院長対談 愛生会山科病院+洛和会音羽病院 顔の見える関係が地域医療を守る

院長対談 愛生会山科病院+洛和会音羽病院 顔の見える関係が地域医療を守る

国民の4人に1人が75歳以上になるといわれる2025年。誰もが住み慣れた地域で自立した生活を送るためには、地域包括ケア構想※1に沿った切れ目のない医療・介護サービスが必要です。今回は山科区における「地域医療」をテーマに愛生会山科病院洛和会音羽病院の両院長が対談しました。

※1 地域包括ケア構想医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保されるという考え。


愛生会山科病院 院長
兼子 裕人先生
京都府立医科大学医学部 卒業。
専門領域は内科、血液内科。
2021年に愛生会山科病院 院長に就任。


洛和会音羽病院 院長
神谷 亨
名古屋大学医学部 卒業。
専門領域は内科、感染症科。
2021年に洛和会音羽病院 院長に就任。


<インタビュワー>
洛和会音羽病院 医療介護サービスセンター 顧問
吉村正人
岐阜薬科大学卒、三共株式会社(現・第一三共株式会社)入社。医療連携・診療報酬関連業務に従事。2023年洛和会音羽病院 医療介護サービスセンターに入職。
資格・認定:薬剤師、医療経営士2級

―貴院の地域包括ケア実現に向けた取り組みをお聞かせください

兼子院長(以下、兼子):山科区は人口10万人以上で、高齢化率は京都市内では高いほうです。行政によると少なくとも数年は少しずつ人口が増加すると試算されており、医療・介護の需要も当面右肩上がりであろうと考えます。地域包括ケアの理念は急性期医療から慢性期医療、さらには在宅まで切れ目のない対応をすることだと思います。その中で各医療機関が連携せずに取り組んでいても、なかなか実現するのは難しいのではないでしょうか。そこで当院では、他院との「連携を重視する」方針を打ち出しております

神谷院長(以下、神谷):兼子先生が仰ることはよくわかります。以前は地域の病院同士が患者獲得で競い合ったこともありましたが、今では一つの病院では受け止めきれないのではないかという危機感を抱いています。これからは地域の病院や診療所、行政と助け合って対応していかなければなりません

―地域での役割や連携事例をご紹介ください

兼子:当院では地域包括ケア病棟に力を入れており、119床備えています。入院患者さんの半数以上は他病院、診療所からのご紹介で、自院の外来からは少数です。そして、退院される方の多数は介護サービスの利用へつなげるなど、切れ目のない連携に力を入れています。まさに国が求めている形だと自負しています。洛和会音羽病院で高度急性期の専門医療を終えた後、医療の需要がある方には愛生会山科病院に転院して治療を継続していただけるよう、転院数を増やしていけるように取り組んでいるところです。

神谷:お互いの医療を補完するという考えにおいては、例えば、当院の血液内科領域は、愛生会山科病院に患者さんをご紹介し、根本的な治療からお願いすることもあります。一方、当院は地域から求められている心筋梗塞や脳梗塞など、高度で急を要する医療を担っています。当院は、直近の10年間で重症患者さんを受け入れる「救命救急センター」に指定され、災害時の医療救護活動で中心的な役割を担う「京都府災害拠点病院」や、かかりつけ医を支援し地域医療の中核を担う体制を整えた「地域医療支援病院」にも指定されました。地域の方に院内の検査機器やリソースを活用していただく取り組みを進め、高度あるいは急性期の医療を提供することで地域の人々を支えてまいりました。また、重要な診療の柱であるがん診療は消化器内科外科腫瘍内科放射線治療科などを揃え、適応のある方には緩和ケアも行っています。

―地域医療の展望があれば、お示しください

兼子:多方面から「広域にわたって医療機関と介護事業所が連携しなさい」といわれるのですが、山科区は盆地という特殊な地形もあり、しばしば、患者さんやご家族から京都市内や大津を避けて、どうしても地元での受診を希望されるケースがあります。行政の方針から外れますが、私は山科地域の患者さんは山科地域で医療・介護を完結させたいと思っています。当院ではまだまだ力不足の点もありますが、可能な限り努力することで流動的に対応できると考えています。

神谷:私も同感です。山科地域で医療も介護も完結するためには、当院がどういう役割を果たすべきなのかを考えています。一つの病院だけでは完結できない時代に入ってきましたので、しっかりと連携することが大切です。そのためには「この人は信頼できる」という感触を育てながら互いに顔が見える関係性を作っていくことが必要です。
私は病院やクリニック、行政、民生委員など、いろいろな方とつながり、「山科で緩やかなアライアンス※2を形成する」夢を持っています。そのためには顔を合わせていろんな議論をして、アイデアを出し合っていかないと進みません。

兼子:そうですね、病院がそれぞれで何かしようと思っても限界がありますので、各施設が連携するというのは当然の流れです。他の地域のアライアンス構想でも、試行錯誤されているようなので、情報を集めながら進めていきたいと思います。「この流れに乗っていきたい」と思っていただけるような事例がまず一つできれば、数年後には、気付けばアライアンスがかたちづくられてきたと実感できるのではないでしょうか。

神谷:今年こそは、ようやくコロナ禍が明けそうですので、本当の連携をいろんなところと作っていきたいです。まずは何よりも愛生会山科病院との連携をしっかりと深めていくことがとても大事だと思っています。ここに住んで良かったと思っていただけるように、「チーム山科」で協力していきたいと切に願っています。

※2 アライアンスとは、同盟・提携という意味で、この場合、お互いの長所を生かし協力体制を築くための提携のこと

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