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医療 洛和会音羽病院

切らずに治すがん治療

~放射線治療について学びましょう!~

投稿日:2018年10月10日 更新日:


はじめに

皆さんにとってがんは、いろいろな病気の中で最も関心の高い病気の一つでしょう。かつては、がんが転移して体のほかの組織に増殖するのを防ぐため、手術でがん組織を取り除くことが一般的でした。しかし、最近では「放射線治療」と呼ばれる手法が日進月歩のスピードで改善されています。ですが、日本では原爆や原発のイメージから、特に放射線に対する抵抗感があり、人体に有害で危険なものと感じている方も多いのではないでしょうか。本日は、放射線治療に対する理解を少しでも深めていただき、皆さんがより安心して医療を受けられる手助けになればと思います。

がんの「三大療法」

手術療法、放射線療法、化学療法はがんの「三大療法」と言われており、がんにかかった場合の一般的な治療法となっています。がん治療は1960~70年に本格化します。
最初に登場したのが手術療法です。がんが発生した臓器や組織を確実に切除できる可能性が高い方法です。ただ、手術によって臓器の機能を損なう場合もあります。開腹や開胸手術は体への負担が大きく、長期の入院が必要な場合があります。早期のがんや、ある程度進行しているがんでも、切除可能な状態であれば積極的に手術療法が行われます。手術療法は、がんの病巣を切除し、その臓器の周辺組織やリンパ節に転移があれば、一緒に切除します。がんの塊が一気に取れること、検査では分からないごく小さな転移(微小転移)がなければ完治の可能性が高いことがメリットです。
放射線治療は、放射線を患部に短時間照射します。臓器自体や臓器の機能は温存できますが、放射線が効きにくいがんや、組織が体内で動くことが課題です。
最後の化学療法ですが、全身を巡るがんには抗がん剤治療が有効とされます。患部だけでなく、全身に副作用を伴うことが難点です。体への負担や治療時間、転移しがちながんの特性などを考えながら、最善の療法を選ぶ必要があります。
三大療法とも、高齢化社会に向け、患者さんの負担を極力排した治療が必要不可欠になってきており、年齢や性別、環境や希望なども考慮して総合的に判断し、最も適した治療方法を決定していきます。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

放射線療法とは

放射線療法は、がんの病巣部に放射線を照射して、がん細胞を死滅させる局所療法です。コンピューターが普及していない時代には放射線治療機器の照射精度が低かったことから、外科手術の補助的治療、末期がんの緩和治療が中心でした。近年は、コンピューター技術の発展に伴う治療装置の高精度化やさまざまな照射技術の開発によって、放射線をより腫瘍に集中させることができるようになったため、放射線治療による根治治療の割合が高まってきています。

一長一短がある各療法

各治療法には一長一短があり、治療を組み合わせることで、効果をより高めることができます。がんが比較的早期で見つかり、転移もなく局所にとどまっていれば、ほとんどの場合、まず手術や放射線治療等の局所治療が行われます。
一方、ある程度進行して周囲の組織に浸潤が見られ転移の可能性がある場合には、がん細胞が原発巣だけでなく血流やリンパの流れにのって乗って全身に散らばっている可能性があるので、手術や放射線療法による局所治療に加え、抗がん剤などによる全身的治療が必要で、化学療法が検討されることになります。

集学的治療を目指す

近年のがん治療の進歩におけるキーワードは2つあります。一つは「低侵襲性」です。つまり、できる限り患者さんの体に負担の少ない治療技術の開発です。もう一つは「集学的治療」です。がんに対しては、「とにかく切除」「とにかく抗がん剤」といった考え方ではなく、各種の治療技術を組み合わせた治療を行うことで治療効果を高め、「より効果的」「体にやさしい」「集学的治療」の実現に向け、さまざまな研究開発が進められています。

放射線は自然界にも存在

画像診断や放射線治療に用いられる放射線について基本的な説明をします。私たちは日常生活の中で、宇宙、大地、そして食物や大気など、自然界からの放射線を絶えず受けながら暮らしています。それら自然界からの放射線を「自然放射線」といいます。1年間に自然放射線を受けている量は、世界平均で2.4ミリシーベルトといわれています。放射線による被ばく線量を示したものです。シーベルトは、放射線の人に対する影響に用いる単位です。放射線を全身に浴びた場合と、体の一部分に放射線を浴びた場合では、全身に浴びた場合の方が影響は大きく、胸部撮影やCT撮影では撮影する部位が体の一部分であり、全身の被ばくに比べて影響が少ないと言われています。エックス線による検査は全身被ばくではなく部分的な被ばくであり、可能な限り低い線量で検査が行われます。

放射線治療の実際

放射線治療装置は、体の中の腫瘍を治療するため、診断で使用されるエックス線よりもエネルギーが高いエックス線を発生させる必要があります。照射ヘッドに、さまざまな形状を形成することができる装置が搭載されており、より腫瘍に放射線を集中させ、周囲の正常組織への放射線を低減させることができます。放射線治療は治療部位に高いエネルギーの放射線を照射することにより、照射部位にダメージを与えることで治癒および症状の改善を目的としています。放射線を体内のがん細胞に集中的に当ててがん細胞を破壊することで治療を行うため、周囲の正常組織への影響を考慮する必要があります。放射線治療は正常組織とがん細胞の修復力の差を利用して治療を行うため、治療期間が必要になります。また、放射線を照射しても痛みや熱さを感じることはないといわれています。

「根治」か、「緩和」か

放射線治療には、治療目的によって根治放射線治療と緩和放射線治療に分類されます。
根治放射線治療は、病気の治癒や再発を予防するために行われます。照射回数が多く、放射線の量も増えるので、正常組織への影響をしっかりと考慮する必要があります。緩和放射線治療は、症状の改善を目的とした治療です。疼痛制御や止血、閉塞の改善・予防、症状の原因となっている腫瘍の縮小、脊髄圧迫による神経症状の改善などの目的があり、根治放射線と比較して、照射回数が少なく放射線の量は少なくなります。

放射線治療法のメリットとデメリット

放射線療法のメリットとして、体を切らず、治療中の痛みも少ないので、身体的な負担が軽いことが挙げられます。治療に要する時間も短く、日常生活を送りながら通院することが可能です。また、外科手術が難しい場所にあるがんに対しても、放射線治療は有効です。体への負担が少ないので、年齢や合併症により、体に負担がかかる手術が難しい患者さんへの治療も可能です。そして放射線療法の最大のメリットとして、臓器の形態・機能を温存できるということがあります。デメリットとしては、がんの種類・病巣の進展と範囲によって放射線の効果が異なる正常組織への影響を考慮して治療する必要があるため、2週間~2カ月の治療期間が必要となることです。また、一度治療した部位へは、周辺の正常組織に重篤な影響を与えることが考えられるため、再照射ができません。

当院での放射線治療

当院での診察の流れを簡単にお話します。まず、患者さんの状態を調べたうえで、最も適した治療法を提案し、治療によって得られる医療効果と予想される副作用についてもお話します。精度の高い放射線治療を行うため、放射線照射装置に付属しいている画像撮影装置で照射前に治療位置の確認を行い、照射位置の確調整を行います。照射装置は世界で4,000台以上使われる信頼性の高い装置です。ほかにも放射線治療には、密封小線源治療と呼ばれる、放射性物質を針・粒状などの容器に入れたもの(線源)を使用する治療があります。病巣やその周囲に線源を直接入れる組織内照射には専用の装置が必要です。現在、当院では行っていませんが必要に応じて京都大学付属病院と連携し、さまざまな治療を依頼することが可能です。

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