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医療 洛和会音羽リハビリテーション病院

認知症って…? ~健やかに暮らし続けられるために~

投稿日:2017年5月25日 更新日:


はじめに

認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が損傷を受けたり、働きが悪くなることで、認知機能が低下し、さまざまな生活のしづらさが表れる状態を指します。「老化によるもの忘れ」とは異なります。(出展・心でつなぐ、地域でつつむ認知症=京都府)。加齢による認知機能の低下は、多かれ少なかれ起こってきますが、正常な老化によるもの忘れと認知症によるもの忘れは異なります。

認知症になる前段の軽度認知障害(MCI)の段階で適切な取り組みが行われると、一定の回復が可能といわれています。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

患者数の推移

厚生労働省による調査では、高齢者(65歳以上)のうち認知症の人は2012(平成24)年時点で約462万人(高齢者人口の15%)と推計されていて、さらなる増加が予想されています。京都府の推計では、府内の認知症高齢者数は2010年時点で約5.8万人(9.5%)でしたが、患者数は増え続けており、2025年には約9.8万人(12.8%)になると予想されています。

認知症のいろいろ

認知症にはさまざまなタイプがあります。最も多いのがアルツハイマー型認知症で、以下、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などが続きます。タイプによって、主な症状も異なります。

認知症は進行を遅らせることができます

認知症は、誰もがかかる可能性のある病気ですが、症状が軽いうちに対処すれば、治療で症状を改善させたり、認知症の進行を遅らせることが可能です。そのためには、日頃から気を付けて認知症の発症リスクを減らすことが大事です。

要介護疾患を予防する

脳血管疾患・骨折・認知症などを予防して、他者の介護がなければ日常生活が行えなくなる病態に陥ることを防ぐ。

認知症発症リスクを減らす

生活習慣病やフレイル状態(低栄養、閉じこもり、身体機能の低下)に陥らないよう、適度な運動習慣やバランスの取れた食事、社会的交流、知的活動に励む。

重要なのは

早期から根気強く予防対策を行うことです。認知症は本人のみならず、ご家族にも身体的、精神的、経済的な負担が大きく、さらに医療、社会、経済的なサポートが必要となります。軽度認知障害(MCI)の段階での早期発見ができれば、ご本人とご家族がご本人の意思を尊重する形で将来の事をゆっくりと考える時間的余裕をつくり、本人を支援する態勢を整え、備えることができます。

自己チェックしてみましょう

自己チェックの方法は以下のとおりです。

MCI発見の手がかり

  • 歩行が不安定になり、歩行速度が遅くなる:以前は楽に渡れたのに、信号が赤になるまでに渡り切れなくなった。
  • 外出するのが面倒になる。
  • 外出時の服装に気をつかわなくなった。
  • 同じことを何回も話すことが増えたと言われる。
  • 小銭での支払いが面倒で、お札で支払うことが多くなった。
  • 手の込んだ料理をつくらなくなった。
  • 味付けが変わったと言われる。
  • 車をこすることが増えた。

これらの中で、3つ以上該当するものがあったら、要注意です。もっとも、3つ以上あるから即、MCIと決めつける必要はありません。

ところでフレイルって??

フレイルとは、加齢とともに心身の脆弱化が出現した状態をいいます。心身の、というとおり、フレイルは、「身体」の虚弱(ロコモ、サルコペニアなど)と、「こころ/認知」の虚弱(うつ、認知機能の低下など)、「社会性」の虚弱(閉じこもり、困窮、孤食など)が重なり合っておこります。ただ、フレイルも一気に起こるわけではありません。健康→プレフレイル(前虚弱)→フレイル(虚弱)→要介護(身体機能障害)と進行する前に、しっかり治せば健康な状態に戻すことが可能です。

予防するには

フレイルを予防するには、バランスの良い食事や、適度な運動、知的な活動、感染予防、病気の後のリハビリなどが大事です。バランスの良い食事を、食べ方にも気を付けてとることで、予防しましょう。

