- 開催日:2017年5月18日
- 講師:京都市朱雀地域包括支援センター 主席係長 介護支援専門員 岡村 治子(おかむら はるこ)
はじめに
介護保険制度が本年度から大きく変わりました。その中心である自治体の「総合事業」について、京都市の例をもとにご説明します。
本日の内容
- 総合事業の趣旨・目的
- 京都市の現状
- 京都市の総合事業が目指すもの
- 総合事業の実施でかわること
- 総合事業の内容
- 介護予防・生活支援サービス事業
- 一般介護予防事業
- 京都市版地域包括ケアシステムの構築に向けて
総合事業の趣旨・目的
「総合事業」とは、「市町村が中心となって、地域の実情に応じて、住民などの多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することで、地域の支え合い体制づくりを推進し、要支援者などに対する効果的かつ効率的な支援などを可能とすることを目指すもの」です。これまで介護保険サービスは、要介護認定された方すべてを対象に制度内でカバーしてきましたが、このうち「要支援」の中の訪問介護と通所介護だけを市町村の総合事業に移管しました。さらに、市町村独自の介護予防事業などを総合事業に加え、健康寿命の進展に力を入れています。
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京都市の現状
国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、京都市の場合、75歳以上の後期高齢者1人に対して、15~64歳の4.6人が支えていた(2015年)のが→3.1人(2025年)→2.6人(2040年)となってしまいます。高齢者のうちでも、まだまだ元気な人が多い65~74歳の人を、支える側に回ってもらうと、5.6人→3.7人→3.3人に増えます。65~74歳の前期高齢者も支え手の側に回ることで、支援が必要な高齢者の支え手を確保するとともに、支える側の介護予防にも力を注ごう、というのが、介護保険制度を変更した趣旨です。介護保険財政の悪化を食い止め、制度の存続を図ることも目指しています。
介護が必要となった主な原因
国による国民生活基礎調査(2010年)によれば、要支援者で介護が必要になった人のうち、「高齢による衰弱」「関節疾患」「骨折・転倒」が半数近くを占めています。これらの人たちは、運動の機会を増やすことで活動性を高め、適切な食事をとることにより、介護を受けずに生活できる可能性が高まる(予防可能になる)と考えられます。「総合事業」では、介護予防の推進に力が入れられています。
日常生活で不自由と感じていること
京都市が総合事業で生活支援サービスを行う場合、どんな支援が望まれているのかを調べた調査があります。それによると、日常生活でのちょっとした困りごと(掃除、ゴミ出し、買い物、電球の交換など)に対して、支援ニーズが多いことが分かりました。体に触れる介護は要らない、と多くの人が考えています。
京都市の総合事業が目指すもの
以上の調査などをもとに、京都市は、総合事業を3つの柱にまとめました。(1)介護予防の推進、(2)生活支援サービスの充実、(3)多様な担い手の活躍、です。このうち(3)は、超高齢社会で支援を必要とする人が増えるのに対し、行政や介護専門職だけではとても足りないという事情が背景にあります。元気な高齢者に支える側に加わってもらうことが狙いです。
総合事業の実施で変わること
- 要介護認定の区分に「事業対象者」が加わります。基本チェックリストで判定するため、迅速なサービス利用が可能になります。
- 介護予防訪問介護、介護予防通所介護は総合事業の訪問型サービス、通所型サービスになり多様化します。
- 介護予防事業が一般介護予防事業として再編され、より充実します。
- 「事業対象者」の判定ツール
以下の「基本チェックリスト」に基づいて回答を集計します。その結果を、「事業対象者の基準」にあてはめて対象者に当たるかどうかを判断します。地域包括支援センター(高齢サポート)でチェック、計算してもらえます。
総合事業の内容
総合事業は、介護予防・生活支援サービス事業と一般介護予防事業に大別されます。介護予防・生活支援サービス事業は、訪問型サービス、通所型サービス、介護予防ケアマネジメントに分かれます。
介護予防・生活支援サービス
サービスを受けるにはまず、区役所・支所または地域包括支援センターに相談してください。地域包括支援センターが、基本チェックリストを実施したり、要介護認定の申請(代行)を行い、必要なサービスを受けるための手続きを支援します。
従来の介護保険制度の訪問介護は、訪問型サービスに組み入れられます。同様に、通所介護は、通所型サービスに組み入れられます。
各サービスの目的は ~介護予防と生活支援を通じて「自立」を目指すこと~です
いずれのサービスも介護保険法の理念に基づき、高齢者が持っている能力に応じて自立した生活が営めるよう支援するものです。自身でできることを維持したり増やすことを目指し、できないことを補うことでその人らしい暮らしを支援します。いつまでも自分らしく生活するために適切なサービスを選択し、積極的に健康づくりに取り組みましょう。
利用者負担等
- 利用者負担:
訪問型・通所型サービスの利用に際して、サービス費用の1割(原則)または2割(一定以上所得者)の自己負担があります。(介護予防ケアマネジメントの自己負担はありません。)
通所型サービスを利用した場合は、別途食費等が自己負担となります。
高額介護サービス費と同様の事業を実施予定です。 - 利用限度額:
対象者別に利用限度額が設けられており、利用限度額を超えた保険給付の居宅サービスや総合事業の訪問型サービス・通所型サービスにかかる費用は全額が利用者の自己負担になります。
サービス事業への移行は、現在の要介護認定が更新を迎える時に行い、概ね1年間かけてゆっくり移行することになっています。また、すぐに移行したい人は、それも可能です。
一般介護予防事業
65歳以上のすべての方が対象です。ただ、プログラム内容により利用要件が決められているなど、個別の状況などにより利用できない場合もあります。
- 地域介護予防推進センターによる介護予防プログラム等の提供
すべての65歳以上の方を対象に、地域の身近な会場で専門のスタッフの指導による介護予防プログラムを提供するほか、介護予防に関する普及啓発や、地域での自主的な介護予防に関する活動の支援を行います。 - 身近な居場所づくりの充実
身近な地域で多様な担い手により設置が進められている「高齢者の居場所」について、質的・量的充実を図ります。
京都市版地域包括ケアシステムの構築に向けて
京都市民長寿すこやかプランの基本理念より
高齢者一人ひとりが、自らの意思に基づき、住み慣れた地域で、いきいきと健やかに暮らせる「健康長寿のまち京都」をみんなでつくる。
京都ならではの「地域力」を最大限に生かし、高齢者自身を含む地域住民、医療と介護をはじめとする関係機関、行政が一体となり、地域ぐるみで高齢者の暮らしを支援する。
「京都市版地域包括ケアシステム」の構築に向けた取り組みを推進します。
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