1月1日に発生したマグニチュード7.6の能登半島地震。
京都府からの要請を受け、1月4日には当会職員がDMATとして医療支援のため出動しました。
今回はその活動をはじめ、当会が実施した被災地支援を取り上げます。
DMAT活動内容
※本記事は当院の部隊が派遣された1月4日~7日の活動内容を基にしています。
DMAT活動拠点本部で活動開始
二次派遣として京都府内の病院から当院含め9隊のDMATが派遣されました。
当会DMATは、石川県立中央病院に設置されたDMAT活動拠点本部に配置。
ここでは、派遣要請を受けた15~20隊のDMATの管理と患者さんの情報集約が行われていました。
具体的には、全体の指揮・命令系統の整備や支援者側と被災地の安全確認、消防署や自衛隊など関連機関とのコミュニケーションと状況把握。
その上で、緊急性の高い活動は何かを考え、活動方針を立てて実行しました。
これは、災害医療で最も大切だとされているCSCAといわれる活動の根幹の組み立てにあたる部分です。
Command & Control(指揮と調整)
Safety(安全)
Communication(通信)
Assessment(評価)
DMATのチーム編成
DMAT(Disaster Medical Assistance Team)とは、災害発生直後から活動できる機動性を備えた災害派遣医療チームのこと。
災害医療の研修を受けた医師・看護師・業務調整員(医師・看護師以外の医療職もしくは事務職員)3~6人で構成されます。
「災害拠点病院」や「DMAT指定医療機関」に所属していることが必要です。
当会DMATの調整員は、薬剤師・理学療法士・救急救命士が務めました。
ER指揮所にてMCCの設置
活動拠点本部業務からER指揮所での活動に移行し、MCC(Medical Check Center)のシステムの構築を奈良県のDMATと協働して行いました。
DMAT第一陣が行っていた患者さん受け入れのシステムに、病院選定と転院交渉機能を追加し、重症度に応じて周辺の病院へ患者を搬送するフローを確立しました。
また、ばらばらであった患者受け入れに関する連絡経路も、活動拠点本部による整理により、スムーズに活動できるようになりました。
MCC内での医療支援活動
石川県立中央病院には、陸路や空路などさまざまなルートで患者さんが搬送されてきました。
その患者さんを重症度によって振り分け、MCCでは比較的軽症の患者さんの支援を行いました。
トリアージ
搬送された患者さんの状態に応じて振り分け、即時に治療が必要な黒・赤タグの患者さんは院内の救命救急センターにて処置が行われました。
それ以外の黄・緑タグの患者さんがMCCへと運ばれてきました。
トリートメント
MCC内に運ばれた患者さんをリスト化し、合わせて、軽症者の治療も行っていました。
主に、骨折や慢性的な疾患のある方で被災のため投薬を継続できず悪化した方などが運ばれてきました。
転院先病院選定
搬送先の候補を選定しました。
転院先の決定・搬送
一日も早い復興を願って
発災直後から開始した京都府のDMATとしての主な活動は3月11日をもって撤収となりましたが、被災地の復興にはまだまだ時間がかかると思われます。
早期復興のためには、引き続き、私たちができる支援を継続していく必要があります。まだ終わったわけではありません。
京都で同規模の災害が起きたら
京都府と石川県は南北に長い地形であり、南側に医療資源が集中している点も類似しています。
今後、災害時に北部から京都市内への搬送することを想定した陸路・空路の確保・搬送フローなどについても、防災訓練として改めてトレーニングしていくことになると思います。
また、京都で同規模の災害が起きた場合、洛和会音羽病院は災害拠点病院としての役割を果たすため、地域の二次病院、役所、消防などとの協力体制をつくる必要があります。
災害時の連携を円滑に行うためには、平時から地域の各機関との顔の見える関係づくりが大切だと改めて感じました。
洛和会にはDMATとしての訓練を受け、災害時に出動できる職員が多職種合わせて約30人在籍しています。
今回、DMATとして当院から第1隊に続き、2隊目、3隊目の派遣につなげられたことは、出動メンバーだけでなく、病院全体としての活動支援と、部署を越えた職員みんなの理解と協力による成果だと思っています。
このチーム力を生かして災害時体制の構築・強化につなげ、当院だけでなく洛和会全体にもこの輪を広げながら、引き続き地域医療を守っていきたいと考えています。
救命救急センター・京都ER 副部長 宮前 伸啓
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公開日時 : 2024年04月30日 (火)