研修指導医日記

腹部疾患四連発! ~その2~

総合内科Tです。
腹部疾患四連発。ネタが長丁場になってすみません。
でも、気を取り直して、さあ、第二弾です!

へそに水が湧く?

30歳男性。
数週間前からシャツの前面下の方が濡れていることに気づいた。ブリーフは濡れていない…そろそろ尿漏れするようになったか? と思っていたが尿漏れではなさそうだ。

ある休日の朝、ウトウトして手をおなかの上に乗せると、なにやら冷たく濡れるものを触れた。
へそに水が湧いている? 風呂に入って拭き忘れた? でもそれって何時間も前の夜の話。しかも、昨日は休日前の飲み会で久しぶりの深酒をして記憶が飛びながら帰宅、そのままベッドに寝崩れたのだった…。
ベッドサイドに水やペットボトルなどは置いてない。こぼしてもいない。

何だこりゃ??????

酔いがさめた昼頃ERを受診した。

尿膜管膿瘍。
尿膜管は胎児期には膀胱から臍までつながっていますが、出生とともに尿膜管は閉鎖します。これが完全に閉鎖せず残ったものが尿膜管遺残です。尿膜管がどこでどれだけ開いているかによって以下の4つに分類するようです。

  1. 尿膜管開存(尿膜管瘻ともいう。完全に臍と膀胱がつながっている)
  2. 尿膜管洞(臍側に管状に遺残)
  3. 尿膜管嚢胞(臍側・膀胱側は閉じているが、一部嚢胞状に遺残)
  4. 尿膜管膀胱憩室(膀胱側に管状に遺残し、憩室を形成)

この方は、CTから[2]尿膜管洞膿瘍と判明しました。
抗生剤投与で感染をコントロールした上で、切除となりました。

Tはこれまで3例程度経験しています。1例目は乳児で[1]でした。あとの2例は本症例を含め[2]でした。年齢も本症例の30歳代と20歳代でした。

へそに水が湧くとは、へそでお茶を沸かすような話ですが、現実へそに水が湧く病気があるのです。