- 開催日:2016年10月13日
- 講師:洛和会丸太町病院 看護部 2病棟 主任
集中ケア認定看護師
川原 慶子(かわはら よしこ)
はじめに
本日は、高齢者の心身の特徴などを中心に、冬場の健康管理についてお話しします。
暑さ・寒さに対して
通常、人のからだは、暑い、寒いといった気温変化に対して自然に調節する仕組みをもっています。間脳の視床下部というところに体温調節中枢があり、自律神経やホルモンをコントロールすることで、体温を一定に保つ働きをしています。
体温調節の主な方法として以下のものがあります。
- 汗をかいて熱を逃がす
- 皮膚の血管の血流を増やしたり減らしたりして、体温をコントロールする
血管を弛緩させ、太くすることで血流量を増やします。皮膚の血管の血流が増えると、体表面から熱が体外に放出されて、体温を下げます。逆に、血管を収縮させて血流量を減らし、体内の熱が外に逃げないようにすると、体温の低下が防げます。 - 筋肉を震わせて体温を上げる
熱が出る際に、体がブルブル震えることがあるのは、このためです。 - 代謝を増やして熱をつくる
食事などでエネルギー補給することで体温が上がります。
しかし、体の状態によっては…
上記のような体温調節の仕組みが、必ずしもうまく機能しないことがあります。加齢や、病気、更年期、ストレスなどのためです。汗をかきにくくなったり、逆に更年期症状などでは汗が出やすくなったりします。また、加齢に伴って、代謝の低下や皮膚の血管への血流量調整も行いにくくなります。
低体温症に注意しましょう
低体温症とは、体の深部の温度が35.0°C以下になる状態です。深部の体温は、体表面より1~2℃高いので、低体温症では体表面の体温は33~34°Cまで下がっていることになります。
特に高齢の方は、暑さ、寒さに対する感覚が鈍くなることや、体の表面の血流の量が調整しにくくなり、からだが熱を作りにくくなるため、低体温になりやすいのです。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
しかし、必ずこういう症状が出るとは限りません。症状が出ない人もいます。また、低体温症でなくても、こういう症状が見られたときは、病気が隠れている恐れがあり、注意が必要です。
低体温症を防ぐには
何はともあれ、保温に注意することです。
高齢の方は、寒い室内にいても低体温症になることがあります。本来なら寒ければ血管を細くして皮膚への血流を抑えたり、体の中のエネルギー量を増やして代謝を上げ、体温を保つのですが、うまく機能しないためです。室温調節(19°C以上)や重ね着などの工夫をしましょう。また、睡眠薬やアルコールを飲むと高齢でなくても体温が低下しやすいため、注意しましょう。
低温やけどにも注意を
低温やけどは、お風呂よりやや高めの44.0°Cほどの熱に3~4時間触れた結果、気が付かないうちに深いやけどをすることです。あんかやカイロなどが主な原因です。
低温やけどを防ぐには…。
- 電気あんかはカバーやタオル、毛布で覆う。必ず足から離して使用する。
- 使い捨てカイロは、直接皮膚に貼らない。足用のカイロは、靴をはかない状態で使用すると、高温になることがありますので注意してください。
- 電気こたつ、ホットカーペット、電気毛布でも、低温やけどを起こすことがあります。できれば、寝る前に保温して、就寝時には電源を切るなどの工夫をしましょう。
血圧の変化に注意しましょう
寒くなると、体温を逃がさないために身体の表面の血管が細くなります。その結果、血圧が上がりやすくなります。正しい血圧測定はできていますか?
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- 朝は起きてから1時間以内、夜は寝る前
1日2回、測定しましょう。 - トイレを済ませた後に測定しましょう
尿がたまった状態で測定すると、値が高くなります。 - 測定の前は2~3分安静にして、リラックスした状態で測定しましょう
動いた後や緊張しているときは、値が高くなります。 - 朝は、血圧測定が終わってから、朝食や薬をとりましょう
- 朝は起きてから1時間以内、夜は寝る前
食後は血圧が変動しやすくなります。また、薬を飲んだ後の血圧は、薬の影響を受けます。
急な血圧変動を防ぐためには
家庭内や戸外で、暖かい場所から寒い場所に行くときが要注意です。特に朝方に血圧が上昇しやすい方は、トイレ、ゴミ出しなどの際に注意が必要です。
- 外出するときは、しっかり保温をしましょう。
- トイレが寒いときは、上着を着るなどの工夫をしましょう。
- 入浴時の温度差に注意しましょう。
冬場に流行しやすい感染症は
ノロウイルスなどの急性腸炎や、インフルエンザ、肺炎、咽頭炎・上気道炎などです。冬以外の季節にも見られますが、室内に人が集まりやすい、まわりに罹患(りかん)している人が増える、などから注意が必要です。
感染症を防ぐためには
- ワクチン接種:インフルエンザや肺炎球菌の予防をしましょう。
- マスク:鼻もしっかり覆ってください。
- うがい・歯みがき:口の中を清潔に保つことは、肺炎の予防のためにも重要です。
- 手洗い:外から帰ったら、必ず行いましょう。
質疑応答から
Q インフルエンザのワクチンはいつごろ打ったらいいのですか。
A 10月中旬ごろ以降、できるだけ早めがおすすめです。流行期になると、患者さまもすでに増えているため、感染のリスクがあります。
Q インフルエンザワクチンが効かないことはありますか。
A インフルエンザにはタイプがいくつかあり、ワクチンは2、3種類を組み合わせて作ります。流行するタイプと、たまに異なって、はずれることはあります。また、タイプが合ったワクチンを打ってもインフルエンザにかかることはありますが、打たない場合と比べれば軽い症状で済むといわれていますので、できるだけインフルエンザワクチンを打っておくことをお勧めします。
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