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医療

楽しい食事をしよう ~高齢者の低栄養を防ぐ~

投稿日:2017年10月5日 更新日:

  • 開催日:2017年10月5日
  • 講師:洛和ヴィラアエル 栄養科 副係長 管理栄養士 山口 友美(やまぐち ともみ)

はじめに

本日は、高齢者が陥りやすい低栄養の問題を中心に、楽しい食事の工夫などについてお話します。

低栄養とは

低栄養とは、エネルギーとタンパク質が欠乏した状態、健康な体を維持するのに必要な栄養素が足りない状態のことです。

高齢者の体の変化

一般に高齢になると、食欲の低下や筋力の衰えなど、若いときとは違う体の変化に見舞われます。その結果、食べることが困難になり、低栄養に陥りやすくなります。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

低栄養になりやすい環境

さらに、低栄養になりやすい環境としては以下のようなものがあります。

  • 粗食
  • 偏食
  • 独居
  • 下痢の後
  • 風邪の後
  • うつや認知機能低下
  • 病気によるもの

これらの結果、低栄養になると、体力や免疫力の低下、体重減少、筋力低下などが起こり、骨が弱まって骨折しやすくなります。こうしたことが続いて重症化すると、死亡の恐れすらあります。

では、低栄養を見分けるには、どうしたら良いでしょうか。

低栄養と脱水は同時進行

高齢者は低栄養と同時に、脱水も起こりやすいことに注意が必要です。

低栄養と脱水が重なると、

  • 口の中や舌、唇が乾いている。唾液がベタベタする
  • よろけやすい
  • 食欲がない
  • だるい、元気がない
  • 皮膚が乾燥し、弾力がなくなる

などの症状が出ます。

体の様子がいつもと違う、と思われたら、医師に相談することも頭に入れておいてください。

数値で判断する

体重の変化でみる

体重の変化を目安に低栄養のリスクを判断することもできます。
体重が6カ月間に2~3kg以上減少した、または1~6カ月間の体重減少率が3%以上である場合は、要注意です。減少率とは、減った分を元の体重で割った%のことです。

BMIで見る

BMIは、体重と身長の関係から肥満度を示す体格指数です。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で表します。BMIで18.5未満が低体重です。20以下になると、介護の必要性が高くなる高齢者が増えるという調査報告もあります。

  • 体重4kgで、身長が16cmの場合、BMIは40÷(1.6×1.6)=15.6で、低体重です。
  • 体重5kgで、身長が16cmの場合、BMIは50÷(1.6×1.6)=19.5で、普通体重です。
  • 体重7kgで、身長が16cmの場合、BMIは70÷(1.6×1.6)=27.3で、肥満1度です。

血液で判定

血清アルブミン値(Alb)が3.5g/dl未満は低栄養状態です。3.8未満も注意が必要です。
血中総コレステロール値(T-cho)が150mg/dl未満は低栄養です。

サルコペニア

サルコペニアは筋肉減少症のことです。判定法としては、「指輪っか」があります。両手の指で輪っかをつくり、太ももの一番太いところが囲めるなら、サルコペニアの疑いがあります。

低栄養を防ぐには

低栄養を防ぎ、元気な体を保つためには、エネルギーとタンパク質が必要です。エネルギーとなる糖質や脂質、血や肉となるタンパク質に加え、体の調子を整えるビタミン・ミネラル・食物繊維をとる必要があります。

1日に必要なエネルギーとタンパク質量は、70歳以上で身体活動レベルが低い~普通の人の場合

  • 男性で1850~2200Kcal、タンパク質量は60g
  • 女性で1500~1750Kcal、タンパク質量は50g

です。

効率的に栄養を摂るには

主食・主菜・副菜をバランスよく摂ることです。栄養を高めるには「おかず」から食べることがいいでしょう。

楽しく食事をすることも低栄養を防ぐために役立ちます。ランチョンマットや箸置きを活用して楽しい雰囲気を演出することや、調理や後片付けを簡単にできるような工夫、食事に彩りを添える、誰かと一緒に食事をする、旬のもの、おいしいものを取り入れるのもお勧めです。体を動かしておくことも大事です。

食事の回数を増やす

一度の食事で必要な分量を食べられない人は、食事の回数を増やすのも効果があります。
食事を5~6回に分けたり、3回の食事+間食(2~3回)をするのもいいでしょう。
間食では、ビタミンの多い果物やカルシウムの豊富な乳製品などがお勧めです。
水分補給には栄養も摂れる飲み物を飲んでください。
少しの工夫で栄養アップを図ることもできます。

水分も大事

高齢者が脱水に陥る要因は、体に入ってくる水分と出ていく水分のバランスが崩れやすいからです。
入ってくる水分が、加齢や感覚低下による水分摂取量の減少、食事量の減少で減っていくのに対し、出ていく水分が、熱・汗・嘔吐(おうと)・下痢などによる水分喪失や、腎機能の低下によるトイレの回数増、服薬の影響などで増えていくことが考えられます。

隠れ脱水に注意

気付かずに脱水状態になっている原因として、以下のようなものがあります。
皮膚や唇・口内の乾燥、微熱などがある場合
汗をたくさんかいたり、下痢・嘔吐が続いた場合
冬の脱水。

脱水にならないために

1日に摂る水分の目安は「食事+飲み物」で約2リットル。最低でも約1リットルは必要です。
水分補給は回数を分けて、少しずつ行いましょう。

誤嚥にも注意

誤嚥とは、口から入って食道→胃へと行くはずの水分や食べ物が、誤って気管に入ってしまうことです。誤嚥の原因には、以下のようなことが考えられます。

  • 食べ物が口の中でばらけて、まとまらない。
  • 飲み込む動作をする前に気管に流れ込んでしまう。
  • 口の中やのどの神経などが麻痺(マヒ)しているか弱っている。
  • のどの奥に食べ物が残っている。
  • 気管の入り口の開閉がうまくいかない。

これらの結果、誤嚥がおこり、誤嚥性肺炎につながる恐れがあります。

誤嚥性肺炎を防ぐには、以下のような工夫が有効です。

飲み込みやすくするポイント

  • 適度な水分を含ませる。
  • のど越し良くさせる(卵豆腐・ゼリー)
  • 油脂やつなぎでまとめる(マヨネーズ・卵)
  • とろみをつけて、ばらけるのを防ぐ。
  • 調理方法を工夫する(煮込む・漬す・する)
  • サラサラした液体にはとろみをつける。
  • 正しい姿勢で食事する。

こんな点にも配慮を

交互嚥下:ご飯やおかず、汁物など形状の異なるものを交互にとることで、誤嚥を防ぎやすくなります。

スプーンや食器にも注意し、食べやすい大きさや重すぎない食器に気を配りましょう。
義歯の調整することも大切です。
食事の時間は30~40分を目安に。長すぎると疲れてしまうので、その場合は、間食で栄養補給をしてください。

このほか、認知症のために食べ物や食べ方が分からなくなったり、偏食となる人もいます。目の前で一緒に食べることで、食べ方を理解してもらうことも良いでしょう。

おわりに

食べられなくなる原因は1つではありません。様子をみて何が問題なのか見極めることが大切です。
元気を保つ源は、食べることです。
楽しく食事をして、低栄養に陥らないようにしましょう。

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