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医療

緩和ケアってどんなもの?

~がんになっても当たり前の生活を~

投稿日:2019年9月18日 更新日:

はじめに

洛和会音羽病院では今年4月に緩和ケア内科ができたばかりです。今日は緩和ケアとはどういうものなのかを、説明させていただきます。話の中では「がん」「死」「看取り」という言葉も出てきます。最近、近しい人などを亡くされて聞くのがつらい方は無理をされないでください。

緩和ケアって何?

まず緩和ケアを知っている方は手を挙げていただけますか? あるいは、聞いたことがある方は? 意外に多くの方が知っておられますね。

市民向けの緩和ケアの説明文には「緩和ケアとは、重い病気を抱える患者やその家族一人一人の身体や心などのさまざまなつらさをやわらげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケア」と書かれています。ケアの対象はがんだけでなく、その他の病気にも広げて考えるようになっています。心の痛みもケアし、病気と付き合いながらより豊かに生きていくことを目指すのが、緩和ケアです。

がんを抱えたまま長く生きる時代に

統計では日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死亡しています。つまり2人に1人は人生のどこかでがんに向き合います。

でも昔、がんは「不治の病」といわれましたが、医学の進歩により、現在はがん患者は病気を抱えたまま長く生きる時代になってきています。生存率が上がり、がんと診断された後、10年以上がんと付き合いながら生きる時代が来ています。がんも慢性疾患として考える必要のある時代になってきています。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

緩和ケアへの誤解

緩和ケアは「抗がん剤が効かないときにするんでしょう」とか「終末期のものなんでしょう」「『緩和ケア』と言われたら、もう終わりなんでしょう」といわれたりしていたのは10年、20年前の話です。こういう理解はみな誤解です。

昔は図のように、がんと診断されたときから手術や抗がん剤のように「がんそのものに対する治療」が行われ、それが終わった後、「緩和ケア」に切り替える形になっていましたが、今は図の通り、がんと診断されたときから「がんに対する治療」と「緩和ケア」が並行して行われます。最初から最後まで「緩和ケア」が行われます。

「気力絞った闘病議員」という見出しの新聞記事を見てください。この方は自らがんと闘いながら、「がん対策基本法」を作ることに尽力した国会議員の故・山本 孝史さんです。自分ががんになって、がんに対する治療体制が不十分だと気付き、基本法の制定に取り組みました。この基本法から今日の日本での緩和ケアが進んでいます。


さまざまな場面で緩和ケアが必要

緩和ケアは難治がんの診断など悪い知らせを受けたときや、がんの治療中に生じるつらい症状に直面したとき、がんが進行したときなど、がん治療のさまざまな場面で必要になります。

がん患者は痛みなどの身体の症状だけでなくさまざまなつらさと直面しており、それを支援するのが緩和ケアです。経済的な負担の問題や家族の問題なども重要で、その支援も緩和ケアの一つです。

緩和ケアはいろいろな場所で提供されます。外来の窓口でも相談に乗ってもらえますし、入院中はもちろん、化学療法室や緩和ケア病棟、在宅で訪れる訪問看護でも緩和ケアを行っています。

実はがんになると、患者だけでなく、患者を見る家族もまた、さまざまな苦痛や不安を経験します。緩和ケアは患者だけでなく、家族にも提供されます。家族は第2の患者です。

医療用麻薬(オピオイド)への誤解

医療用麻薬(オピオイド)に対するさまざまな誤解やアレルギーがあります。

医療用麻薬とはモルヒネをはじめとしたオピオイドという薬ですが、そもそも医療用麻薬と覚醒剤とは全く違うものです。モルヒネを使うと体が楽になります。「中毒になる」という誤解がありますが、医師の下で適切に使用した場合は依存を起こす危険性は低く、副作用もコントロールできます。

また「医療用麻薬を使うということは末期」というのも誤解です。どの時期からでも、痛みがあれば使います。医療用麻薬を正しく使用することによって痛みなどの苦痛から解放され、身体のストレスが減る、眠れるなどの良い影響があります。それによって自分がやりたかったことができるなど、人生の質を高めることができます。

あなたを支えるチームがあります

病院では医師、看護師、管理栄養士、音楽療法士、MSW(医療ソーシャルワーカー)、薬剤師、理学療法士、臨床心理士など、さらにはかかりつけ医や、在宅サービスのスタッフなども加わり、チームのみんなで患者さんを支えます。

つらいときに緩和ケアを思い出して

病気はどれだけ頑張っていてもやってくるものです。一人で抱え込まず医療者やまわりの人も一緒につらさと向き合っていくのが緩和ケアです。そのために、家族や主治医の先生ともいろいろと普段から話をしてみましょう。

緩和ケアが必要になったとき、自分が通っている主治医や看護師、地域のかかりつけ医、がん相談センターなどに相談してください。洛和会音羽病院には緩和ケア内科やがん相談センターがあります。ご利用ください。

質疑応答から

Q がん患者です。遠隔転移はないといわれていますが、月に1度、洛和会音羽病院の外来に通っています。何もないときに相談に行ってもいいのですか? 何もなくても医師や看護師さんに話を聞いてもらうと、うれしいです。不具合のない場合、どう診察を受けたらいいのでしょうか。
A 症状が落ち着いている時には緩和ケア外来には雑談して帰られる人もおられます。中にはコンサートやゴルフの話をして帰られる人もいます。外来やがん相談センターに通うことで安心するのであれば、そのようなご相談でも心配いりません。


プロフィール

洛和会音羽病院 緩和ケア内科
副部長
山代 亜紀子(やましろ あきこ)

  • 専門領域
    緩和ケア、ペインクリニック
  • 専門医認定・資格など
    日本緩和医療学会緩和医療専門医
    日本ペインクリニック学会ペインクリニック専門医
    日本麻酔科学会麻酔科専門医

洛和会音羽病院

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〒607-8062
京都市山科区音羽珍事町2
TEL:075(593)4111(代)

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