新型コロナウイルス感染症の検査は、PCR検査・抗原検査・抗体検査が知られています。洛和会東寺南病院 臨床検査部の臨床検査技師が3つの検査の特徴や違いについて解説します。
今回お話を伺ったのはこちらの方!
所属・氏名
洛和会東寺南病院 臨床検査部
貞廣 美智子(さだひろ みちこ)
専門医認定・資格など
臨床検査技師
ひとこと
油断大敵。これからは、インフルエンザにノロウイルスの流行る季節でもあります。マスク・手洗いをお願いします。
新型コロナウイルス感染症の検査の種類
新型コロナウイルスの検査は、PCR検査・抗原検査・抗体検査が知られています。
PCR検査はウイルスの遺伝子を調べる検査です。
病気の原因となるウイルスや細菌などウイルス固有の遺伝子や、特有の「タンパク質=抗原」を検出することで、感染の有無がわかります。
また、病気の原因となるウイルスや細菌など、免疫反応を引き起こす異物(抗原)が体内に入ってきた際に、攻撃したり体外に排除したりするために作られるタンパク質=抗体ができます。
現在の感染有無と過去の感染有無
現在の感染の有無を調べる検査…ウイルスの遺伝子を調べるPCR検査とウイルス自体の特殊なタンパク質を検出する抗原検査
過去の感染の有無を調べる検査…抗体検査
PCR検査とは?
PCR検査では、試薬を用いて鼻腔や鼻咽頭ぬぐい液、唾液から通常では少なすぎて検出できないウイルスの遺伝子を試薬を用いて増やし、検査機器を用いて見つけ出します。
感度は良いですが、遺伝子を増幅するため数時間かかります。
抗原検査とは?
抗原検査は、鼻咽頭ぬぐい液を採取し、新型コロナウイルスに対する抗体を用いて新型コロナウイルス自体の特殊なタンパク質を見つけ出します。
検査時間は15-30分程度ですが、PCR検査に比べると感度は劣ります。
抗体検査とは?
抗体検査は、血液で検査します。
ウイルス感染により体内で作られる抗体が、血液中に存在するかを調べます。
検査では主に、抗体の中のIgMとIgGを調べます。IgMは感染した時に最初に作られる抗体です。
検出可能になるのは発症後2週目頃からとされ、その後、2週間から4週間ほどをかけて消失します。
IgGは、 IgMが生成された後に生成され始めます。
比較的長期間持続するとされており、その期間は数カ月以上で、風疹やはしかなど数年におよぶものもあり、ウイルスによって異なります。新型コロナウイルスの持続期間に関しては現在調査中です。一般的に抗体検査では、IgGを調べることが多いです。
検査の違い 早見表
発熱し、新型コロナウイルス感染を疑う場合や濃厚接触者の場合は、現在の感染の有無を調べるPCR検査や抗原検査になります。
抗体検査は保険診療ではないため、自費になります。
検査の違い
PCR検査の良い点は、発熱など発症する前から、遺伝子の検出が可能であることです。インフルエンザや他の感染症は、症状がでてから他の人に感染しますが、新型コロナウイルスに感染した場合、発症する前から他の人に感染させてしまう可能性があります。そのため、濃厚接触者の方が発症する前や無症状でも、検査をすると陽性だったということがあります。
欠点は、検査に数時間かかること、専用の器械が必要になることです。
抗原検査は定性と定量検査があります。定性検査は短い時間で結果が出ること、特別な検査機器を必要としないことから速やかに判断が必要な場合などに用いられることが多いです。インフルエンザの検査ではこの抗原検査を行っていることが多いです。PCR検査に比べると感度が劣り、ウイルス量が一定量ないとできないため、無症状には不向きです。
抗体検査は、体内に抗体ができるまでに、時間がかかるため、いつ感染したか分かりません。また、陽性であっても、時間が経過すると抗体の量が少なくなるため、今後新型コロナウイルスに感染しないとは限りません。
ワクチン接種
現在、新型コロナウイルスのワクチン接種が順次行われています。
ワクチンを接種することにより、あらかじめウイルスや細菌(病原体)に対する免疫(抵抗力)を作り出し、病気になりにくくします。
ワクチン接種をしていても感染する場合はありますが、接種することで、感染しにくくする、重症化を防ぐ、感染しないことで未接種の人へうつさない、という目的があります。
ワクチン接種が終了したからと過信しないでください。今まで通りの感染対策をお願いします。
ID NOWの紹介
PCR検査以外にも、遺伝子検査があります。洛和会東寺南病院では、PCR検査に代わる遺伝子検査のできる検査機器(ID NOW)を導入しています。
PCR検査は、温度を上げ下げして検査をするので、検査に数時間かかりますが、ID NOWでは、等温で核酸増幅する方法で、陽性の場合は最短5分、陰性の場合は約13分で結果がでます。
結果は陽性・陰性と表示されます。PCR検査の方が、数値が出るなど、より精密ですが、抗原検査と比べると、ID NOWの方が感度が良いです。
職員みんなで感染対策に取り組んでいます!
検査は、洛和会東寺南病院に入院中の患者さんや外来通院透析患者さんを対象に、発熱時や入院時などに行っています。
職員みんなで、病院内に新型コロナウイルスを持ち込まない、流行らせないよう、日々感染対策を行っています。
一日も早い終息を迎えられるよう、ワクチン接種をされた方も過信せず、今まで通り十分な感染対策をしていきましょう。
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公開日時 : 2021年11月15日 (月)