりやすく図解したイラスト。ツボの底に古い記憶があり、新しい情報が積み重なる。若いときは記憶のツボに出し入れするのが早いが、やがて出し入れが遅くなり、認知症になると新しい情報を入れられなくなり、進行するとツボが壊れて入っていた情報も出ていってしまう。

見当識障害

見当識とは、現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど基本的な状況を把握する能力です。見当識障害はまず、時間や季節感の感覚が薄れることから始まり、進行すると迷子になったり、遠くに歩いて行こうとします。人間関係の見当識(娘のことを母親と思ったりする)は、かなり進行してから起こります。

理解・判断力の低下

考えるスピードが遅くなる(外食時に注文がなかなか決められない…)、二つ以上のことが重なるとうまく処理できなくなる、いつもと違う出来事(お葬式、入院など)で混乱を来しやすくなる、目に見えない仕組み(ATMやIHコンロなど)が理解できなくなる…などが起こります。

実行機能障害

料理のように計画を立てて案配することができなくなる。計画性や注意分配能力、予測能力が失われる。

感情表現の変化

その場の状況が読めない。記憶障害や見当識障害などのために、正しい解釈ができなくなっているために起きる変化で、ご本人のことをよく理解していれば、本当に不自然な行動とは言えない場合も多いです。

認知症の行動・心理症状

行動・心理症状の理解のため、つぎのようなケースを想定してみましょう。



今のあなたの気持ちはどうですか?
焦り(誰かいないかなあ)
不安(みんな、どこにいったんかな)
混乱(どうしよう)
といった気持ちになるでしょう。

その時、どんな行動をとりますか?

いわゆる「徘徊」も、このように考えれば、周囲の人にはわからないことでも、ご本人には理由や原因があることが分かります。

このように、焦りや不安、混乱に見舞われている場合、どのように接してほしいですか?

「どうかしましたか」「何か探し物ですか」…と、優しく接してもらえれば安心します。怒ったりすると逆効果です。

行動・心理症状(周辺症状)とその支援

  • 元気がなくなり、引っ込み思案になることがある
    認知症の初期に、ご本人は漠然と気付いています。記憶力などの能力の低下を自覚して、本を読んで、やっぱり…とさらに落ち込んだりします。自信を失い、全てが面倒になります。将来の望みを失って、うつ状態となる場合もあります。このような場合、周りの人は、ご本人に恥をかかせないように接することが大切です。
  • 身の回りのことに支障が起きてくる
    排泄の失敗を例にとると、トイレの場所がわからなくなる、衣類の着脱に手間取る、切迫するまで尿意・便意を感じなくなる、尿意・便意を全く感じなくなる…などが原因で漏らしてしまう結果となります。支援策には、「トイレ」と書いた紙をはる、ゴムで脱ぎやすい服に代える、時間をみてトイレにいざなう、おむつをはいてもらう…などがあります。
  • 周囲の人が疲弊する精神症状:
    もの盗られ妄想が典型です。いつもと違う場所にしまったことを忘れて、もの盗られ妄想に。さらに複雑な妄想になることもあります。もともと疑り深い人や用心深い人が、もの盗られ妄想に発展しやすいです。支援の方法としては、頭ごなしに怒らずに一緒に探してあげる、などがあります。向精神薬を飲むと収まる人もいます。専門医に相談してください。

認知症の方の対処の原則

認知症の方が引き起こす困った行動への対処の原則は、以下の通りです。

認知症の人と接するときの心がまえ

  1. 「認知症の本人には自覚がない」は大きな間違い
    ご本人の方が先に「おかしいな」と気付きます。
  2. 「私は忘れていない!」に隠された悲しみがある
    やり場のない、自分に対する怒りや悲しみへの自衛反応として理解すべきです。
  3. こころのバリアフリーが必要

認知症の人は、すがる“杖”がない心境です。障害を理解して、さりげなく手助けすることが一番の“杖”になります。

3つの「ない」を心得て

  1. 驚かせない。
  2. 急がせない。
  3. 自尊心を傷つけない。

地域の付き合いを大切に

認知症の人がいるからといって、付き合いを変える必要はありません。ふだんからの住民同士の言葉掛けが大事で、それがいざという時に困らないことにつながります。認知症の人は、せかされると怖がりますし、たくさん聞かれると混乱します。相手の反応を見ながら、余裕をもって語り掛けてください。「何かお困りですか…」「お手伝いしましょうか…」など、ゆっくり、はっきりした声を掛けてあげてください。
だれでも認知症になる可能性がある時代です。地域で支えていけるように、お互い協力し合いましょう。地域包括支援センターも、さまざまなご相談に応じますので、お気軽にお声掛けください。

介護サービス

介護サービス ホームページ

洛和会ヘルスケアシステム 介護事業部
〒600-8461
京都市下京区仏光寺通油小路東入木賊山町171
TEL:075(353)5802(代)

カテゴリー1-介護
カテゴリー2-

関連記事

こんなときに訪問看護師が伺います!

開催日:2018年5月24日 講師:洛和会訪問看護ステーション東大路 主席係長 看護師 木全 千子(きまた ちこ) はじめに 2000(平成12)年に介護保険が制定され、訪問看護が介護保険のサービスと …

デイサービスにおける認知症ケア

はじめに 厚生労働省の調査によると、65歳以上の人口のうち7人に1人が認知症にかかっており、。高齢者人口に比例してさらに増加する可能性があるといわれています。今日は認知症の基礎知識と予防法やデイサービ …

介護保険とケアマネジャー ~困ったときの相談窓口~

開催日:2016年6月9日 講師:洛和会医療介護サービスセンター丸太町店 係長 介護支援専門員 高木 美紀(たかぎ みき) はじめに 介護保険制度は、3年ごとに改正されています。負担割合や対象者の範囲 …

“サルコ→ロコモ→介護”を食い止めろ!!

開催日:2017年6月7日 講師:丸太町リハビリテーションクリニック リハビリテーション部 健康運動指導士 田路 真由(とうじ まゆ) はじめに サルコやロコモという言葉を聞かれたことはありますか?い …

看護小規模多機能サービスって何?

はじめに 「看護小規模多機能サービス」という言葉を知っておられる方はいらっしゃいますか? やはり少ないですね。聞き慣れない人がまだ多いと思います。介護保険がスタートした後、遅れてできたサービスで、まだ …