正しさの取り扱い説明書

正しさの取り扱い説明書

「『正しさ』に取り扱い説明書をつけてください。」
これは私が当院の面接で実際にされた質問です。
面接終了後から、今でも時折、この質問が頭をよぎることがあります。
このブログを読んでいる方はどう答えるか、よければ少し読むのをやめて考えてみてください。

以前から、人間の細胞の数は60兆-70兆個と見積もられています。実際に、「人間 細胞の数」とGoogle検索すると「60兆」と出てきます。
しかし、本当の人間の細胞の数は37兆個ではないかという報告があります(Bianconi E, et al Ann Hum Biol. 2013, PMID: 23829164.)。

そもそも、60兆という数字は、大体の人間の体重と細胞の平均質量から割り出されたもので、先述の論文のように実際に数え上げようとして求められたものではないらしいです。(詳細は、原著論文または『知の体力』永田和宏著をご覧ください)

「『正しさ』そのものに絶対的な意味はなく、サイエンスの世界で常識とされていた事柄が、実は全くの間違いであった、ということはままある。あくまでも『正しさ』は、その時、その場所において、何かを判断するために使うべきだ。」
といったような回答ができていたらスッキリしたのかなと思っています。
もしもっと良い回答をお持ちの方がいたら教えてください。

「人間の細胞の数」のように、答えを見つけることが難しくても必ず答えが存在する問題は、調べることで解決ができます。研修医としては少なくとも、このように答えが存在する問題に関しては教科書や文献、上級医の指導の中から一つずつ吸収していかなければいけないと思います。

その上で、例えば、「人はどのように生きるべきか」のように、答えが存在しない問題も医療者として働く上で出会うこともあるはずです。
一朝一夕に身につくものではないでしょうが、多くの経験や知識からその問いへのアプローチ方法を見つけていけたら良いかなと思います。
まさに、「正しさの取り扱い方」にも正解はないでしょうし、このような答えがない問題への取り組み方を見るのも、面接官の意図の一つであったかもしれません。

学生時代から本院には実習でお世話になってきましたが、実際に1カ月ほど働いてみて多くの優秀な上級医やコメディカルの方々に囲まれて充実していると感じます。
特に救急外来での経験や日々の勉強会が自分の成長につながっていると思います。

誰にとっても良い研修病院はありませんが、あなたにとってベストの研修病院はきっとどこかにあると思います。

もし興味があれば、ぜひ見学に来て当院の雰囲気を感じてみてくださいね。お待ちしています。

担当:洛和会音羽病院 ジュニアレジデント1年次 小國綜一郎