「便秘」で、悩まれている方は多いと思いますが、医療機関を受診し治療を受けている患者さんは4割に満たないとされています。便秘は生活の質に影響を及ぼすだけでなく、心血管イベントのリスク、腎機能悪化など、生命に与える影響もあるということが分かってきており、また高齢の方では便秘が食欲低下につながり、サルコペニア・フレイルの原因となるため、適切な治療が必要です。
洛和会丸太町病院 消化器センター内科 副部長
尾藤 展克(びとう のぶかつ)
専門分野
消化器疾患全般、内視鏡検査・治療
専門医認定・資格など
日本内科学会認定内科医
日本プライマリ・ケア連合学会認定医/指導医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
そもそも便秘とはどういうものでしょうか。2017年に「慢性便秘症治療のガイドライン」という基準ができ、便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。単に排便回数の減少だけではなく、排便回数が少ないからといっても必ずしも便秘とはいえません。
・ウサギの糞状の便か硬い便である
・残便感を感じる
・直腸や肛門の閉塞感、排便困難感がある
・排便の介助が必要である
・自発的な排便が週3回未満以上のように「便秘」といっても人により、さまざまな症状があります。
隠れている病気に注意!
便秘は危険な病気の前兆であることもあり、注意が必要です。重大疾患の「警告症状」とされるのは「排便習慣の急激な変化」「予期しない体重減少」「血便」「発熱」などの症状です。便秘と併発して起こる場合はお気を付けください。
体重減少、50歳以上、急な便通異常やご家族で大腸がんになられた方は大腸がんの可能性を考える必要があります。国立がん研究センターの調査では、大腸がんの患者が急速に増えています。患者数は胃がんと変わらないのですが、早期発見・治癒率が高い胃がんの死亡数が横ばいなのに対して、肺がんや大腸がんの死亡数は増え続けています。女性のがんの死亡数では大腸がんがトップです。また、糖尿病や甲状腺機能低下症、パーキンソン病などの病気が隠れている場合があるので、注意が必要です。
<改善その1>食事対策が大切です。まず水分や食物繊維を摂ること
食事での対策は、まず水分の摂取です。それと朝食を取ること。食物繊維を取ることやヨーグルトなど善玉菌を増やす食品で腸内細菌を増やすことも大切です。朝食を食べると腸が目覚めます。
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類あります。水溶性食物繊維は水に溶け、腸内でゲル状になって有害物質を吸着して排出させます。カボチャ、サツマイモ、キウイ、海藻類などに豊富に含まれます。一方、不溶性は腸内細菌の分解を受けにくく水分を吸収して便の体積を増やし、腸を刺激します。切り干し大根、ゴボウ、ホウレンソウなどに豊富です。
食物繊維は1日当たり男性で21g、女性で18g取ることが推奨されています。しかし、統計ではどの世代の方も十分な量を摂れていませんので、意識的に食べないと、推奨量にはなりません。
<改善その2>運動もしましょう
便秘の改善には、適切な食事と運動という生活習慣の改善と、腹壁マッサージが有効です。
<改善その3>生活様式を見直しましょう
生活様式も影響します。以下の4点を注意してください。
・十分な睡眠をとる
・便意を感じたらすぐに排便する
・毎朝の排便努力
良くならない場合は受診してください
・10月より毎週木曜日の午前に便秘外来を開設します。
便秘でお悩みの方は受診してください。
・先に述べたように、人によりさまざまな症状、生活習慣があります。
当院では一人一人に合わせた治療を行います。
・管理栄養士の協力のもと適切な食事指導も行います。
・隠れている病気がないかのチェックを行います。
洛和会丸太町病院 内視鏡室がリニューアルしました
内視鏡室には新たにリカバリー室やトイレ・ロッカーなどが新しく整備され、内視鏡検査の前後でも安心して過ごしていただける環境が整いました。
ご希望の方には鎮静剤を使った苦痛の少ない検査も行っています。検査後はしばらくリカバリー室で血圧、酸素飽和度をモニタリングしながら、お休みいただきます。
<関連ページ>
洛和会丸太町病院 消化器センター内科
洛和会音羽病院 消化器内科・消化器内視鏡センター
洛和会東寺南病院 消化器センター
公開日時 : 2021年10月01日 (金)