- 開催日:2015年11月12日
- 講師:京都市中京区地域介護予防推進センター 係長
理学療法士 布施 昌幸(ふせ まさゆき)
はじめに
姿勢に対する悩みは、病院でもよく聞かれます。「姿勢が良くなりたい」「背中が丸くなってきた」「痛みで動作が困難」など、さまざまです。でも、そもそも「良い姿勢」とは、どんな姿勢でしょう? 一緒に考えながら、動ける体づくりについてお話しします。
姿勢とは
広辞苑によれば、姿勢とは「1.からだの構え」「2.事に当たる態度」のことで、心と体の状態を表します。実際に心と体のバランスが良い人は姿勢が良く、両者のバランスが崩れると姿勢が悪くなります。
姿勢変化の原因と対処法
<医学的な管理が必要な姿勢変化>
構造的な変形:先天的な奇形、発達過程での問題、外傷や疾患
疾患:脊柱圧迫骨折、呼吸器、脳性麻痺(まひ)、変形性疾患、脳卒中、外傷後拘縮など
栄養状態:過度な体重減少
<自己管理が行える姿勢変化>
生活習慣:動作・姿勢のとり方の習慣(重心の崩れ、心理状態、認知、身体感覚など)や、痛みを避けようとする姿勢
大切なのは、疾病や構造からくる姿勢変化と、習慣からくる姿勢変化を分けて考えることです。中でも脊柱管圧迫骨折には注意が必要です。骨粗しょう症の方などは、気付かないうちに圧迫骨折する場合があり、知らずに無理な運動や矯正をすると状況は悪化します
「良姿勢」と「不良姿勢」の判断基準
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
「姿勢」をめぐる誤解
背筋がぴんと伸びた姿勢が「良い姿勢!」と思っている人が多いですが、無理をして伸ばそうとすると、背骨が反りすぎる、無駄な力が入るなど、逆に体への負担につながります。モデルのような立ち姿は、力学の視点から見た良い姿勢に過ぎません。また、いわゆる「“気を付け”の姿勢」では、心身ともに過剰な緊張が起こり、内臓などの諸器官も過剰に圧迫され、血流や消化が悪くなります。
日々の動作が姿勢をつくる!
姿勢を「固定されたもの」と考えずに、一連の動作のひとコマと捉えてください。例えば下の写真の場合、一般的には左が悪い姿勢、右が良い姿勢といわれます。しかし、左の姿勢でも体に負担がかかる前に右の姿勢をとることができれば、特に問題ありません。
姿勢の問題解決に必要な条件
姿勢の問題を解決するためには、姿勢が変化した過程を振り返ることが大事です。自分と向き合い、心と体の関係性を丁寧に観察してみてください。そして、問題解決に必要な心身の条件を一つずつ整えていきましょう。
- 動ける姿勢(固定されない)
・ 関節の可動性があり、筋肉がしっかり伸び縮みする状態であること。
・ 体に負担がかかる前にニュートラルな姿勢(※)に戻れる状態であること。
・ 次の動作にスムーズに移行できること。
※ニュートラルな姿勢とは
車のギアの「ニュートラル」のように、無駄な力や緊張がどこにも加わっていない姿勢。背骨が自然なS字を描き、そこから曲がっても伸びてもいない状態です。 - 重心が安定している
重心は、重さの釣り合いがとれる地点のこと。立ったとき、両足の真ん中に重心がくると体は安定します。重心が前に外れると、猫背の原因になります。 - 心理的に安定している
心理的に楽(自由)であること。余分な力が入っていないこと。 - 良好な身体感覚・認知・身体イメージ
心の中で作り上げる自分自身の身体像(身体イメージ)が脳に蓄積されます。良好な身体のイメージを意識することが、実際の姿勢に反映されていきます。
個人にあった姿勢をつくるためのレッスン ~動ける体づくり~
1.身体に注意を向けましょう!
作業に集中しすぎると、重心が偏り、体のバランスを崩します。作業をしながらも自分の体が見えている(注意がいく)ことが大事です。
2.身体の構造を知りましょう!
身体の構造を、立体的に理解できると、効率良く体が動かせます。
例えば、膝の関節の位置はどこでしょう。太ももの辺りと思っている方も多いですが、実際の膝関節は「膝のお皿の下」あたりです。股関節や坐骨、背骨の位置も正しく知ることで効率良く体が動かせます。
構造上無理のない動きは、美しい所作につながります。その結果、筋肉・関節への負担が減ります。
動作は重心移動の連続です。日常生活動作を、「体重の移動」に注意を向けて行ってみましょう。
体重が次の支持面に移動したのを確認してから次の動作を行います。
はじめはゆっくり行ってください。慣れてくると、習慣化していきます。
まとめ
- 姿勢は、物事の捉え方(認識・認知)や心理面を反映します
- 問題解決には、生活を振り返り、根本原因を把握することが重要です
- バランスのとれた姿勢を作るには、日々の生活で、心と体の状態整えることが大事です
- 体に注意を向けて感覚を高めること(体を知ること、心と体をつなげること)
- しなやかな体をつくること
- 日頃の所作を丁寧に行うこと
1日1回でも、続けてください。きっと何かが変わりますよ。
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