滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)は、鼓膜の奥(中耳)に液体がたまる、子どもに多い耳の病気です。
急性の炎症がなく無症状で気付かれないことも多いため、放っておくと難聴になりやすく、言語の発達や学習への影響、鼓膜の変化などが残ることもあります。
今回お話を伺ったのはこちらの方!
滲出性中耳炎とは?
耳は大きく外耳(がいじ)、中耳(ちゅうじ)、内耳(ないじ)の3つの部位に分けられます。中耳は空洞になっていて、内腔は粘膜で覆われています。中耳は鼓膜によって外耳と隔てられているため、外耳から中耳への空気の入れ換えはできません。中耳は耳管という管で鼻とつながっており、中耳への空気は、鼻の奥から耳管を通じて入ります。その空気が鼓膜の裏から耳小骨の周りのスペースを通ることで中耳の奥深くまで換気されています。
その換気が損なわれると中耳に液体がたまり、鼓膜の動きが悪くなって聞こえにくくなる病気が、滲出性中耳炎です。
原因
原因はさまざまですが、以下の場合が多く見られます。
1.急性中耳炎
急性中耳炎になり、耳痛・発熱などの諸症状が解消されたからと完治する前に治療をやめてしまうと、中耳腔内に炎症が残ってしまうことがあります。この残った炎症により中耳の圧力が下がり滲出液を分泌することで滲出性中耳炎となります。
特に0~2歳くらいの子どもは急性中耳炎後に滲出性中耳炎になりやすいので、急性中耳炎をしっかりと治療することが大切です。
2.鼻炎・副鼻腔炎、アデノイドの肥大
耳管は鼻の奥にあるため、アレルギーによる慢性的な鼻炎や副鼻腔炎がある場合には、炎症によって耳管の出入り口が浮腫んでしまい、中耳の喚起が十分に行われなくなる可能性があります。また、アデノイドとは鼻の一番奥、喉との間の上咽頭にある扁桃(リンパ組織)です。アデノイドは通常2歳頃に大きくなりはじめ、6歳頃に大きさのピークを迎えた後は小さくなっていきます。しかしお子さんによっては、6歳を過ぎても小さくならないケースもあります。アデノイドが肥大したままだと、炎症の温床となり副鼻腔炎などがなかなか治癒せず、滲出性中耳炎を発症しやすくなります。
特に3~6歳の子どもは、鼻炎や副鼻腔炎、アデノイド肥大が原因で滲出性中耳炎になることが多いです。
滲出性中耳炎の主な症状
お子さんに以下の症状がないか、チェックしてみてください。
- 風邪をひきやすく、咳や痰が続いている
- 鼻炎や副鼻腔炎で、鼻水や鼻づまりが続いている
- 大きないびきをかく(アデノイド肥大の疑い)
- 耳が詰まったように感じる(耳閉感)
- 耳を気にする、頭を振る
- 話がうまく聞き取れず、聞き返すことが多い(難聴)
- 大きな声で話す
- テレビを見る時に近づく、ボリュームを上げる
- 呼び掛けても反応しない
滲出性中耳炎かも?と思ったら
まずはかかりつけの耳鼻科を受診しましょう。
薬物療法や鼻水の吸引などの治療を受けながら、3カ月ほど様子をみます。それでも改善がみられない場合は手術などを行います。
・鼓膜換気チューブ留置術
主な手術療法は、鼓膜に小さなチューブを入れる「鼓膜換気チューブ留置術」です。鼓膜に小さなチューブを挿入し空気が入るようにすることで、中耳にたまっている液体を耳管から排出するよう促します。
小さなお子さんの場合は全身麻酔で行います。換気チューブを入れておく期間は、長くて2年程度ですが、途中で抜けてしまうことも少なくありません。抜けてしまった場合は必要に応じて再度チューブを入れ直します。
<チューブ挿入前の鼓膜>
<チューブ挿入後の鼓膜(チューブは直径約3mm)>
・アデノイドの切除
アデノイドは、上図のように耳管の出口にあり、耳や鼻の慢性の感染のもとになっていると考えられています。鼓膜換気チューブ留置だけでは効果が不十分な場合にアデノイド切除も行います。
患者さんへのメッセージ
当院では、かかりつけ医にて滲出性中耳炎に対して薬物療法などを行っても改善しない場合、紹介を受けて上記手術を施行しております。鼓膜換気チューブ留置術、アデノイド切除術ともに2泊3日で対応しています。
滲出性中耳炎は、軽度であれば自然治癒することも多く、見過ごしてしまうこともあります。しかし、中等度~重症であれば難聴を生じるため、小さいお子さんの場合には発育の遅延へとつながってしまう恐れがあります。お子さんが自分で「耳が聞こえにくい」と訴える場合は少ないため、テレビの音がいつもより大きい、声を掛けても反応が薄いなど、保護者による日常的な観察が重要となります。「何かおかしいな?」と感じたら、お気軽に耳鼻咽喉科を受診してください。
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公開日時 : 2022年01月20日 (木)