CPTをご存じですか?
CPT(Child Protection Team)とは、子ども虐待対応チームのことで、虐待を受けている子どもをいち早く見つけ、組織的に支援するチームです。また、子どもが病気やけがで受診した際などに、虐待を見逃さないために院内の全職員に対して研修を実施したり、チームメンバーの周知をしたりして、ささいな事でも気軽に相談しやすい環境づくりも行っています。
医療従事者による早期発見の責任
日常的に虐待を受けて育った子どもは将来、自分の子どもに対しても虐待を繰り返してしまう(虐待の世代間連鎖)リスクが高まります。
私たち医療従事者は、完全に虐待を否定できる場合以外は、常に虐待の可能性を考慮した診断(鑑別診断)を行うことが求められています。
CHILD ABUSE(子どもの虐待)気付きのポイント
Care delay 受動行動の遅れ |
損傷が生じてから受診するまでの時間軸は不自然でないか? |
History 病歴上の矛盾 |
受傷機転や経過が話す人によって異なっていないか、一貫性があるか?その病歴は、医学的に子どもの現症に一致するか? |
Injury of past けがの既往 |
過去の病歴を確認し、短期間に繰り返し受診していないか? |
Lack of nursing 養育の過誤 |
子どもの安全が守られた上での事故だったか? 幼児期の定期検診や予防接種を受けているか? |
Development 発達段階と比べ現症は矛盾しないか? |
発達段階と現症の解離する挫傷ではないか? |
Attitude and Behavior 保護者、子どもの態度、子どもの行動 |
診察中以外も他のスタッフが観察し、保護者や子どものスタッフへの対応、子どもの保護者への対応を確認する。 |
Unexplainable 説明不能 |
子どものけがの状態を説明できるか?話のできる子どもが「分からない」という場合は注意が必要。 |
Sibling 兄弟が加害したという訴え |
兄弟が加害したという訴えは、虐待の言い訳として頻用される。 |
Environment 環境リスク |
家族リスク、社会的孤立、経済的困難など、環境リスクを評価する。 |
※BEAMS研修 ステージⅠ資料より引用(一部抜粋)
子どもの発育を妨げるマルトリートメント
子どもへの体罰や性的暴行、育児放棄などは虐待として広く認識されていますが、虐待とは言い切れない、子どもの発育に悪影響を及ぼす行為としてマルトリートメント(不適切な養育)というものもあります。
こんなこともマルトリートメントです
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・子どもの前で夫婦喧嘩をする | ・低年齢の子どもに荷物を持たせている |
・子どもの話を聞かない | ・しつけと称して叩く |
・子どもの身なりが整っていない | ・泣いている子どもを放置している |
洛和会音羽病院 CPT
小児科医、産婦人科医、救急救命医、整形外科医、脳神経外科医、看護師、助産師、公認心理師、医療ソーシャルワーカー(MSW)、事務職が協働して支援しています。
※以下メンバーの一部を紹介
洛和会音羽病院 救命救急センター・ 京都ER 医長 池田 宜央(いけだ のぶひろ) 救急外来での診療を専門としています。外傷の場合では、最初に救急外来を受診することが多いと思います。丁寧な問診や診察を心掛けています。 |
洛和会音羽病院 看護部 救命救急センター・ 京都 ER 中村 昂也(なかむら こう や) 看護師になる前は保育士として働いていたほど、子どもと関わることが好きです。CPTで介入した症例から見つかった課題や対策を他のスタッフへ伝達し、受診する子どもたちの安全が守られるように取り組んでいます。 |
洛和会音羽病院 看護部 外来棟 副主任 西本 忍(にしもと しのぶ) 子どもとご家族の「育ち」を支えられる場所を目指しています。病気のことだけでなく、子育て中の「困ったな」についてもご相談ください。 |
洛和会音羽病院看護部 2D 病棟 副主任 甲斐 雅子(かい まさこ) 虐待と聞くと子どもの方に意識がいきますが、助産師として妊産婦とご家族への関わりを通して虐待を未然に防ぎ、また、子育てに悩んでいる方々へのサポートも行ってまいります。 |
洛和会音羽病院 医療介護 サービスセンター 入退院支援相談室 大串 友見(おおくし ともみ) 子どもたちの最善の利益を守るために、ソーシャルワークの専門職として多職種・多機関と連携し、児童虐待の早期発見、早期介入を目指していきます。 |
洛和会音羽病院 |
困難に耳を傾け、支援を
洛和会音羽病院小児科
医長
宇留野 圭(うるの けい)
CPTでは虐待の医学的診断を行うとともに、子育てや家族関係などに困難を抱えた家庭を支援することを重視しています。虐待をしているという意識もないまま、子どもにとって不適切な養育環境を作ってしまっている「養育不調」の家庭は多く見られます。DV などの家庭内トラブルや、養育者自身が虐待を受けて育ったという過去、養育者や子どもの発達障害などによる「育てにくさ」などさまざまな背景をベースに養育不調となり、子どもにとってのマルトリートメントが発生しています。虐待を早期発見することは、加害者を罰することが目的ではなく、養育不調の背景にあるさまざまな困難に耳を傾け、支援を届けることを最大の目的としています。
今後も職員同士や近隣医療機関の皆さん、行政やその他の機関と連携し活動を行っていきたいと考えています。
お問い合わせ
洛和会音羽病院 小児科 TEL 075(593)4111(代)
公開日時 : 2023年11月29日 (水)