がん死亡率1位の肺がんと闘う

がん死亡率1位の肺がんと闘う

今回のお話をきいたのはこちら

洛和会音羽病院 呼吸器外科では、主として肺がんに対する手術治療を行っています。常勤医師2人体制から3人体制に増員し、これまで以上に充実した診療を提供できるようになりました。がん死亡率の1位をずっとひた走る「肺がん」という病魔に対し、手術を武器に闘い続けます。

洛和会音羽病院 呼吸器外科 部長
北村将司 (きたむら しょうじ)

■専門領域
肺がん診療、胸腔鏡下手術など

■専門医認定・資格など

日本外科学会外科専門医
日本呼吸器外科学会呼吸器外科専門医
日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医/指導医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症指導医
臨床研修指導医

「不治の病」ではなくなったがん

皆さん、「がん」といったらどんなイメ ージをお持ちですか?多くは、「もう、ダメだ」とか、「がんなんて治らないんやろ」など、ネガティブなイメ ージを持たれていると思います。さらに、「肺がん」となると、がんの中でもより悪いイメ ージを 持っておられることが多いと思います。残念ながら、がんは30年以上ずっと日本人の死因の1位を独走しています。 数年前は「がん=不治の病」というイメージでしたが、がん全体の治療成績は近年劇的に改善しており、いずれのがんでも早期に発見し適切に対処することで根治が得られることが多くなっています。

現在では、悪性疾患の動向を登録するシステムが発達したこともあり、どれくらいの患者さんがどれくらい治るのか? どれくらいの人が手術を受けるのか? などが分かるようになってきました。概ね、年間約12万人の方が、新規に肺がんと診断されています。 肺がんはがんの中でも死亡率が高く、年間約7万人の肺がん患者さんが亡くなっている現状をみると、肺がんと診断された半数以上の方が亡くなっているという事実があります。しかし、逆をいえば、半数以下とはいえ多くの患者さんが治っている、もしくは、亡くならずにお過ごしになっているともいえます。

私たちは、皆さんの健康と幸せな生活を守るために、医療、特に当科では手術という手段を用いて地域に貢献していこうと不断の努力を続けております。しかし、神様でもなんでもない私たちに、皆さんの病気を全て治癒させる能力はありません。手術を受けて治る患者さんもおられますが、手術を受けられない進行した状態で診断される患者さんも多くおられます。普段から健康診断、人間ドックなどご自身の健康を意識し、できるだけ早い段階での医療機関へのアクセスを持つことが、不治の病であったがんに対抗する最も有効な手段だと考えています。

 

どんな種類の「がん」で亡くなる人が多いの?

日本の死亡原因で最も多いのは「がん」で、およそ4人に1人が「がん」で亡くなっています。そして日本人が一生のうちにがんと診断される確率はおよそ2人に1人といわれています。
その「がん」の種類別死亡率で最も多いのは、「肺」。以下「大腸」、「胃」、「膵臓」、「肝臓」と続いています。男女とも上位はほぼ共通していますが、性別の特徴として、男性では「前立腺」、女性では「乳房」、「子宮」がそれぞれ 一定の割合を占めています。

肺がんを患う最大の原因は喫煙。タバコを吸っている人は要注意です。

診断から治療まで

01 肺がんの種類
原発性肺がん・・・・ 肺から発生したがん
転移性肺腫瘍・・・・ 乳がんや大腸がんなどほかの臓器に発生したがんが肺に転移したもの

一般に肺がんとは、原発性肺がんのことをいいます。肺がんは、組織所見により「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」「小細胞がん」などに分かれます。

02 肺がんの検査

1.画像検査
胸部エックス線検査は、異常な影を見つけることができる比較的簡便な検査です。半面、死角になる部分が存在し、ある程度大きな腫瘍でないと見つけにくいことがあります。胸部CT検査は、死角になる部分が少なく、淡い陰影や小型病変も発見可能であり、病変の存在診断には最も有効な検査方法です。

2.PET検査
陽電子放射断層撮影(PET)装置を用いた検査です。がん細胞はブドウ糖を多く取り込む性質があり、ブドウ糖に微量の放射性物質を混ぜた薬剤を注射して断層撮影することで、がんの診断や病気の広がりを診断することができます。がんの発見に有効な検査方法です。

