皆々さん。総合内科のTです。こんにちは/こんばんは。
”帯状疱疹” という疾患はご存知と思います。どういうものかといいますと、(釈迦に説法ですが、敢えて書きますと…)幼少期にVZV(水痘帯状疱疹ウイルス)に感染し水痘として発症、その後VZVが神経節に潜み、成人以降の体力・免疫力が落ちたときに帯状疱疹として、典型的には片側に帯状の水疱・丘疹の集簇として現れる…ですよね。皮疹だけでなく、知覚異常ももたらします。感覚過敏・知覚鈍麻・しびれなどの症状が出ます。高齢者ではPHN(ヘルペス後神経痛)を残し、悩まされることがあります。
このVZV、基本的には知覚神経の神経節に潜みますから、脊髄後根の神経節に潜んでいるとされます。そして上記のような知覚の症状を出します。
しかし、VZVは運動神経を侵すこともあるんですね。代表的なものはRamsay-Hunt症候群です。Tolosa-Huntと勘違いしてしまうことがあるかもですので、気を付けてください。Ramsay-Hunt症候群は耳性帯状疱疹と訳されることがあるように、耳介や外耳道、耳介周囲に水疱・丘疹がでます。そして同側の末梢性顔面神経麻痺を起こしますね。
他にも運動神経麻痺を起こすVZVの疾患を知ってますか。
一つは、腹部の帯状疱疹後に、腹筋麻痺さらに麻痺性イレウスを起こすものです。
帯状疱疹とほぼ同時期か数日後に、外腹斜筋等の麻痺をきたし、膨隆します。また、腸管の神経叢に入り込み、腸管麻痺を起こすことがあります。回復に数カ月要することもあります。
最後の例です。まれですが、迷走神経領域の帯状疱疹があります。嚥下困難を起こすことがあります。咽頭に水疱を認めることがあります。また、反回神経麻痺を起こし、嗄声となる例もありました。外耳道に水疱をつくることがあります。外耳道の一部を迷走神経由来のArnold神経が支配しており、水疱を認めることがあります。
さらに。迷走神経は肺にもいってますから、CTで多発の小結節を認める例もあります。(酒見英太:「肺の帯状疱疹」、日本医事新報:No.4894,2018.2.10)←当院医学教育センター長です。
自験例がないので成書の記載の引用ですが、仙骨神経領域だと膀胱直腸障害を起こす例もあるようです。
VZV。奥が深いですね。では、また。