今回お話を聞いたのはこちら
脊椎・脊髄の病気は、運動機能が衰えるため日常生活で介護が必要になるロコモティブシンドロームの原因となります。当院の脊椎センターでは、なるべく介護を受けず自立した日常生活が送れるように脊椎・脊髄疾患に対して幅広く高度で先進的な医療を提供しています。
洛和会音羽病院 院長補佐
整形外科 脊椎センター センター長 兼務
岩下 靖史(いわした やすし)
脊椎は体を支える重要な部位
健康寿命を延ばす
日本は超高齢社会になっており、個人のためにも社会全体のためにもできるだけ介護を受けずに活動性の高い状態で日常生活を送れる健康寿命(心身ともに自立して日常生活ができる生存期間)を延ばす必要があります。
要支援・要介護になる要因の多くは運動器の障害ですが、その中でも近年脊椎疾患が増加しています。脊椎・脊髄疾患はロコモティブシンドローム(運動器症候群)の原因の一つで、悪化すると要介護状態となる危険性があります。
要介護状態とならず健康寿命を少しでも長く維持できるように、早期診断、早期治療が必要です。
主な症状から適切な診断治療のために
脊椎・脊髄疾患は、頸部痛、腰痛、手足のしびれや痛み、手指がうまく使えない、歩きにくいなどのさまざまな症状が出現します。
脊髄・末梢神経疾患は神経変性疾患や脳血管疾患との鑑別診断が難しいことがあり、適切な診断治療のためには多くの診療科の協力が欠かせません。当院では、充実した脳神経内科、脳神経外科、整形外科(脊椎センター)などが連携、協力して診療を行っています。
脊髄は回復能力が極めて低く、高度な脊髄麻痺が生じると大きな障害が残ってしまうため、麻痺が増悪する前に脊髄の除圧手術をする必要があります。また、3カ月以上長期に痛みが持続すると痛みが神経に記憶(中枢感作、末梢感作)されてしまう慢性疼痛の状態になり、治療が非常に難しくなります。従って、必要以上に痛みを我慢することは良くありません。適切な時期に手術治療を受けることをお勧めします。
治療方針
運動療法、薬物療法、神経ブロック、コルセット装着など、十分な保存的治療を行います。
十分な保存療法を行っても改善せず日常生活に支障を来している患者さんには、手術治療を検討します。特に、神経麻痺症状や膀胱直腸障害のあるときには、できるだけ早く手術治療をします。
手術を行う場合は、なるべく体に負担の少ない低侵襲手術を行っています。脊柱管狭窄症に対しては脊椎の後方の筋肉や骨をなるべく温存する椎弓形成術、椎間板ヘルニアに対しては症例を選んで内視鏡を用いた小皮膚切開によるヘルニア摘出術も行っています。
脊椎に不安定性がある場合や側弯症で矯正固定が必要な場合は、チタン合金製のインプラントを用いた脊椎固定術を行います。骨粗しょう症性椎体骨折に対しては、骨折部椎体内への骨セメント注入治療(経皮的椎体形成術)も行っています。悪性腫瘍の脊椎転移に対しても、症例に応じて除圧固定術を行っています。また、成人の脊椎疾患だけでなく、腰椎分離すべり症、思春期特発性側弯症などの小児脊椎疾患も積極的に治療しています。
山科地区の当会3病院の連携
洛和会音羽病院は名神高速道路 京都東インターチェンジに近く、遠方から搬送されてきた交通事故や労災事故による脊椎損傷患者さんの緊急手術治療も多く行っています。当院は医師研修の実施と高診療密度で高度な診療内容が評価され、厚生労働省からDPC特定病院群に認定されています。
今後も、地域の皆さまに専門的で高度な医療を提供するために、病診連携と病々連携による役割分担を強化してDPC特定病院群を維持してまいります。また、透析治療専門の洛和会音羽記念病院が当院の近くにあり、化膿性脊椎炎に罹患した透析患者さんの膿瘍掻爬、洗浄、ドレナージ手術も多数行っています。
手術後に濃厚なリハビリテーションが必要な患者さんには、洛和会音羽リハビリテーション病院の回復期リハビリテーション病棟に転院して充実したリハビリを受けていただいています。
患者さんに頸椎あるいは腰椎の手術治療を勧めると、「知人で手術後に寝たきりになった人がいるので恐ろしい」とか、「家族に脊椎の手術は危険なのでやめたほうがいいと言われた」と、よく話されます。しかし、脊椎・脊髄外科は、CTやMRIなどの画像診断技術の進歩により目覚ましく診断能力が向上しています。また手術手技も以前と比較して飛躍的に進歩し、ナビゲーションシステムや術中C T 撮影装置(コアビジョン3D)の導入などにより安全性・確実性が高まり、術後合併症も少なくなっています。
当院の脊椎センターは脊椎外傷から脊柱側弯症、慢性変性疾患、転移性脊椎腫瘍の症例まであらゆる脊椎・脊髄疾患に対して、幅広く高度で先進的な医療を提供しています。
現在の病状や治療方針とそれに伴うリスクなどをよく理解していただけるよう詳しく説明しますので、納得した上で安心して治療を受けていただきたいと思います。
脊椎の病気でお困りの方、手術を受けるかどうかで悩んでおられる方は、お気軽にご相談ください。
複雑な形状の脊椎手術
洛和会音羽病院では、脊椎治療でより正確で安全性の高い手術を実現するため、3次元のエックス線画像を手術中に撮影できる「コアビジョン3 D 」を導入しています。手術用ナビゲーションシステムと連動することで、手術前にCT撮影をしなくても、術中の体位を正確に把握することが可能となり、手術精度の向上、放射線被ばく量の低減、手術時間の短縮を実現しています。
関連情報
らくわ健康教室は、一般の方を対象に、医療や介護の専門家が健康に役立つ情報を分かりやすく解説する無料の講演会です。定期的に京都市内の病院や公共施設などで開催し、病気の治療や予防、介護や健康保険・介護保険などについて発信しています。参加は無料です。気になる講演がありましたら、お気軽にお申し込みください。
お問い合わせ
洛和会音羽病院
TEL 075(593)4111(代)
月~金曜日 午前8時30分~午後8時 / 土曜日 午前8時30分~午後5時15分
※日曜日・祝日・年末年始(12月30日~1月3日)はお休みをいただいております。
公開日時 : 2023年08月09日 (水)