研修指導医日記

保険適応外の検査

みなさん、こんにちは/こんばんは。総合内科のTです。

診断をつけるのに、やれ病歴が大切だ、身体所見だ、と、このブログでも謳ってまいりました。それはこのブログの根底に常にあるものです。最終的には採血や画像診断などで確定診断がつく、stagingをするなどとなりますね。

ところが。

診断をつけるのに、成書や教科書、インターネットの専門サイトにある”正しい検査方法”ができないことがあります。

その一つが「保険適応」です。

これは検査だけでなく、治療でもそうです。いろいろ悩まされます。

人物などが特定されるといけないご時世なので、ぼやかしますが、これまでTが保険適応でなく苦しめられた?検査をいくつか挙げてみます。

1.コクシエラ・バーネッティ(Coxiella burnetti)

不明熱の原因として考えないといけないときがある感染症です。「Q熱」の原因病原体として知られます。リケッチアですが、他のリケッチアのような皮疹を呈しません。家畜・愛玩動物からの感染です。急性Q熱では、通常の不明熱の鑑別を行っていく中で、感染症のようだが抗生剤無効などで通常細菌や抗酸菌以外をチェックしていくことにより疑われます。もちろん、前記した動物との接触歴を確認しておく必要があります。疑わしくても保険適応の検査がないため検査があまりされず、本邦における感染の実数は未だ不明とされています。

検査としては、DNAのPCR、また間接抗体法ですが、保険適応がないばかりか一般検査機関での検査も限られています。

2.バルトネラ(Bartonella henselae)

いわゆる「ねこひっかき病」の原因菌です。ねこにひっかかれたことがある、またはキズがあり、そして腋窩リンパ節、頚部リンパ節腫脹している例は、比較的診断がつきやすいです。患側の滑車上リンパ節腫脹は猫ひっかき病くらいしか腫れません(鑑別として悪性リンパ腫は大切です)。

これまで、亜急性の発熱の片側頚部リンパ節・鎖骨上リンパ節腫脹を主訴にこられた中年男性など、何例か同病を疑うも典型的な病歴でなく、他疾患をrule outしていく中で相対的に疑わしさが上昇した症例があります。上記のようなわかりやすい状況ではなく、発熱と頚部の局所リンパ節腫脹の鑑別を要する状態です。女性ならば壊死性リンパ節炎を疑ったり(もちろん男性例もあるのですが、典型的には女性)しますし、中年なのでEBVよりはCMV感染症が疑われたりします。結核ももちろん疑いました。究極的には、悪性リンパ腫をrule outするところまでいくcaseも多く、リンパ節生検を耳鼻咽喉科にお願いさせていただくことも多いです。FNA(針吸引生検)で診断がつき(悪性リンパ腫でないとの診断)、リンパ節生検までいかなかった例もありますが、バルトネラの診断がたやすくつけやすかったらなあ、という経験はあります。

上記以外にもまだまだ保険適応外の検査はあります。必要であればもちろん検査をオーダーしますが、そう簡単にする、しない、と決められないcaseが多く、保険適応外でも敢えて検査するか、頭を悩まされます。

みなさんはどうでしょうか。

一年目研修医先生、ERガンバレ!

みなさん、こんにちは/こんばんは。総合内科のTです。

前回は、実習の学生さんについて書きました。今回は、研修医の先生に焦点をあてて書きたいと思います。

一年目の研修医の先生もだいぶ仕事に慣れてきたように思います。ぼくも一年目の頃はよく覚えています。覚えることがたくさんありすぎて、毎日消化不良であったように思います。ただ、若かったためか、やっと医者になれたうれしさのためか、全く苦ではありませんでした。

国家試験や大学で習った内容と微妙に違う実臨床の疾患→知識がそのまま使えない、薬の一般名を覚えていても「薬品名」を知らないといけない状況、採血・サイン確保手技、患者さんとのコミュニケーションの取り方、看護師さん(当時は看護婦さん)や医療スタッフとのコミュニケーション・・・いろいろ、またこれらが束になって毎日襲ってきていました。

一年目の先生もおそらく同様の”襲撃”を毎日受けていると思います。

オリエンテーション中や直後の彼らの雰囲気も変わってきました。いわゆる”学生気分”が抜けて、”臨床医モード”になってきた感じがします。これは私の主観ですが。

研修の同期はとても大切で苦楽を共にする仲間であったり、またある時は良きライバルであったりします。今年の一年目さんたちは、9名全員男性医師のためか(今年は10名の募集ではありませんでした)、毎年みんな仲良しではあるのですが、今年は一層仲が良さそうに見えます。

鉄は熱いうちに打て ---

年寄の昔話ですが、昔は朝から深夜まで、土日も病棟にいたものですが、またそれが美徳とされていた感じもしますが、今は働き方改革の旗印の下、勤務時間内で仕事を終わらさないといけません。それはとてもいいことだと思っています。しかし、仕事とプライベートをうまく両立しないといけない、ということになるのではないでしょうか・・・私が今の研修医なら、うまくできそうにありません。

時代とともに様々変化するものがありますが、鉄は熱いうちに打たないといけないことは変わらないと思います。

ガンバレ!一年目研修医!

