- 開催日:2016年8月25日
- 講師:洛和会音羽病院 放射線部 主席係長 診療放射線技師 片山 雅人(かたやま まさと)
はじめに
最近、心臓のCT検査について耳にされる機会が増えたのではないでしょうか。本日は心臓CT検査の仕組みや実際について、ご説明します。
心臓の様子(形や動き)
心臓は、体のほぼ真ん中にあります。正面から見ると、体表面があり、その下に肋骨があります。肋骨の内側に肺があり、肺の奥に心臓があります。心臓は1秒間に1~2回、1分間に50~100回、休みなく拍動しています。心臓は筋肉の塊でできており、周囲を血管(冠動脈と冠静脈)が覆って、心筋に栄養分を供給したり、老廃物を大静脈に送り出す作用をしています。
心筋梗塞・狭心症
冠動脈に粥状のプラークがたまると、心筋への血流が滞ります。血流が止まってしまい、心筋細胞が死んでしまう状態が心筋梗塞です。心筋の壊死がおこりやすい状態が狭心症です。日本循環器学会のガイドラインでは、どちらの疾患の場合も、冠動脈CTによる診断が重視されています。
心臓疾患の治療方法
診断により、冠動脈の異常が疑われた場合、治療方法には(1)カテーテル、(2)心臓バイパス、(3)薬、の3つがあります。カテーテル治療は、手首や足のつけ根からカテーテルを体内に入れ、心臓まで導いて冠動脈を広げたり、網目状のステントを入れる手術です。心臓バイパス術は、冠動脈の詰まった部分を迂回するバイパスを作ってやる方法で、自分の血管(足の静脈など)を使用して迂回路を作り、新しい血流路をつくってやります。薬による治療は、薬の作用で心臓の負担を軽減し、症状を改善する方法です。具体的には、冠動脈を広げたり、血管が縮むのを予防したり、動脈硬化の進行を抑えたり、血の塊を作りにくくします。
CTの発明
CT(コンピューター断層撮影装置)は、1963(昭和38)年に英国のハンスフィールド博士が発明しました。その後、1972年に発表された後、博士は1979年にノーベル医学・生理学賞を受賞します。そのCTと、ビートルズが関係していることをご存じですか。実は、ビートルズが所属していたEMI社が、ビートルズの大成功で得た利益の一部(数十億円)を利用してCTが開発されたのです。
CTは、ドーナツ型の装置を使って得られたエックス線撮影データをコンピューター処理して、対象部位の画像を作成します。ドーナツ型の装置の中には、エックス線を出す管球部と検出部があり、高速で回転しながらエックス線撮影を行います。1回転するのに、0.28秒という超高速で回りながら、検査部位を次々に撮影し、画像データを蓄積します。1997年には、輪切りの幅をさらに狭くしたマルチスライス型も開発され、それまで以上に詳しいデータが得られるようになりました。
心臓CT
心臓CTは1995年に開発されました。その後、心電図同期CT,16スライスCT,2管球CTと進化し、少ない被ばく線量で多くの画像が得られるようになりました。開発当初のCTでは、撮影時間が1.0秒で4枚の画像が得られましたが、マルチスライスCTの登場で撮影時間が0.28秒、画像が500枚も得られるようになり、さらに2管球の登場で、撮影時間が0.14秒まで短縮されました。それだけ、被ばく線量が少なくて済み、鮮明な画像が得られるようになったのです。洛和会音羽病院では、この2管球のCTを使っています。
心臓CT検査では、心臓の全体像や、冠動脈の状態が分かります。心臓の検査にはカテーテルを心臓まで導いて造影剤を入れエックス線撮影するカテーテル検査もありますが、心臓CT検査は造影剤を注射するだけなので患者さまの身体的負担がより少なく、日帰りで検査できる利点もあります。
心臓CTのやり方
洛和会音羽病院の場合、心臓内科で診察を受けた後、主治医の依頼を受けて心臓CT検査を行います。
当日は、薬の服用がある場合は、服用していただき、検査前の心臓の動きを確認した後、本人確認をし、CT撮影用のベッドに寝ていただきます。造影剤を注射し、心電図をつけて検査直前の心臓の動きを確認します。その後、息止めの練習をし、心臓の血管を広げる薬を舌下にスプレーし、撮影を始めます。
造影剤の注射では、造影剤が体に入ると、体に熱い感じがします。注射の副作用が出る確率は0.001%と限りなくゼロに近いですが、もし針の部分の痛みが続いたり、咳が出る、喉がイガイガする場合はお知らせください。
画像の種類
心臓CTでは、VRT(立体画像)、MIP(最大値投影画像)、CPR(血管に沿った画像)が得られます。
その他の取り組み
心臓CTのほか、心筋の血流の状態がわかる心筋SPECT画像も同時に表示することも可能です。
おわりに
洛和会音羽病院では、最新の機械を使って、患者さまにより負担の少ない心臓CT検査を行っています。ご自分の心臓に不安をお持ちの方は、かかりつけ医とご相談のうえで、必要な場合は洛和会音羽病院の心臓内科を受診してください。
質疑応答から
Q CT検査は、被ばくが心配ですが。
A 心臓CTの場合、当初は15ミリシーベルトの被ばくがありました。しかし今、洛和会音羽病院にある2管球のCTでは被ばく量は0.7ミリシーベルトとごくわずかです。ちなみに日本人が自然から受ける被ばく線量は年間で2.5ミリシーベルトです。
Q CTとMRIは、どう使い分けているのですか。
A たとえば骨折した部位の確認はCTがよくわかります。しかし靭帯や関節はMRIの方がよく分かります。肺はMRIが撮れないのでCTです。このように、体の部位によって使い分けています。
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