日本の未来、高知を訪問して|TOP MESSAGE vol.6
高知の社会医療法人 近森会近森病院(近森正幸理事長)を訪問しました。日本で人口が70万人前後または70万人を下回る都道府県は、徳島県70万人、高知県67万人、島根県65万人、鳥取県54万人の4つで、いずれも高知・徳島、島根・鳥取で参議院議員の選挙区が合区されている地域です。当会が拠点を置いている京都府255万人、滋賀県140万人、東京都1400万人に比して、人口減少が進んでいるということが明らかです。実際、タクシーの運転手さんと話しながら高知市内のはりまや橋付近を訪問すると、若者の流出にコロナ禍が追い討ちをかけている状況で、サービス業も大変厳しいという声を聞きました。看板の明かりも少なく、シャッターが閉まったままの店舗も多かったです。ちなみに、翌朝モーニングで寄った喫茶店はご高齢の皆さんで大盛況でした。
今回は、人口減少と労働人口の減少という点において、「日本の未来の先頭をいっている地域」で、民間急性期病院が医療提供を続けるために必要なことを考えました。
結論は、今の当たり前を変えるしかない、ということにあります。医師の働き方改革、チーム医療・タスクシフトの具体化が必須です。患者が中心にいて、診療看護師、薬剤師、管理栄養士などの医療専門職が主体性を持って患者に介入することで、専門性をアップする体制を組むことが求められます。病棟薬剤師から医師に対する処方提案など、専門職が患者にアプローチすることで、医師が診断と治療に特化し、診療周辺業務、診療外業務をどんどん外部化して、医療の質と労働生産性が高まります。医師の労働環境を劇的に改善させるというミッションに向けて、多職種による病棟常駐型チーム医療を実践することが必要です。
近森病院では、管理栄養士が患者さんの状態を把握し、医師に提案をする仕組みが数十年前から構築されています。
働き方改革によって、医師は今までのように自由な働き方はできなくなります。医師も医療専門職の一スタッフとして業務に取り組むことが求められます。各科の診療部長は労務管理者として医師の勤務を管理しなければなりません。
これからの時代を生き抜くには、未来を見据えてきっちりとロジカルに政策を打ち続けることが必要です。それができれば外部環境が厳しくても、近森病院のように医療の提供が続けられます。「人口70万人を切ると異次元である」というお言葉が印象的でした。
最後に、3年ぶりの近森病院訪問で思い出したことがありました。それは病院案内をしてくださる近森理事長の歩くスピードが非常に速いことです! 若いわれわれが置いて行かれるくらいのスピードです。
足腰を鍛えて基礎を固めること、先を見据えて超高速で走り続けることはまさに近森理事長が実践されてきた経営そのものだと気付きました。
当会も外部環境を言い訳にせずに、スピードを上げて、日本のヘルスケア業界の先頭を走れるような組織に変革していこうではありませんか。