ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)で 早期の消化器がんを取り切る

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)で 早期の消化器がんを取り切る

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)で 早期の消化器がんを取り切る
洛和会音羽病院では、熟練の医師により、内視鏡で消化器の早期がんを完全切除できるESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を行っています。

洛和会音羽病院 消化器内科 副部長 人見 美鈴(ひとみ みすず)
洛和会音羽病院 消化器内科
副部長 人見 美鈴(ひとみ みすず)

専門分野

消化器がん内視鏡治療、消化器内視鏡治療全般

専門医認定・資格など

日本消化器病学会消化器病専門医/指導医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医/指導医
日本内科学会認定内科医/総合内科専門医
医学博士

大腸がんと胃がん治療の実際

2019年におけるがんの死亡者数は37万人です。そのうち、大腸がんは51,000人で部位別の2位、胃がんは43,000人で3位となっています。
5年相対生存率は、治療成績を評価するための大切な指標ですが、胃がんと大腸がんでも他のがんと同様にステージが進むにつれ5年相対生存率は低下します。その一方で内視鏡検査の普及により、他のがんと比較して胃がん・大腸がんのステージⅠ期やⅡ期の死亡数は下がってきています。

がん死亡数 部位別データ

男性 女性 男女計
1位 大腸
2位 大腸
3位 大腸 すい臓
4位 すい臓 すい臓
5位 肝臓 乳房 肝臓

5年相対生存率(胃がん・大腸がん)

胃がん(男女計) 大腸がん(男女計)
Ⅰ期 94.7 95.1
Ⅱ期 67.6 88.5
Ⅲ期 45.7 76.6
Ⅳ期 8.9 18.5

「がん診療連携拠点病院等 院内がん登録 2010-2011年5年生存率集計 報告書」国立がん研究センター がん対策情報センター がん登録センター 院内がん登録分析室

内視鏡下のがん切除術

内視鏡治療の進歩・発展により、基準を満たす早期がんにおいては胃や大腸を切除せずに、内側からがんだけを切除することができるようになりました。これにより消化管の機能を温存することができ、日常生活は内視鏡手術前とほぼ同等を維持することができます。内視鏡的切除術の原則は「リンパ節転移の可能性がほとんどなく、腫瘍が一括切除できる大きさである」ことです。
消化管の壁は主に粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜からできています。がんは一番内側の粘膜層から発生しますが、内視鏡治療の適応となるのは粘膜層内にとどまるがんと一部の粘膜下層までのがんです。内視鏡治療としては内視鏡的粘膜切除術(EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の2通りがあります。どちらも電気メスを用いてがん部を切除しますが、EMR/ESDのどちらを選択して治療するかはがんの大きさや部位、患者さんの基礎疾患などで総合的に判断し決定されます。
粘膜層内にとどまるがんは転移の可能性が低く、病理学的に完全切除された場合は外科的手術に匹敵する根治性が得られるため、現在では国が認めた保険治療として標準的に行われるようになっています。
内視鏡下のがん切除術

大きな病変でも切除できるESD

EMRはスネアと呼ばれる金属の輪を病変にかけて電流を流すことで病変を切除する治療法ですが、切除できるサイズに限界があり、しばしば分割切除になるため、正確ながんの進行度の評価ができない場合があることが欠点でした。
EMRの弱点を克服した治療法がESDです。がん病変を含む粘膜の粘膜下層部を少しずつナイフで薄く剥いでいく治療法です。このため大きな病変でも一括で切除することが可能となりました。しかし、ESDには高度な内視鏡技術が要求されるため内視鏡熟練医が設備の整った施設で行う内視鏡治療とされています。当院ではESDを2005年から導入し、2016年3月までに約800例を行っています。
治療前にはがんの深さを超音波内視鏡検査である程度予測し、ESDの適応病変かを確認します。適応病変に対してESDを施行し、施行後は切除した病変を病理組織診断に提出します。病理結果にて深達度・血管侵襲・脈管侵襲・範囲診断全てが基準を満たしているかを最終的に確認します。
大きな病変でも切除できるESD
大きな病変でも切除できるESD

低侵襲で入院期間も短い

外科手術は大きながんでも周囲のリンパ節と一緒に切除することができるという利点がありますが、切除により臓器の機能も一部失われます。ですが、ごく初期の粘膜下層までにとどまるがんはリンパ節転移がほとんどないため、ESD治療を選択することで局所のみを切除し、体への負担を減らすことができるというメリットがあります。体の内側から切除しているため体表の傷もなく、臓器を温存しているため1週間もすれば元の日常生活を送れるようになります。患者さん自身の基礎疾患や年齢により回復力に若干の差がありますが、当院では平均7〜10日程度の入院期間となっています。

手術室での経験が今につながる

学生時代、外科医が主人公のテレビドラマに影響を受けて消化器外科医を目指しました。しかしながら私の研修医時代は現在ほど女性医師が多くなく、“女性のライフスタイル”を考えて消化器内科医になる決意をしました。ただ最後まで外科医を勧めてくださった当時の先生の協力もあって、卒後数年間は消化器内科医でありながら自分が関与した患者さんの手術に立ち会って、助手をしながら勉強させていただきました。
近年、内科・外科の連携がますます大切になってきています。今までの経験から、消化器内科・外科にとらわれず個々の患者さんに合った最良で最善の治療を一緒に考え、一緒に選択していきたいと思います。
また、臓器ごとに診療科が分かれているように、消化器内科でも食道・胃・大腸とすい臓、そして肝臓と専門が分かれています。私はこれまでに全ての専門部位を検査・治療してきた経験がありますので、なんでもご相談いただけますと幸いです。

お問い合わせ先

一般の方
洛和会音羽病院 消化器内視鏡センター・消化器内科

TEL:075(593)4111(代)

こちらの病院でもESDに対応しています
洛和会丸太町病院 消化器センター内科
TEL:075(801)0351(代)

こちらの病院でも内視鏡検査・治療を行っています
洛和会東寺南病院 消化器センター
TEL:075(672)7500(代)

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