今回お話を伺ったのはこちらの方!
専門分野
内科
専門医認定・資格など
日本内科学会認定内科医
はじめに
これまで「腹痛」を経験したことがない、という人はおそらくいないと思います。ですが、気が付くと良くなっていたりして実際に病院を受診したことがない方はいらっしゃるかもしれません。また腹痛というと「腸から来る病気じゃないの?」と思われるかもしれませんが、腸以外の内臓や血管の病気など、怖い病気が隠れていることもあるため、適切な対応が必要になります。
危険な腹痛に注意!
怖い腹痛とはどのようなものでしょうか。代表的には腸管に穴が開く、血管が破ける、あるいは裂けるといったものがあり、それぞれ消化管穿孔、大動脈瘤破裂、大動脈解離という病名がついています。これらは緊急の対応が必要な病気のため
- 「お腹が痛くなり始めてから我慢できないほどの強い痛みが数秒ぐらいで出現した」
- 「お腹の痛みに波がなく、どんどん強くなってくる」
- 「市販の痛み止めを飲んでも全く良くならず我慢できない」
といったような場合は、病院への受診をご検討ください。
その他に
- 「冷や汗をたくさんかいている」
- 「歯がガチガチと鳴るほどの寒気がある」
- 「歩くとお腹に響いて動くのが難しい」
- 「真っ赤な血液がたくさん出た」
といった症状にも注意が必要です。
「胃腸炎」とは?
しばしば「胃腸炎」という言葉を耳にすることがあるかと思いますが、医学的には「胃炎」や「腸炎」と分けるのが一般的であり、ここでは特に「急性腸炎」を取り上げます。新型コロナウイルス感染症が流行したことで以前より気を付けて手洗いをされる方が増えた影響か、ノロウイルスやロタウイルスといったウイルスによる急性腸炎の方を診察する機会は激減していますが、今後も流行に気を付けて生活をしていく必要があります。
一般的に急性腸炎とは
①複数回の嘔気・嘔吐
②良くなったり悪くなったりする腹痛
③複数回の下痢
の3つすべてが揃っていることがポイントです。
病気の初期や腸炎が起きた場所によって、これらの症状すべてが揃わない場合もありますが、これらのうち1つでも当てはまらない場合には安易に急性腸炎と自己判断をしないことが大切です。
この他に
- 「高熱がある」
- 「真っ赤な血液が混じる」
- 「我慢できないほどの強い腹痛がある」
といった症状がある場合は受診をご検討ください。
さらにアレルギーや甲状腺の病気で腸炎に似た症状が起きることもあり
- 「一緒に皮膚に痒い発疹が出て来た」
- 「息苦しくてヒューヒューと音がする」
- 「元々アトピーや気管支喘息の持病がある」
- 「手が震えて、動悸があり、汗がたくさん出てくる」
といった場合にはこれらの病気が隠れていないか注意が必要です。
急性腸炎への対処
急性腸炎の多くは食物性やウイルス性といった外的な要因で生じますので、まずは対症療法を行います。具体的には脱水にならないようにこまめに水分摂取を行うこと、また消化の際に、腸に負担がかかる脂肪の多い食事や刺激物を避け、柔らかいものや温かいものを中心に摂取するのが良いでしょう。水分摂取を行う際は水やお茶の他に、市販の経口補水液やスポーツドリンクの摂取をすることで塩分や糖分の補給が可能です。ただし一度にたくさん飲んでしまうと、それが刺激となって嘔吐してしまう場合がありますので、少量の水分摂取を行って少し時間をあけ、嘔気が出てこないことを確認して再度水分摂取を行うと飲水できることが多いと思います。
よくご相談があるのが下痢止めと抗菌薬(抗生物質)といったお薬についてです。腸炎に対して下痢止めを使うと原因となっている食物やウイルス等が身体の中に長く残ってしまい、症状が反対に長引いてしまうことがあります。また腸炎の原因の多くを占めるウイルスに対しては抗生物質の効果はなく、反対に腸のなかの良い働きをもつ微生物へと作用してしまうことで症状を悪化させてしまうことがあります。原因や状況に応じてこれらの薬剤を使う必要がある場合もありますので、お困りの際には受診をご検討ください。
公開日時 : 2022年02月01日 (火)