- 開催日:2016年6月22日
- 講師:洛和会音羽記念病院 CE部 副係長
臨床工学技士 吉田 久美子(よしだ くみこ)
はじめに
最近、フットケアという言葉を聞く機会が増えました。足の手入れのことです。私は臨床工学技士(クリニカル・エンジニア=CE)として、主に透析治療に携わっていますが、透析患者さまには高齢で糖尿病の方が多く、フットケアが必要な方が多いです。本日は、日常の臨床現場でよく出会う、足の爪やタコなどの悩みについて、ご説明します。
医療的なフットケア
医療的なフットケアには、以下のようなものがあります。
- 足の爪のケア
- タコのケア
- スキンケア(かかとのガサガサなど)
- 外反母趾などの足変形へのアプローチ
- 足の血行の検査
- 足の創傷に対してのケア
どうしてフットケアが必要なの?
「足は第2の心臓」といわれます。下半身には全身の筋肉の3分の2が集まっていて、歩くことはすなわち、全身の筋肉を同時に動かしていることです。心臓のようにポンプの役目を果たし、血液の循環をよくしているわけです。しかも歩くことは、誰でも自分でコントロールできます。しっかり歩いて、元気に過ごしましょう。
しっかり歩くために:
しっかり歩くには、足の状態を整えることが大切です。巻き爪やタコ、うおのめなどがあると、一つ一つの症状はは小さくても「歩くと痛む」ので歩かなくなったり、変なところに力を入れてしまったりします。
加齢などで「痛い」「熱い」などの感覚が鈍くなると、気付かないうちに傷が悪化したり、ストーブに近づき過ぎてやけどをする恐れがあります。手は自然に目に入りますが、足はなかなか目につかないので、自分で意識して観察することが大切です。
巻き爪
巻き爪の原因は、
- 間違ったサイズの靴を履いている
- ハイヒールをよく履く
- 深爪がち
- 指への打撃(スポーツ)
などがあります。体質が原因でなる場合もあります。ゆったりした靴が良いという誤解がありますが、靴の中で足が動いてしまうため、つま先に力がかかり過ぎることになります。爪は上下の力が適切なら巻き爪にはなりませんが、深爪だと下からの力の方が上回ることで肉が盛り上がってしまいます。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
巻き爪には、食い込むものから、さらに折り返してホチキスのようになるものまで、さまざまな種類があり、その程度も軽度から重度まであります。痛くなければ、無理に治療する必要はありません。
巻き爪の応急措置
応急措置としては、コットンを詰めて、爪と肉の間にすき間を作ってやる方法や、食い込んだ爪の外側を削ることで爪が上に押されて上がり楽になる方法、テーピングなどがあります。分厚くて硬く盛り上がった爪の場合は、お風呂上がりの柔らかいときに、爪切りではなく爪用のニッパーで少しずつ切ります。やすりで削るのも、安全で良い方法です。
水虫(白癬)
早速ですが、クイズです。
①足以外にも水虫はある?
答えは「○」手にできるものを手水虫、陰部にできるものをインキンタムシと呼びます。
②水虫は治らない?
答えは「×」治ります。ただし年単位で、時間がかかります。
③男性は水虫になりやすい?
答えは「○」男女比では6対4で男性に多いです。年齢的には、高齢になるほど増えます。肌の免疫機能が落ちる40歳代以降は特に、水虫の菌に侵されやすくなります。
④症状がなければ問題ない?
答えは「×」かゆみや痛みがなくても、菌が侵攻して体内に入ってしまうと感染症にかかる可能性があります。爪水虫になると、爪が分厚くなります。治すには、医師の指導の下で、塗り薬や飲み薬を使用します。どちらにしても治療は半年以上かかることが多いです。
⑤家族に水虫の人がいたら皆にうつる?
答えは「○」保菌者から菌が落ちた床の上を、家族が裸足で歩くと菌が付着します。もっとも、水虫を起こす真菌は弱い菌なので、48時間以内に洗い流せばうつりません。衣類も洗濯すれば取れます。
タコ(胼胝)・うおのめ(鶏眼)
タコもうおのめも、足の角質が増殖して固くなることでできます。合わない靴や歩き方、姿勢などの影響で局部的な圧力が慢性的に加わると、生体が身を守るために反応(防具化)してその部分を硬くします。それがタコやうおのめです。タコは大きくなると痛みますが、削って保湿してやれば治ります。うおのめは、気付いたときには痛く、治すには芯を取り除く必要があります。
- タコの処置:お風呂上がりの柔らかいときに、やすりで削ります。カミソリは駄目です。削ったあとは、クリームで保湿をしてください。軽石の使用は、ほどほどにしてください。
- うおのめの処置:病院で取ってもらいましょう。市販のパッドを使うと、痛みはましになりますし、市販薬はうおのめを柔らかくしてくれますが、芯は取り切れません。
タコ、うおのめのできる場所で分かる足のトラブル
タコもうおのめも、原因を突き止めないと、何回も同じところにできます。どこにできるかで、足のトラブルの原因が分かります。
閉塞性動脈硬化症
足のトラブルのうち、緊急に治療が必要な病気が潜んでいることがあります。代表的な疾患が、閉塞性動脈硬化症です。放置しておくと、小さな傷でも治りにくくなります。さらに進行して、足が黒くなってしまうと、この段階で病院に行っても治らず、最悪の場合は足指や足の切断という事態になります。この疾患が疑われる場合は、すぐに病院へ行ってください。
おわりに
とにかく健康のためには足はとても重要な存在です。(下肢を切断した場合の5年生存率は30%程度という報告もあります。)
難しく考えず、まずは足を観察するところから始めてみましょう。
難しい場合は、なんでも病院にご相談ください。
自分本来の「足」で、より実りある人生を歩んでください。
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