当会ではがんの薬物療法を専門とする薬剤師として、がん薬物療法認定薬剤師と外来がん治療認定薬剤師が、がん患者さんの治療のサポートに専念しています。がん治療において、専門の薬剤師として関わる思いや役割について聞きました。
がん専門の薬剤師とは
がん薬物療法認定薬剤師
2007年に設立された一般社団法人日本病院薬剤師会が認定する資格です。がん治療は医師や看護師を含めた、多職種が連携してチーム医療を行います。薬剤師は薬物の専門家として参加し、医師や他スタッフへ助言や提案を行います。
外来がん治療認定薬剤師
2013年に設立された一般社団法人日本臨床腫瘍薬学会が認定する資格です。外来によるがん治療を安全に実施するための知識・技能を有し、がん治療における患者さんごとの問題点を明確化することで、医師と共にがん薬物療法の支援を行います。
がん薬物療法認定薬剤師の思い
がん患者さんの気持ちに寄り添う
がんが進行し、命に限りが見えたとき、死の淵に立たされた患者さんや家族の苦しみはとてつもなく大きいと感じています。患者さんに最良の医療を提供することが第一ですが、できる限りの配慮をし、寄り添いたいと思っています。多くの患者さんはこれが最期のお別れと思われる時に「ありがとう」と感謝のお気持ちをおっしゃってくださいます。そのようなとき、これからも私にできることをやっていこう!と胸が熱くなります。
抗がん剤は毒性が強く、投与量を間違えると死に至ることもあります。副作用も強く、命を懸けて治療に臨んでおられる中、臨床の現場で私たちが患者さんから学ばせていただくことは多いです。
最近の臨床と研究の進歩は目覚ましく、急速に新しい薬剤や治療法の開発がされています。常に最新の知識を身に付け、患者さんに最良の医療を提供するために、これからもブラッシュアップしていきます。
がん薬物療法認定薬剤師
洛和会丸太町病院 薬剤部
係長 大上 寛子(おおがみ ひろこ)
顔の見える関係性が連携力を高める
新型コロナウイルス感染症の影響により、外来でがん治療を希望する患者さんが増え続ける中で、一人一人に効果的かつ体に負担なく治療を進められるよう、医師・看護師など患者さんに関わる医療従事者と相談・連携しながら支援しています。
薬剤師の病棟常駐が始まった頃は、より多くのがん患者さんを治療するために、医師や看護師、薬局薬剤師など、がん治療に関わるチームの「密接な連携の積み重ね」が必要でした。そこで、がん治療の勉強会やカンファレンスに必ず参加し、病棟で職員と直接会って議論をするなど、「顔の見える関係性」を多く作りました。そうすることで、増え続けるがんの新薬や、さまざまな症状と治療法を共有して、多くの患者さんに最適な治療法を施せるだけでなく、チームの負担を減らすことにもつながりました。
これからも、さらに連携力を高め、より多くのがん患者さんに安心して治療を進めていただけるよう務めてまいります。
がん薬物療法認定薬剤師
洛和会音羽病院 薬剤部
課長 櫻井 登代子(さくらい とよこ)
薬薬連携で患者さんに安心を
外来では、薬物治療の治療計画書作成、治療開始前の患者さんへの薬物投与スケジュールや副作用の説明、治療中の患者さんの副作用確認などを行っています。
近年、がん薬物療法は外来で行うことが増えており、患者さんは2、3週間おきに受診して治療を進め、その間はご自身とご家族で体調管理を行っていただくことになります。薬の副作用などは、事前に説明をしていますが、不安はぬぐい切れないのが現状です。そこで、保険薬局と治療計画や副作用情報を共有し、必要に応じて次回の外来までに電話による患者さんへの体調確認をお願いしています。その内容はフィードバックしてもらえるので、患者さんの自宅での状況がリアルタイムに把握でき、処方提案、体調改善につながっています。
今後はより多くの患者さんのフォローができるよう、後進の育成にも注力していきたいと思います。
外来がん治療認定薬剤師
洛和会音羽病院 薬剤部
主席係長 伴 具也(ばん ともや)
関連情報
公開日時 : 2023年05月18日 (木)