楽しく役立つ健康講演会

教育・研究

元気! ハツラツ! 音楽療法!!

投稿日:2016年8月31日 更新日:


はじめに

音楽療法は、音楽の持つさまざまな働きを使って、心身の健康に役立てる療法です。本日は、音楽と健康との関わりを考えながら、音楽療法とは何かについてお話しします。

「健康」って何ですか?

健康の定義は、WHO(世界保健機関)が1948(昭和23)年に次のように定めています。
「健康とは、完全に身体的・精神的・社会的に良好な状態であり、単に病気や虚弱でないということではない」。
つまり、体と、心(精神)と、社会的状況の3つが、バランスよく保たれている状態が健康といえます。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

健康へのニーズ(必要なこと)

心理的・精神的ニーズ
  • 感情表現の促進
  • ストレスの緩和
  • 安心感の向上
  • 人生の意味や目的
  • 生きがい
社会的ニーズ
  • 社会的交わり・コミュニケーションの機会
  • 孤独の感覚や孤立の状況を減少
  • 自己表現の機会
身体的ニーズ
  • 身体機能の向上と維持
  • 筋肉の緊張緩和
  • 痛みの緩和
  • 質の良い睡眠
  • 食生活の改善
  • 脳の活性化

これらのニーズをかなえるためには、全人的な考え方やサポートが重要となります。

なぜ音楽療法?

では、音楽療法がなぜ、上記のような健康へのニーズに役に立つのでしょうか。音楽療法の定義は、日本音楽療法学会が2016年に次のように定めています。

音楽のもつ生理的働きとは

  • 脳への働き:
    音楽情報は、脳のあらゆる領域で処理されます。たとえば音楽は、聴覚皮質や感覚皮質を活性化させるだけでなく、小脳は音楽に対する運動制御や感情反応に影響し、海馬は記憶を一時的に保存し、大脳皮質は記憶を長期に蓄え、また、前頭葉はそれらを引き出す力があると言われています。このように、好きな音楽を聴くだけで、ものすごく脳が活性化します。
  • エントレインメント:
    外部リズムに体内リズムが同期する現象です。たとえば、ギターのリズムに自然に体が動くのもエントレインメントです。
  • 身体的痛みの緩和:
    音楽は、楽しいことに没頭しているときに出る脳内物質のエンドルフィンやドーパミンの分泌を盛んにさせ、体の痛みを忘れたり和らげてくれる効果があります。

音楽のもつ心理的働き

  • リラクゼーション効果:
    ストレスホルモン・コルチゾールの低下。コルチゾールは副腎皮質ホルモンの一種で、興奮時に出るアドレナリンのコントロールをしますが、出過ぎると不眠などをもたらします。音楽はコルチゾールの分泌を抑え、睡眠導入への効果があります。
  • 同質の原理:
    音楽療法の核となる働きです。音楽を心身の状態に同調させ、徐々に音楽に変化を与えることで、適応させながら心身の状態に変化を与えていきます。たとえば、悲しい時に、楽しい音楽ではなく、悲しい音楽を与えることで、同調効果が起きます。
  • 投影:
    音楽を通じて感情を表に出す働きです。心の内にあるものを外に出すことを通じて、悲しみなどを認識したり受容することを可能にし、自己実現や成長につなげます。

音楽のもつ社会的働き

言語を介さないコミュニケーションが図れます。自尊心の向上や表現力の促進にも役立ちます。

音楽の意図的/計画的使用

音楽療法は、対象となる方に必要な音楽を、音楽療法士が判断し、計画的に実施するものです。対象者ごとに目標を定め、音楽の持つ力を最大限に利用します。

具体的には

  1. 対象となる方の文化的背景や過去の経験、信念や気分、サポート方法の違いなどを判断するアセスメントを行います。
  2. 臨床目標設定をします。音楽そのものを教えるのではなく、どういう効果を目指すのかという目標設定です。
  3. 音楽的介入計画をたてます。
  4. 臨床。実際に音楽療法を行います。
  5. 評価

をします。

音楽療法臨床法

実際の臨床現場では、さまざまな音楽療法が用いられます。

楽器演奏では、楽器の持ち方や演奏法を利用して、腕の上げ下げなど総合運動機能を高めたり、細かい指の動きや握力の向上などを狙います。音楽への動作では、先にも述べたエンレインメントのように、歩行運動への刺激(パーキンソン病などに効果が期待されています)などを狙います。リラクゼーションには、心拍数に近い1分間に♩=60-80テンポの曲で、音の高低差の少ない、歌詞のない単調な音楽が効果的です。即興演奏は、非言語的表現の表出や、感情表現の向上、コミュニケーションの促進に役立ちます。鑑賞・歌唱は、好みの音楽や思い入れのある歌を歌うことで、回想を促したり、コミュニケーションの向上や感情表現、自己決定力の向上と維持を図ります。

洛和会京都音楽療法研究センター

6人の音楽療法士が、それぞれ得意な分野を持ちながら活動しています。興味がおありの方は、以下までお問い合わせください。

質疑応答から

Q 介護施設で働いています。介護現場でも音楽はよく用いられるのですが、音楽療法と、単なる音楽を楽しむことの違いは何ですか。
A 音楽教育と、音楽療法、音楽レクリエーションは別のものです。これまで述べてきたように、音楽療法は対象となる個人を対象に、臨床目標を定めて計画的に行うものです。何を目指して療法を行っているかをあいまいにしては、療法になりません。とはいえ、即効性のある治療とは異なりますし、実際の現場では悩みながら音楽による療法の効果を求めて努力を続けています。

カテゴリー1-教育・研究
カテゴリー2-

関連記事

音楽療法 ~音楽で健康生活始めませんか?~

開催日:2017年1月18日 講師:洛和会京都音楽療法研究センター 係長 音楽療法士 北脇 歩(きたわき あゆむ) はじめに 本日は、健康ってどんな状態をいうのだろう、という問いをきっかけに、音楽や音 …

音楽療法 ~音楽で生き生きとしたリハビリを!~

開催日:2015年12月3日 講師: 洛和会京都音楽療法研究センター 係長 楽療法士 柴田 恵美(しばた えみ) はじめに 洛和会京都音楽療法研究センターには、センター長の矢野ひとみのほか、5人の音楽 …