京都府内の少年スポーツの発展とけが予防のために
丸太町リハビリテーションクリニック 理学療法士/専門理学療法士(運動器)
松井 知之(まつい ともゆき)
経歴
福井県出身。福井県立若狭高等学校卒業後、土佐リハビリテーションカレッジを経て京都府立医科大学附属病院へ入職し、約15年にわたり理学療法士としてリハビリテーション(以下リハビリ)に携わる。その後、2015(平成27)年に洛和会ヘルスケアシステム 丸太町リハビリテーションクリニックへ入職し現在に至る。専門分野は、運動器リハビリテーション、スポーツリハビリテーション、バイオメカニクス、テーピング療法など。2008(平成20)年から京都府内の小学生~社会人のスポーツ選手に対し、メディカルチェックを中心とする社会活動を開始。現在はNPO法人京都運動器障害予防研究会で理事も務めている。
※2018.3.20時点
スポーツとの関わりについて教えてください
小学校から高校まで野球をしていました。若狭高校(福井県)の野球部時代には県大会でベスト4までは進めたのですが、残念ながら甲子園には行けませんでした。高校3年の夏の大会で一回戦負けをしたことでプレイヤーとしての限界を感じ、野球やスポーツに関わりたいとの思いから理学療法士を目指しました。。
理学療法士という職業を選んだきっかけは?
私の祖父が山で木を切っていた時に転倒してチェーンソーの上に座ってしまい、坐骨神経を切る大けがをしてしまい、歩けなくなってリハビリを受けていた時期があったんですね。その時に理学療法士という存在を知り、みるみる良くなっていく祖父を見て、いい仕事だなと思いました。理学療法士について詳しく調べていくうちに、プロスポーツ選手のトレーナーをしている人もいて、すごく魅力を感じましたね。もともと理論的に考えるところがあるので、トレーナーが選手のためにいろいろ考えたり、トレーニングを組んだりするというのもイメージとしてしっくりきたんです。
京都府立医科大学付属病院(以下、府立医大)で得た一番大きなものは?
一番大きな経験としてはバイオメカニクスを学んだことですね。私が勤務するずっと前から府立医大はバイオメカニクスが有名で、先輩からたくさんのことを学びました。現在の私の診療はこのバイオメカニクス的な観点が基礎になっています。府立医大では「立ち上がる」「歩く」「階段の昇り降り」といった動作を解析してきましたが、基本的な動作の観点というのは同じなので、それがスポーツの動作解析にもとても役立っています。丸太町リハビリテーションクリニック(以下、MRC)には最新の三次元動作解析装置が入っており、開院から3年間で500人以上の選手、患者さんの動作を解析してきました。
スポーツリハビリに携わるきっかけはどんなことですか?
私の恩師で、府立医大准教授、当クリニックの非常勤医師でもある森原徹先生が、スポーツ整形外科に力を入れられていたんです。そのサポートとして声を掛けていただいたのがきっかけですね。2008年から高校野球の大会サポートやメディカルチェックといった活動を始めました。当初は有志による集まりだったのですが、2014年にNPO法人京都運動器障害予防研究会を立ち上げました。現在はNPOの活動として、京都市内の小・中・高校の野球選手、女子プロ野球の全選手への肩肘検診、社会人チームの選手へメディカルチェックなどを休日のライフワークとして行っています。
MRCへ来られた理由は?
府立医大に勤務していた当時、スポーツの現場から「京都市内にスポーツリハビリ専門の施設が欲しい」という声をたくさん聞いていました。スポーツ選手が肩や肘が痛いだけで大学病院を受診するのって敷居が高いじゃないですか。もっと気軽に診てもらえて、選手たちが集まれる拠点になる場所があったらいいなと思っていたんです。そんななか、最新の設備を備えたMRCが開設するということでとても期待をしていました。まさか私に声が掛かるとは思ってもいなかったのですが、森原先生や盛房院長に声を掛けていただき、意を決して飛び込むことにしました。いろいろと悩みましたが、京都府、京都市の子どもたちが元気にプレイを続けられるように、そしてスポーツ医学とスポーツリハビリの発展のために、MRCが果たせる役割はとても大きいと感じたので、微力ながらその役割を担わせていただくことにしました。
MRCの強みはどんなところですか?
全国的に見てもこれだけの設備とスタッフが整った施設は本当に数少ないですし、あってもへき地にあることが多いんですね。街の中心に500平米もの広さがあって、最新の機器やトレーニング設備も整っている施設というのは本当に貴重です。全国へいろいろと視察に行きましたが、いまのところMRCに勝る施設は見たことがないですね。スポーツ選手にとってはすごく助かる施設だと思います。またハード面だけではなく、各スポーツ動作に精通した理学療法士が多数在籍しています。ただ単に痛みを取る、だけではなく、「動作」をチェックし、競技復帰に向けた本格的なスポーツリハビリを行えることですね。
女子プロ野球チーム「レイア」のサポートも始まりました
レイアへのサポートは仙台から京都へ移転した2017年度からMRCで始まりました。プロ野球がシーズン入りする4月から12月までの期間に月1回メディカルサポートを行っています。レイアは若手中心の育成チームなので、けが予防だけでなく、選手たちが自分たちでケアできるような基礎的なトレーニング指導、自身で行えるケアの方法なども紹介しています。1年間行ってみて課題も見えてきました。時間が許せばグラウンドへ足を運んで実際の練習や試合を見た上で指導ができたらいいですね。
学校へのサポートも行っていますね
現在は、京都市立嵯峨中学校、京都市立京都工学院高等学校(元京都市立伏見工業高校)ラグビー部、京都産業大学サッカー部へメディカルトレーナーとしてサポートを行っています。嵯峨中学校では学校長からの依頼があり、全校生徒を集めて特別授業も行いました。また月に1・2回、全校生徒向けの運動器健康相談や全運動部のキャプテンを集めて、ストレッチやトレーニングの指導も行っています。伏見高校ラグビー部と京都産業大学サッカー部に関しては、MRCの理学療法士がトレーナーとして学校に出向いて活動をしています。今後は嵯峨中学の事例をモデルケースとして、地域密着型の施設、地域のさまざまな学校との連携を強めて、子どもたちのけがの予防に役立ちたいと思います。また学校の先生からも気楽にけが予防などを相談してもらえるような環境を作っていきたいと考えています。
MRCが今後目指したいものは?
府立医大当時は外来で見られても10人程度だったのが、ここでは一度に50人でも見ることができます。クリニックとしてはスタッフの数も19人と多いですし、若くてやる気のあるメンバーが揃っています。またここには治療機器だけでなく、評価機器(測定機器)も揃っています。リハビリだけではなく、体力チェックや健康チェック、トレーニングもできる、スポーツ医科学センター的な役割も担った施設を目指したいです。
最後に松井さんの将来的な夢・ビジョンを教えてください。
MRCが開設してから3年以内に地域に根ざしたスポーツの駆け込み寺のような存在にしたいと考えていました。徐々にスポーツ選手が噂を聞いて集まってくれています。5年以内には全国に名をはせる施設にしたいです。MRCに来れば早く復帰できる、けがの前より動きが良くなった!と感じてもらえるような施設にしたいです。あとは「後輩の育成」ですね。私が行っている活動を、10年、20年継続するには、後輩の育成が重要です。後輩たちと一緒に、もっともっと科学的根拠に基づいた評価・治療法を追求し、スポーツリハビリテーションにおける「最善の評価・治療技術の確立・標準化」をすること、それが私の目標です。
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丸太町リハビリテーションクリニック
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