みなさん、こんにちは/こんばんは、Tです。
おそらく標題を見て「医療とシャーロックホームズの関係はあるの?」と思われた方は、実は少ないか・・・と思います(変な書き方ですが・・・)。
シャーロックホームズと診察・・・これは、これまでたくさんの総合診療医の先生方がネット上でも意見を展開されてきています。私も昔からひとつのテーマとしてきていました。また何回か、このテーマでの講演なども依頼されしてきた経緯があります。最近もありました。
病歴を丁寧に聴取し医療面接を行い、それに基づき身体診察をする。そしてプロブレムを挙げてそれに対してアセスメントとプランを立てる。いまさらこんなに書き綴るまでもない当たり前の診療のプロセスですが、ここにちょこっと一コマ入れていただきたいのであります。
実は一コマ、というほどではないのです・・・上記したシャーロックホームズとは・・・身体所見の一部なんです。こちらから診察して所見を取りにいくまでもなく、”患者さんが勝手に出しているサイン”を見つける身体所見なんです。つまり気が付くかどうか、です。原則こちらが触って叩いて聞いて、をしない身体所見ですね。しれっとでているのを察知できるかどうかカギとなります。バイタルサインも患者さんがしれっと出しているものですが、これは血圧計など器具を用いてこちらから手を加えないとわからない所見なので、この部類には入れません。
(外傷診療のprimary survey(PS)では器具を用いずバイタルサインをみますが、橈骨動脈を触れる・皮膚の湿潤を確認する、などの”手を加えて”所見を取ってますから、これもシャーロックホームズには入れません。)
例えばストレッチャーの上で座り続ける。看護師さんに横になるように促されてもすぐ座位になる・・・などがこれで、しれっと態度で示しています。これは起坐呼吸の可能性があります。もちろん、同時に呼吸状態が不安定で頻呼吸であったり呼気延長があったりしますので、実際はすぐに起坐呼吸であると気がつくことでしょう。(これらもまた患者さんがしれっとだしているシャーロックホームズ的なサインですね。)
ERで初めてみたCOPD患者さんの指がばち指・・・知らないとCOPDなのだからばち指があって当たり前、なんて考えてスルーしてしまうことでしょう(そもそも指をみないかもしれませんが)。COPD単独でばち指にはなりませんので、間質性肺炎や肝硬変症もある、またむかしからある(先天性でない)なら、肺癌を疑うべきです。見逃すと先々こわいことになります。
病歴にも、”シャーロックホームズ”はあります。
中年男性が;
「朝起きた時から手足が動かず這ってトイレに行った。少し様子見てたが全くよくならないので、携帯で救急車を呼んだ。こんなことは初めて。これ関係あるかな?昨日夜に久しぶりに時間ができたからずっと行きたかったジムで20km走って、その後家でがっつり暴飲暴食したんだけど・・・」
・・・なーんて言ってたら、知っていればそのまま患者が病気を語っているわけです。周期性四肢麻痺の可能性ですね。教科書的に低カリウム性周期性四肢麻痺の病歴にでてきます。東洋人の中年男性なので思わず「未治療の甲状腺機能亢進症はありませんか?治療中断していませんか?」なんて聞きたくなります。
まさに、
“Listen to your patient, he/she is telling you the diagnosis.” ~ William Osler ~
ですね。
p.s. 連載を開始しました「研修医のためのレクチャー」で、今回シャーロックホームズをテーマにお送りしております。タイアップですね(笑)