- 開催日:2017年6月29日
- 講師:洛和会音羽病院 臨床検査部 課長 臨床検査技師 金羽 美恵(かねは みえ)
はじめに
動脈硬化とは、さまざまな原因で、”動脈が硬く”なることです。本日は、動脈硬化になる原因や、検査などについてお話しします。
動脈硬化になる原因
悪玉コレステロールの増加や、中性脂肪の増加、高血圧、肥満、糖尿病、喫煙などが動脈硬化を引き起こす原因となります。
悪玉コレステロールの増加:血管にへばりついたコレステロールをはがしてくれるのが善玉コレステロール(HDLコレステロール)です。善玉コレステロールが減ると、悪玉コレステロールの働きが活発になり、動脈硬化を引き起こします。
- 中性脂肪の増加:中性脂肪(TG=トリグリセライド)は、悪玉コレステロールを小型化します。小さくなった分、血管の壁に入りやすくなり動脈硬化の原因となります。
- 脂質異常症:中性脂肪やコレステロールの増加により、動脈硬化の危険性が高まります。
- 高血圧:血圧が上昇すると、血液の圧力で血管がもろくなり、悪玉コレステロールを、壁から吸収しやすくなります。ほかの原因で動脈硬化になり、高血圧になる場合もあります。病院の血圧測定で、上が140以上、下が90以上あると高血圧と診断されます。家庭での血圧測定では85~135以上だと高血圧といわれます。
- 肥満:内臓脂肪が多くなると、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が増加し、善玉コレステロールが減少します。
- 糖尿病:血糖値が高い状態では、血管が動脈硬化を防ごうとする働きが失われます。また悪玉コレステロールが酸化することで、動脈硬化を進行させます。
- 喫煙:タバコを吸うことで高血圧になります。悪玉コレステロールが、血管の壁にたまりやすくなり、善玉コレステロールが減ってしまいます。
動脈は全身に流れています
このため、体のどの部分で動脈硬化が起きるかによって、さまざまな病気が引き起こされます。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
動脈硬化を調べる検査
検査法には、血液検査やABI検査、超音波検査などがあります。
血液検査
※善玉コレステロールが標準値を下回った場合、そのほかの項目では標準値を上回った場合に動脈硬化が疑われます。しかし、血液検査の数値は、ほかの病気でも標準値と異なることがあるので、血液検査だけでは動脈硬化かどうかは、分かりません。
ABI検査
CAVI検査(心臓足首血管指数)
心臓足首血管指数(キャビィ)といわれ、動脈の「硬さ」を表します。
動脈は血液を全身に送るポンプの役割を果たしていますが、ポンプの内側の圧力(血圧)が変化したときのふくらみ具合をみることによって、ポンプのしなやかさ、つまり動脈の硬さが分かります。
血管年齢とは
弾力を目安に、血管の状態を年齢で表したものです。脳卒中や心臓病にかかる可能性や老化の度合いなどを知る尺度となります。
血管の硬化は加齢に伴って起きますが、これ以外に食生活の偏りや運動不足が原因で血管内にコレステロールがたまり、血流が悪くなることでも起こります。
閉塞性動脈硬化症(ASO)
手や足の血管が動脈硬化症により、狭窄(狭くなる)や閉塞(詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足元へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気です。
ASOの診断には、エコー検査が有用です。
頸動脈超音波検査(エコー)
- 頸動脈はプラークができやすく、簡単に視覚的に動脈硬化の診断ができます。
- 全身の動脈硬化の程度を表す指標が評価できます。
- 脳血管疾患に対する評価もできます。
プラークとは
簡単に言うと、コレステロールや脂肪が、お粥のようになりたまっていき、内膜がどんどん厚くなります。このようにしてできた血管のコブをプラークといいます。エコー検査ではプラークの厚さや性状を調べています。
動脈硬化の予防・改善
- 動物性脂肪が多い食品や糖質(炭水化物)を取りすぎない。
- 呼吸によって酸素を取り込みながら時間をかけて、ゆっくりと負荷をかける運動(有酸素運動)を行う。
生活習慣を変えることで、動脈硬化の予防、改善することを心掛けましょう。
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