- 開催日:2017年9月14日
- 講師:洛和会音羽病院 乳腺科 部長 坂田 晋吾(さかた しんご)
はじめに
乳がんは、女性が罹患するがんのうち、一番多いがんです。半面、早期発見、早期治療ができれば治りやすいがんともいえ、検診が勧められます。本日は、乳がんの現状や検診を中心に、お話しします。
乳がんの現状とがん検診
女性がかかるがんについて、罹患数と死亡数の予測(2015年)は、以下の通りです。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
このように、乳がんは女性が最も多くかかるがんですが、死亡率は9.1%で、治る人も多いがんといえます。高齢化に伴い、乳がんの死亡者数は増えてきましたが、治療法も進歩しており、近年は上昇カーブがぐっと緩やかになっています。
がん検診
男女別のがん検診受診率の推移と京都市の乳がん検診受診率は、以下の通りです。
国際比較すると、日本はがん検診の受診率が低い特徴があります。乳がん検診でみると、欧米の先進各国では約7割~8割と高い受診率で、乳がんの死亡率も減少傾向であるのに対し、日本は約24%と、半分以下の受診率で、死亡率も増加傾向のままです。
5大がんでみた検診の効果は、5年後生存率の統計でも明らかです。
健診VS検診
発音は同じですが、この2つは、異なっています。
健診とは:健康診断のことです。「病気の危険因子」があるか否か見ていくもので、「特定の疾患」を発見していくものではありません。健康診断の結果、異常がなければ健康ということになります。
検診とは:特定の病気を早期に発見し、早期に治療することを目的としています。早期に発見することで、治癒する人を増やし、死亡率を下げることを目標としています。乳がん検診や子宮がん検診などの「がん検診」は、検診の代表例としてあげられます。
健康診断の種類
健康診断には、高齢者医療確保法で定められている「特定健診と特定保健指導」のほか、職場健診や学校健診、人間ドックがあります。
2次予防としての「検診」
結核などの特殊な検診はありますが、検診といえば、ほぼ、がん検診です。がん検診の種類は以下の5種類です。
がん検診は、対策型、住民検診型の公的検診で、集団全体の死亡率減少を目的に、公的な予防対策として行われます。検診の利益が不利益(放射線照射などによる)を上回ることが基本条件で、有効性が確立した検診方法を用いることが義務づけられています。
対策型に対し、任意型の検診としては、人間ドックなどがあげられます。対策型以外の機器や方法を用いた検診も含まれ、個人個人への対応が可能となる利点もありますが、任意受診なので費用はすべて自己負担となります。
対策型 乳がん検診(市民検診型)の歴史
日本の乳がん検診の歴史は、1987年に第2次老人保健事業として、30歳以上の視触診検診が導入されたのが始まりです。その後、マンモグラフィー導入に向けた検討が進み、2000年には50歳以上へのマンモグラフィー検診が始まり、2004年からは40歳代へのマンモグラフィー検診が導入されました。諸外国では、もっと以前からマンモグラフィーによる乳がん検診を導入しており、日本は遅ればせながらの導入となりました。
マンモグラフィーによる画像診断
マンモグラフィーは、初期の乳がんや、視触診ではわからない深い位置の乳がんも見つけられる利点があります。一方で、乳腺の濃度が高い女性の場合、乳がんと乳腺の画像が重なって判別が難しい場合があります。エコー検査を上乗せすることで、検診の精度を上げる可能性はありますので、厚生労働省も検討していますが、現段階ではマンモグラフィーだけが検診での有効性が証明されています。
- 1枚目説明
どこに乳がんが映っているかわかりますか。―中央右側の左下です。 - 2枚目説明
別の方向から写した画像。乳腺の端にできていたから、この大きさで気付かれましたが、真ん中にできていたら、果たして見つかったかどうか、わかりません。
対策型マンモグラフィー検診の検討課題
多くの国が2年ごとの検診を行っていますが、本当に2年ごとでいいかは、検討課題の一つです。2年間の検診間隔の間に見つかる「中間期乳がん」があり、統計的には40歳代の女性に多いため、40歳代は2年でなく1年ごとの任意型検診も有効かもしれません。
高濃度乳房に対する対策も課題です。米国では「ナンシー法」が制定され、マンモグラフィー検診の感度が低い高濃度乳房かどうか、受診者に告知することを法制化した州が27に及んでいます。欧州では告知を義務化している国はありません。2018年3月に厚生労働省が高濃度乳房に対する対策のガイドラインを出すらしい、とも言われています。洛和会音羽病院では、以下のような対応をしています。
プロフィール
洛和会音羽病院 乳腺科
部長
坂田 晋吾(さかた しんご)
- 専門領域
乳腺疾患 - 専門医認定・資格など
日本外科学会認定医/専門医
日本乳癌学会認定医/乳腺専門医
マンモグラフィ読影認定医
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