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医療 洛和会丸太町病院

心不全ってどんな病気?

投稿日:2017年3月14日 更新日:


はじめに

心不全と聞くと、どこか心臓が悪いんだろうな、と思われる方も多いことでしょう。実際は大変な病気です。本日は、心臓そのものの説明から、徐々に詳しく、心不全の説明をします。

心臓って、どんな臓器なの?

心臓は、にぎりこぶしほどの大きさの臓器で、全身に血液を送るポンプのような働きをしています。車でいえばエンジンにあたり、1日に10万回も休まずに動き続けています。心臓は4つの部屋に分かれており、各部屋の出口にはそれぞれ逆流しないよう弁がついています。全身から大静脈に集められて戻ってきた血液は、右側にある右心房、右心室を通って、いったん肺に送られます。肺から戻ってきた血液は、左心房、左心室を通って、今度は大動脈を通って全身に送り出されます。大動脈はいったん、頭の方向に流れてからUターンしてお腹の方へ流れます。肺に送られる前の血液は、どす黒い、暗い色をしており、肺から戻ってきた血液は明るい、赤い色をしています。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

心疾患は、死亡原因の第2位

日本人の死因のうち、一番多いのは悪性新生物(がん)で、年間約37万人が亡くなっており、国民の2人に1人はかかるといわれています。心疾患は、2番目に多く、年間約19万6000人が亡くなっており、命に関わることが多い病気といえます。3番目は肺炎、次が脳血管疾患です。

心臓には、どんな病気があるの?

心疾患(心臓の病気)には、以下のようなものがあります。

  • 狭心症・心筋梗塞:心臓を動かす冠動脈に異常が起きる病気です。
  • 弁膜症:心臓の弁がうまく開かなかったり、閉じなかったりする病気です。
  • 心筋症:心臓は厚さ1cmほどの筋肉(心筋)でできており、その筋肉に異常が起きる病気です。
  • 不整脈(心房細動・心室頻拍など):心臓を動かす電気信号に異常が起きる病気です。
  • 心不全

ところで心不全とは

心不全とは、上に述べた狭心症や弁膜症などの病気をはじめ、高血圧の影響から心臓が弱り(心機能低下)、その結果、さまざまな異常が起きる病気のことです。心不全は、あらゆる心疾患の終末像といえます。心機能の低下に、高血圧が大きく影響することにも注意が必要です。

心不全になると、どんな症状が出るの?

心不全の自覚症状は、息切れ・呼吸困難感や、むくみです。これ以外に血管が浮き出る頸静脈怒張(どちょう)もありますが、だれでも年を取れば血管が目立ってきますので、頸静脈怒張はわかりにくいです。呼吸困難感には、労作時呼吸困難や起坐(きざ)呼吸、発作性夜間呼吸困難などがあります。

心臓は、水風船

心臓の動きを、水風船に例えて説明します。私たちが水をたくさん飲んだ場合、心臓はふだんより大きくなって、たくさんの血流を送り出します。それが腎臓でろ過された後、おしっこがたくさん出るわけですところが心臓の機能が衰えている人の場合、本来ならたくさん出るはずの血流が一部しか出ない。例えば大静脈から「10」の量の血液が入ってきたとして、本来なら大動脈から「10」の血液が出るところが、「8」しか出ない。すると、「2」が心臓に残って心臓の内圧が上がる。すると肺とつながる血管の内圧も上がり、血管の壁から血液の成分が漏れ出して、血管が水浸し状態になる。そうなると、肺が酸素を十分に取り込めなくなり、呼吸困難になる。最後は全身の血管の内圧が高まり、足がむくむ結果となります。このように、心不全は、あらゆる心疾患の結果、起きる終末像です。心不全は、高齢者に発症率が高いことも分かっています。心不全の原因となる心臓病のうち、高齢者に多いのは、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)や高血圧性心疾患です。心不全の重症度は、4段階に分けられています。

心不全の検査や治療は?

心不全の患者さまの胸のレントゲンを撮ると、心臓が肥大している様子や、もやもやとした白い部分が広がっているのが分かります。採血も行い、異常が疑われれば、エコー(超音波)検査でさらに詳しく診断します。

  • 心不全における悪循環:心不全で頭に行く血液が減ると、自律神経の調節異常が起こります。そうなると、人体は腎臓などに行く血管を締めて頭に血を送り出そうとして、必要な血流量が足りなくなる悪循環を起こします。
  • 心不全治療薬の特徴:主として3つの薬(利尿薬、β遮断薬、血管拡張薬)があり、患者さまの状態に合わせて処方します。
  • 心不全に対する非薬物療法:心不全の程度(ステージ)に応じて、運動療法(1日15~20分、心地よい程度に歩く)や、和音療法、呼吸補助療法、心室同期療法、心移植などがあります。
  • 心不全治療の実際:心不全の治療は、1日の尿量と体重の変化を見ながら、薬を調整しながら行います。適切な投薬治療で、1カ月で10kgも体重が減る場合もあります。心不全の患者さまは急性憎悪を繰り返しながら、入院治療を繰り返す傾向にあり、そのたびに心機能が衰えてしまいます。心不全の究極の治療目標は、「心不全による再入院を防ぐ」ことです。

普段の生活で何に注意すればいいの?

心不全を悪くするきっかけ:

  • 塩分・水分の過剰摂取
  • 血圧上昇
  • 内服薬の中断
  • 感染・過労・過度のストレス
  • 貧血
  • 新たな不整脈の出現

などがあります。これらのリスクをできるだけ減らしましょう。

血圧を十分にコントロールする:高血圧を放置しておくと、動脈硬化や心肥大、心機能低下を招き、その結果、心不全に至る危険性が増します。家庭で血圧検査をする習慣をつけましょう。血圧は朝が一番高く、夜が低いので、計測は朝起きた時に行うのが重要です。(3回計って数値が違う場合は、1番目と2番目の数値の平均を書き残してください)。
目標は135mmHg以下です。

心不全のサインに気付く:心臓の病気で体重が減ることはありません。逆に週に2kgも太ったとしたら、明らかにおかしいと気付くべきです。毎日歩いて行けた所なのに、しんどくて行けない時も要注意です。必ずしも心臓の病気とは限りませんが、以下のような症状に気付いたときは、主治医に相談してください。

まとめ

  • 日常生活の変化に気付くことが大切です。
  • 体重をはかることや毎日決まった運動をする習慣を作ると早期発見に役立ちます。
  • 家庭血圧をチェックしましょう。
  • 体の変化に気付いたら主治医に相談しましょう。

プロフィール

洛和会丸太町病院 心臓内科
医員
岩破 俊博(いわさく としひろ)

  • 専門領域
    心不全、循環器全般
  • 専門医認定・資格など
    日本循環器学会専門医

洛和会丸太町病院

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