広く、深い診療を目指して ~守備範囲の広い医師を育てる~
洛和会丸太町病院は、京都市の中心部にある急性期病院の中では許可入院患者数150床と比較的小規模の病院ながら、年間を通して膨大な数の救急車を受け入れています。より多くの患者さんの命を救うためには、救急での正確な診断・治療とともにマンパワーも必要です。同院 救急・総合診療科における救急診療の特徴と次世代育成についてご紹介します。
「断る」という選択はない!
洛和会丸太町病院 救急・総合診療科では、一般外来~救急まで重症度に関わらず、主に内科領域の疾患に対応しています。年間約3,000件の救急患者を受け入れており、入院を要する内科救急の患者さんの約8割が救急・総合診療科病棟に入院されます。我々は断らない救急を目指しており、病院内に空きベッドさえあれば、救急要請を断ることはありません。
入り口は広く中身は深く
当科の治療方針は、「全症例をチーム医療で最初から最後までしっかりと診療する」です。救急で運ばれてきた患者さんは、処置が済んだ後も、救急・総合診療科の同じ医師が担当医となり、治療を継続して行います。そうすることで、申し送りなども不要になり、スピード感のある“ノンストップでの治療”を実現しています。
また、当科は、救急で受け入れた患者さんの一般的な検査や治療、人工呼吸器管理、血液浄化療法までを全て自分たちで行います。当科の中には放射線科専門医もいますので膿瘍穿刺や血管内治療なども対応可能です。もちろん当院には、心臓内科や外科、消化器センターなど高度な診療技術を有した専門家もいますので、外科手術や心臓カテーテル、ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)などはそれぞれの診療科の医師に任せます。専門の医師には、私たちにできない手技に専念してもらうため、一般的な病気は自分たちで診る。それが正しく、質の高い医療を提供することにつながっています。
救急・総合診療科は、入り口での高い診断力、さまざまな疾患に対する対処力が求められます。そのため、毎朝の勉強会、脳神経内科などの専門家と合同カンファレンスを実施し、修練に注力しています。
守備範囲の広い研修医を育てる
当科では、研修医であっても「自分が主治医」という意識を持つよう指導しており、責任感のある診療を行ってもらうために、救急診療から入院中、退院後の外来診療まで全てにおいて指導医からのフィードバックが濃密に受けられる体制を整えています。身近な上級医が常にベッドサイドで指導するのに加え、チームリーダーを中心とした朝の回診、夕方のカルテ回診を毎日行い、最終的には部長の私も全患者の教育回診とカルテチェック、退院サマリーチェック、症例検討会を行うという二重、三重の体制を敷いています。
後期研修医は学術活動にも取り組んでおり、論文や医学書籍など執筆活動が多いのも当院の特徴です。また、研修医が当院で研修するだけでなく、さまざまな特徴を持つ病院で自由に学びたいことを学べるように、他府県の病院と提携し、研修ルートを確保しています。
規模が大きくない病院でも突き詰めていくといろいろな病気を診ることができます。当科は一般的な内科診療が幅広く学べ、教育体制の充実によって勉強するには困らず、学術的な研鑽も奨励していることから、特に若い医師には魅力的な環境だと思います。
広く、深く、心地よく
この10年間、「広く、深く、心地よく」をモットーに当院で救急・総合診療を展開してきました。当初は広さと深さの両立を目指すことに対して懐疑的な目を向けられることもありました。しかし医学の世界では各専門分野の根っこはつながっています。さまざまな病気を見比べることで初めて、特定の病気への理解が進むことは珍しくありません。一方で、ある病気を深く知ることで他の病気の診療に応用が利くこともあります。最近では広く深い診療内容が認められ、診断困難例などの他府県からの紹介も増えています。今後も向学心に溢れる若手医師たちと、より広く・深い診療を目指していきたいと思っています。
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公開日時 : 2022年12月01日 (木)