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医療 洛和会丸太町病院

お通じ順調ですか?

~便秘症診療ガイドラインを中心に~

投稿日:2019年4月12日 更新日:

はじめに

皆さんの多くは、お通じに悩みがある方だと思います。私の話が少しでも皆さんの悩みの軽減に役立てばと思います。便秘は便秘症という名前の通り、病気ではなく症状です。どういう症状が便秘であるのかから、お話ししたいと思います。

3割弱の人が便秘

以前はどういう状態が便秘なのかという統一した基準がなく、医師がそれぞれの専門に従って判断して薬を出していましたが、2017年に「慢性便秘症治療のガイドライン」という基準ができました。

では、便秘症状のある方はどれくらいいるのでしょうか。厚生労働省の調査では60歳までは女性が多く、60歳を超えると男性が増え始め、80歳を超すと男性の方が女性を上回っています。インターネット調査では、28.4%の人が自分が便秘であると認識しており、中でも女性は37.5%と多くなっています。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

便秘には2つの種類が

2017年にできたガイドラインでは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」を便秘と定義しています。それを大きく2つに分けると、「排便の回数や量が少ないため、便が腸の中にたまるタイプ」と「回数や量は十分だが、すっきりとした排便ができないタイプ」に分けられます。

自分の症状がどの種類なのか、知りましょう

新しいガイドラインができて便秘の分類も変わりました。新しい分類では、大きく分けて器質性(形の変化)と機能性(形の変化なし)の便秘に分けられます。器質性のものは、腫瘍などができて腸が狭まった狭窄性と大腸の形そのものが変化した非狭窄性に分けられます。機能性は排便回数減少型と排便困難型に分けられ、それがさらに大腸通過遅延型、大腸通過正常型、骨盤の筋肉劣化で起きる機能性便排出障害の3つに分類されます。次の表や図で見ると分かりやすいと思います。

便秘を招く病気は?

さまざまな病気が便秘を招く原因となります。

  • 内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)
  • 代謝性疾患(糖尿病など)
  • 神経疾患(パーキンソン病、脳血管障害など)
  • 肛門疾患(痔、肛門周囲腫瘍)

などの病気が原因になります。

薬が原因となることもあります。咳止め(腸のぜん動運動を抑制)や抗パーキンソン薬、抗不整脈薬、感冒薬(消化管の緊張を低下)、降圧剤(消化管運動を低下)なども便秘を招くことがあります。

高齢者に便秘が多いわけ

高齢者に便秘が多いのは、体の変化によるものです。直腸感覚の低下や骨盤底機能の障害のほか、食事量や運動量が減るという生活の変化も影響しています。

便秘の悪循環に要注意

便秘は排便を我慢することで悪循環を招きます。図のように、排便を我慢すると便がたまって直腸が広がり、それに直腸が慣れてしまい、その結果、便意が起こりにくくなります。また、便がたまると、水分が吸収されて便が硬くなり排便時に痛くなるため、結果として排便を我慢し便がたまるという悪循環になってしまうのです。

便秘と診断する基準は

では、医師はどこで便秘と診断するのでしょうか。

  • 排便の4回に1回以上、強く息む必要がある
  • ウサギの糞状の便か硬い便である
  • 残便感を感じる
  • 直腸や肛門の閉塞感、排便困難感がある
  • 排便の介助が必要である
  • 自発的な排便が週3回未満

以上のうち2項目以上満たしていれば、便秘と診断されます。こういう症状が6カ月以上前から始まり、最近3カ月以上基準を満たす症状があれば慢性便秘です。

危険な症状に注意!

便秘は危険な病気の前兆であったりすることがあり、注意が必要です。「警告症状」とされるのは、排便習慣の急激な変化や予期しない体重減少、血便、発熱、関節痛などの症状です。

知っておいてほしい危険因子もあります。50歳以上での発症や大腸器質的疾患の既往歴や家族歴のある方が該当します。大腸がんは遺伝性が指摘されています。下剤を使っても症状が改善しないときは便の大腸通過時間などを調べる必要があります。

大腸がんが増えています

国立がん研究センターの調査では、大腸がんの患者が急速に増えています。患者数は胃がんと変わらないのですが、早期発見・治癒率が高い胃がんの死亡数が横ばいなのに対して、肺がんや大腸がんの死亡数は増え続けています。女性のがんの死亡数では大腸がんがトップです。

食事対策が大切です。まず水分を取ること

便秘の改善には、適切な食事と運動という生活習慣の改善と、腹壁マッサージが有効です。食事対策はまず水分を取ることです。それと朝食を取ること。食物繊維を取ることやヨーグルトなど善玉菌を増やす食品を取って腸内細菌を増やすことも大切です。朝食を食べると腸が目覚めます。

腹壁マッサージはおなかの上から手で大腸の形に沿って「の」の字にマッサージします。1日15分、週5回するといいです。

食物繊維をたっぷり取りましょう

食物繊維には水溶性と不溶性の2種類あります。水溶性食物繊維は水に溶け、腸内でゲル状になって有害物質を吸着し排出させます。カボチャ、サツマイモ、キウイ、海藻類などに豊富に含まれます。一方、不溶性は腸内細菌の分解を受けにくく水分を吸収して便の体積を増やし、腸も刺激します。切り干し大根、ゴボウ、ホウレンソウなどに豊富です。

植物繊維は1日当たり男性で20g、女性で18g取ることが推奨されています。でも現実にはどの世代の方もその量を取れていません。それぞれの食品に含まれている食物繊維の量は次の表の通りです。かなり食べないと、推奨量にならないのが分かりますね。

生活様式を変えましょう

生活様式も影響します。ちょっとした睡眠不足で便秘になります。以下の4点を注意してください。

  • 生活リズム
  • 十分な睡眠
  • 便意を感じたらすぐに排便
  • 毎朝の排便努力

便秘薬の種類も知ってください

便秘薬には、腸を刺激する刺激性下剤と便を軟らかくする浸透圧下剤があります。最近、腸での水分の分泌を促す新薬も出ています。刺激性下剤は数時間で効果が現れますが、腰痛や脱水症状を起こす危険性があるほか、長期間使うと効果が出にくくなります。浸透圧下剤である酸化マグネシウムは、高齢者では腎機能の低下で高マグネシウム血症のリスクが増えますので、用法用量を厳守しなければなりません。市販されている下剤はほとんどが刺激性下剤です。

まとめ

次の3点を注意してください。

  • 自分の便秘のタイプを知り、適切な治療を受けましょう。
  • 1日3回規則正しい食事を取りましょう。
  • 適度な運動とおなかのマッサージをしましょう。

そして、大腸がんなど隠れている病気に注意してください。症状が改善しない人は病院で診察を受けてください。

質疑応答から

Q 水分は1日に1~1.5ℓの水を取ることが必要だと聞いているのですが、その中にはコーヒーなども含めていいのでしょうか。
A 含めていいですが、コーヒーや紅茶には利尿作用があり水分を体外に出しますので、それを考えて飲んでいただければいいと思います。

Q 下剤の新薬はどうでしょうか。
A 新薬は昔からの薬と比べ高いですね。副作用は少ないですが、人によっては効きすぎますので、それを注意してください。


プロフィール

洛和会丸太町病院 消化器センター内科
副部長
尾藤 展克(びとう のぶかつ)

  • 専門医認定・資格など
    日本内科学会認定内科医
    日本プライマリケア学会認定医/指導医
    日本消化器病学会専門医
    日本消化器内視鏡学会専門医

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