3.内視鏡検査
肺がんの診断をするためには細胞や組織を取ることが必要ですが、その方法の一つに、細くて柔らかい内視鏡を口や鼻から気管支に挿入し、細胞や組織を取って調べる気管支鏡検査があります。麻酔が十分でないと苦しい検査なので、当院では1泊入院をしていただき、十分な麻酔をしたうえで、眠っている間に検査が終了するようにしています。このほか、胸腔鏡を用いて胸腔内や肺表面の観察や組織検査を行う胸腔鏡検査も実施しています。

4.病理診断
画像診断で胸部異常影を認める部位から細胞や組織を採取し、それを顕微鏡で見て、がんかどうかを診断します。がんの確定診断には、原則として病理診断が必要です。

 

03  肺がんの治療法
肺がんに対する有効な治療法は、手術、放射線療法、薬物療法の3つです。病気の種類や進行の程度により、この3つを単独で行ったり、組み合わせたりして治療を行います。その中から当院の呼吸器外科で行う肺がんの手術についてご説明します。

 

低侵襲な胸腔鏡下手術で負担を少なく

肺がんの手術には、肺活量を減少させる肺切除術が必要です。がんの治療のためとはいえ、体の機能を低下させる手術になります。肺は右に3葉・左に2葉と袋状に分かれた臓器になっており、がんに侵された部位をひと袋切除する肺葉切除が根治手術の基本となっています。当院の呼吸器外科では、小さな傷3カ所から胸腔鏡というカメラと専用の鉗子を用いて、直接臓器を見ることなく完全鏡視下で行う「胸腔鏡下手術」を主として施行しています。開胸手術に比して体の負担を軽減でき、高解像度のカメラを使用することで安全性も高くなっていると考えています。

患者さんのなかには術前から肺活量が低く、十分な範囲が切除できない方もおられます。その場合も医療技術と専門知識を駆使し、肺葉切除ではなく肺活量を温存した区域切除や部分切除を選択するなど、患者さんの全身状態に応じて最適な治療を提供いたします。

 

オーダーメード医療

当科では、これまで培った経験と技術を用いて、患者さんに合わせたオーダーメードな医療を提供していこうと考えております。殊に、手術に関してはできるだけ体への負担の少ない胸腔鏡下手術を中心に、術後の患者さんの生活を考慮したご提案をいたします。

負担の少ない治療を
地域の皆さんが安心して健康な生活を送ることに貢献できるよう、当院には、肺がんの診断と治療に必要なものが整っています。地域の開業医の先生からの紹介患者さんに対して、早期に診断・治療に結びつけるために、初診当日の胸部CT撮影が可能です。
画像診断は、新しいDualSource CT(128スライス×2)が導入され、短時間での撮影・診断が可能になり、さらに詳細な画像情報が取得できるようになりました。専門の呼吸器内科医や呼吸器外科医たちが連携し、新鋭の医療機器(ハイビジョン内視鏡手術システム、マルチスライスCTやPET-CT、放射線治療のリニアックなど)を活用しながら、患者さんの負担ができるだけ少ない肺がん治療に全力で取り組んでいます。

Dual Source CT ▲

 

さまざまなサポート体制と集学的治療を提供いたします

不慮の事故、心疾患や脳卒中、突然失う大切な命・・・がんは恐ろしい病気ですが、人生の終末に至り、その最期を迎える準備を整えることができる病気です。また、普段から健康を気遣うことで、早い段階で対処できる可能性を持っている病気でもあります。

洛和会音羽病院 呼吸器外科では地域の皆さんに対して、さまざまなサポート体制を取っております。また、患者さんの症状や状態に合わせて、手術はもちろん、放射線治療や抗がん剤などの化学療法、そして緩和的治療についても連携して集学的な治療を提供しております。「人が人として幸せな時間」を多く過ごしていただけるよう全力でサポートしてまいります。

お問い合わせ

洛和会音羽病院 呼吸器外科
TEL 075(593)4111(代)
予約センター 0120(489)300

医療関係者向け
洛和会音羽病院 地域連携課
0120(607)489

がんドック(PET-CT検診)に関するご予約・お問い合わせ
洛和会京都健診センター
洛和会音羽病院
0120(050)108

 

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