実習の学生さん

 

皆さん、こんにちは/こんばんは。総合内科のTです。

昨年1月からの新型コロナウイルス感染症は、未だ世界中の至るところで様々な影響を与えています。

医学教育もそうです。

一昨年まではいくつかの大学の5・6年生が1~2週間、当科に実習に来られていました。昨年もその予定であったのですが、コロナのために実習中止となることがほとんどでした。

せっかく実習ができるようになっても、当院でのコロナ発生により実習を中断せざるを得ないこともありました・・・月曜に1日実習に来られて、その日の夜に当院の内科病棟での発生がわかり急遽翌日から中止となってしまったのです。

今年の新6年生(昨年度は5年生)はかわいそうです・・・ですので、実習に来られたら、重々、重々安全・感染防止には留意してできる限り外来、病棟の両方で実習してもらっています。できるだけ患者さんに関われるよう、せめて”におい”だけでもかげるように(!?)しています。

やはり患者さんに関わってなんぼ、と思っております。

新型コロナウイルス感染症がどうなっていくのか、まだ見当がつきません。ワクチン接種によりどうなるのか・・・今Tができることは、無事学生さんが実習に来られることを祈ること、そして来られたら精一杯指導させていただくこと、だけです。

実習の学生さんだけではありません。たった1日、見学に来られた学生さんにも機会あらば、とできるだけ臨床に関われるように工夫しています。

学生さんはぜひ、当院に見学にきてください。

VZV(水痘帯状疱疹ウイルス)って・・・

皆々さん。総合内科のTです。こんにちは/こんばんは。

”帯状疱疹” という疾患はご存知と思います。どういうものかといいますと、(釈迦に説法ですが、敢えて書きますと…)幼少期にVZV(水痘帯状疱疹ウイルス)に感染し水痘として発症、その後VZVが神経節に潜み、成人以降の体力・免疫力が落ちたときに帯状疱疹として、典型的には片側に帯状の水疱・丘疹の集簇として現れる…ですよね。皮疹だけでなく、知覚異常ももたらします。感覚過敏・知覚鈍麻・しびれなどの症状が出ます。高齢者ではPHN(ヘルペス後神経痛)を残し、悩まされることがあります。

このVZV、基本的には知覚神経の神経節に潜みますから、脊髄後根の神経節に潜んでいるとされます。そして上記のような知覚の症状を出します。

しかし、VZVは運動神経を侵すこともあるんですね。代表的なものはRamsay-Hunt症候群です。Tolosa-Huntと勘違いしてしまうことがあるかもですので、気を付けてください。Ramsay-Hunt症候群は耳性帯状疱疹と訳されることがあるように、耳介や外耳道、耳介周囲に水疱・丘疹がでます。そして同側の末梢性顔面神経麻痺を起こしますね。

他にも運動神経麻痺を起こすVZVの疾患を知ってますか。

一つは、腹部の帯状疱疹後に、腹筋麻痺さらに麻痺性イレウスを起こすものです。

帯状疱疹とほぼ同時期か数日後に、外腹斜筋等の麻痺をきたし、膨隆します。また、腸管の神経叢に入り込み、腸管麻痺を起こすことがあります。回復に数カ月要することもあります。

最後の例です。まれですが、迷走神経領域の帯状疱疹があります。嚥下困難を起こすことがあります。咽頭に水疱を認めることがあります。また、反回神経麻痺を起こし、嗄声となる例もありました。外耳道に水疱をつくることがあります。外耳道の一部を迷走神経由来のArnold神経が支配しており、水疱を認めることがあります。

さらに。迷走神経は肺にもいってますから、CTで多発の小結節を認める例もあります。(酒見英太:「肺の帯状疱疹」、日本医事新報:No.4894,2018.2.10)←当院医学教育センター長です。

自験例がないので成書の記載の引用ですが、仙骨神経領域だと膀胱直腸障害を起こす例もあるようです。

VZV。奥が深いですね。では、また。

またまた、本当にお久しぶりです

皆々さん。総合内科のTです。お久しぶりです。

昨年度はコロナに振り回され現場での対応も多く、気が付くとブログを書かないまま数カ月があっさり過ぎてしまいました。

本年度、当総合内科は強力な医員をメンバーに加え、さらに強固な体制で進むこととなりました。

それに伴って、定期的なブログ発信ができそうです。

洛和会音羽病院総合内科、初期研修医・後期専攻医たちのことや興味深い疾患について、本年度はどんどん確実に届けられたら…と思っています。

よろしくお願いいたします。