食べ方にも気を付けて

早食いと食べ過ぎに注意:脳が満腹感を感じるまでに、15分から20分程度の時間がかかるため、ゆっくり食べることで、食べ過ぎを防ぐことができます。食べ過ぎによるカロリーの過剰摂取は、生活習慣病である動脈硬化を引き起こす原因にもなります。

食生活での注意点

アルコールは適度な量(1日に日本酒1合またはビール大ビン1本程度)とし、週に2日は休肝日を設ける。肉類などに含まれている動物性脂肪は控える。

認知症になりにくい生活習慣

  1. 食習慣:
    • 野菜・果物(ビタミンC、E、βカロチン)をよく食べる
    • 魚(DHA、EPA)をよく食べる
    • 赤ワイン(ポリフェノール)を飲む
  2. 運動習慣:週3日以上の有酸素運動をする
  3. 対人接触:人とよくお付き合いをしている
  4. 知的行動習慣:文章を書く・読む、ゲームをする、博物館に行くなど
  5. 睡眠習慣:30分未満の昼寝。起床後2時間以内に太陽の光を。

具体的には

  1. 脳血管を大切にする:
    動脈硬化の要因になる高血圧、糖尿病、肥満に注意する。
  2. 食生活を整え、緑黄色野菜や魚などをバランス良く食べる。
  3. 運動を心掛ける:
    基本は歩くこと。万歩計を持つなどして歩く習慣をつける。
  4. お酒、タバコはほどほどにする、取り過ぎない。
  5. アクティブに活動する、考える:
    趣味を楽しんだり、買い物に出かけたり、お釣りを計算して脳を活性化する。
  6. 生き生きした生活を送ろう:
    地域のボランティア参加など、役割や生きがいに感じるものがそばにあるとベストです。
  7. 人間関係を普段から意識して円滑にしておく。
  8. 自らの健康管理を心がける:
    散歩や運動を気長に行い、定期的に健康診断を受ける。
  9. 病気や障害の予防や治療に努める。
  10. 寝たきりにならないように心掛ける:
    転倒、骨折に用心し、閉じこもりや寝たきりにならない。

認知症で落ちる3つの能力の鍛え方

認知症になる前段階で落ちる脳機能を集中的に鍛えることは発症を遅らせることにつながります。早期にみられる「通常の老化とは異なる認知機能の低下」には「エピソード記憶、注意分割機能、計画力」があります。

トライしてみよう
  1. エピソード記憶
    体験したことを記憶として思い出す機能です。2日遅れ、3日遅れの日記をつける。レシートを見ないで、思い出して家計簿をつけるなどを行うことで低下を防ぎます。
  2. 注意分割機能
    複数の事を同時に行う時、適切に注意を配る機能です。料理を作るときに、一度に何品か同時進行で作る。人と話をするときに、相手の表情や気持ちに注意を向けながら話すなどを行ってみましょう。
  3. 仕事や計算をテキパキと、段取りを考えて実行する能力
    効率の良い買い物の計画を立てる。旅行の計画を立てる。頭を使うゲーム(囲碁・将棋・マージャンなど)をする。やり慣れたことでなく新しいことをするなど計画を立てたり、整えたりする行動をとる機会を作りましょう。

適度な運動習慣

まとめにかえて ~認知症予防10条~

認知症予防財団による認知症予防10条は、以下のとおりです。

  1. 塩分と動物性脂肪を控えたバランスの良い食事を。
  2. 適度に運動を行い足腰を丈夫に。
  3. 深酒とタバコはやめて規則正しい生活を。
  4. 生活習慣病(高血圧、肥満など)の予防・早期発見・治療を。
  5. 転倒に気をつけよう。頭の打撲はぼけを招く。
  6. 興味と好奇心をもつように。
  7. 考えをまとめて表現する習慣を。
  8. 細やかな気配りをした良い付き合いを。
  9. いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに。
  10. くよくよしないで明るい気分で生活を。

長寿を誇れるように

日本は超高齢大国です。平均寿命は男性が80.79歳、女性が87.05歳です。一方、介護を必要としない健康寿命は男性71.19歳、女性74.21歳です。この両者のギャップを縮めることができれば、健康を保ったままで健やかな人生を送ることができます。長寿を誇れるように、お互い、頑張りましょう。

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