洛和会音羽病院の「こころと発達の子ども相談外来」が、開設から6年目を迎えました。社会の中で育っていく過程で困りや悩みを抱える子どもを診療しています。
洛和会音羽病院 小児科
部長 前田 真治(まえだ しんじ)
専門分野
小児科全般、新生児医療
専門医認定・資格など
日本小児科学会専門医
小児科臨床研修指導医
発達障害のための「こころと発達の子ども相談外来」
当科の「こころと発達の子ども相談外来」では、成長の過程で困りや悩みを抱える子どもを診療しています。初診で年間200人前後が来られますが、コロナ禍のためか不調を訴える子どもがさらに増えています。診療では初めから小児科医、臨床心理師と看護師が当ります。小児科的な診察を始め心理検査を行うなどして、どのようなことが困難であるかを明らかにします。そして各人に見合った治療・支援を子ども自身やご家族と一緒に考えます。
心理カウンセリングはもとより、園や学校の先生と連携し、地域の児童発達センターと連絡を取り合い、必要があれば精神科医とも相談し、さまざまな大学の心理学教室にも支援をお願いしています。
最近では多職種と連携することにより、院内で支援できることが増えました。今回は発達障害の支援チームをご紹介します。
□早期発達支援士(看護師)による家族支援外来
□対象を拡大した心理カウンセリング(有料)
リハビリの動きは動画でチェック
作業療法士・言語聴覚士による「リハビリテーション」
作業療法士は、食事や入浴といった日常生活に支援が必要な子どもに対するリハビリテーション(以下リハビリ)を行っています。発達障害のある子どものなかでも「落ち着きがない」「座っていられない」といった特性をもっている子どもは、字を書くことやおはしを使うことなど、手先の細かな使い方が苦手になります。そのため、縄跳びやバランスボールを使ったりリハビリで体幹を鍛え、姿勢を良くするために筋肉を使った運動を行います。また、ボールを投げたり、パズルをするなど、遊びを通して細かな手の動きを学びます。
言語発達障害の種類は多種多様であり、言葉の発達全般の遅れがあるのか、発音の問題なのか、対人関係の問題があるのか、そこを明らかにすることから始まります。
発達障害のなかでも「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)」と診断された方は、言葉の裏の意味が分からないという特徴があります。例えば暑いということに対して、「のどが渇いた」「クーラーを付けてほしい」という意味が含まれていることがありますが、うまく読み取れない人もいます。「理解力がない」「うまく物事を他人に伝えられない」「語彙が少なく表現力に乏しい」などにより、他者とコミュニケーションがうまくいかず、友人関係で困ったり、集団生活に支障を来たしたりする人もいます。言語聴覚士によるリハビリテーションでは、絵本を読んだり、絵カードの練習をしたり、文字を書いたりといったことをゲームをしながら伝え、楽しい集団生活が送れるように学習します。
看護師による「家族支援外来」
保護者が適切に子どもをサポートするために必要なのは、発達障害の特性についての正しい理解です。集団生活のなかでどういう行動が問題につながるのか、ということをしっかりと考えることが子どもをサポートする上では大切です。特に就学前後は見通しがたたず、ストレスを抱える方は多くいらっしゃいます。新しい環境に踏み出す前に、どういう準備が必要なのかを一緒に考えましょう。場合によっては学校にも協力してもらう必要があるかもしれません。
また、どうしても障害のある子どもに注目がいってしまい、その兄弟が孤独に感じてしまうことがあります。そういった二次障害を防ぐことも支援をする上で大切だと考えています。家族の負担は大きいので、看護師としては、できる限り家族をサポートし、状況を聞き取りし、対応を考え、寄り添うことが大切だと考えています。状況や問題は千差万別。しかし、同じような体験をしている方を知ることは心強さにつながります。今後は、保護者同士で交流してもらえる場を設けたいと考えています。
公認心理師による「心理カウンセリング」
心と発達の子ども相談外来では、子どもとそのご家族を対象としたカウンセリングを実施しています。本人が抱える人間関係や勉強の困り、不安や気持ちの落ち込みなどの心理的な問題に対して、カウンセリングを行っています。また、ご家族に対しては、ペアレントトレーニングという方法を用いて、発達障害をもつわが子にどのように関わったらよいかや、困りを抱えるお子さんのサポートをどのようにしたら良いかなど、公認心理師が一緒に考えていきます。
お問い合わせ
洛和会音羽病院 小児科
TEL:075(593)4111(代)
公開日時 : 2021年05月01日 (土)