- 開催日:2016年11月9日
- 講師:洛和会丸太町病院 リハビリテーション部 副係長 理学療法士 宮田 祐司(みやた ゆうじ)
はじめに
「リハビリ」と聞いて、思い浮かぶのは何ですか。手足の運動や、歩く練習、筋トレ…など、ほとんどの方が、整形外科(骨折、人工関節置換など)や脳神経内科・外科(脳梗塞・脳出血など)でのリハビリを思い浮かべると思います。しかし最近では、肺(呼吸器)や心臓(循環器)、胃腸(消化器)に対するリハビリも行われています。本日は、「心臓リハビリテーション(以下、心臓リハビリ)」についてお話しします。
心臓リハビリとは?
目的は、心臓や血管に病気のある患者さまの円滑な社会復帰や病気の再発を予防することです。医師や看護師、理学療法士らが、運動療法や食事指導、生活指導、病気の理解促進などを通じて、患者さまの治療意欲を引き出す、多職種によるチーム医療です。
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心臓リハビリって、どんな人が受けられるの?
次のような患者さまが心臓リハビリの対象になります。
- 急性心筋梗塞:
心臓の大きな血管が詰まって、血流の急激な減少により、心臓の筋肉が壊死してしまっている状態。(安静にしていても、20分以上激しい胸痛・冷や汗・吐き気が続く) - 狭心症:
心臓の血管の一部が狭くなり、心臓の筋肉に酸素が足りなくなっている状態(胸が締め付けられる感覚や、左肩~左腕にかけての痛み、息苦しさなど) - 心不全:
心臓の働きが低下して、全身に十分な血液が送り出せなくなった状態(息苦しさ、息切れ、体重増加=浮腫、意識障害など) - 下肢閉塞性動脈硬化症(ASO):
足の血管の動脈硬化により、慢性的に血流が悪くなっている状態(足が冷たく感じる、足のしびれ、間欠性跛行(はこう)、安静時痛など) - 大動脈疾患:
血管の壁が薄い部分がこぶのようになる大動脈瘤や、血管の壁に裂け目ができて剥がれる大動脈解離など(突然の胸・背中の痛みなど)。 - 心臓・大動脈の手術後
など。
心臓や血管が悪いのに運動してもいいの?
心臓リハビリは、心臓の治療後、ある程度症状が落ち着き、医師の指示が出た段階で始めます。最初は体を起こす程度から始め、徐々に活動量を増やしていきます。
運動したらどんな効果があるの?
運動の効果は、体力(運動耐容能)の改善をはじめ、血管の機能の改善、心臓や血管の異常のもとになる病気(冠危険因子)の改善、病気の症状の軽減(→死亡率や再入院の確率を下げます)、自律神経のバランス改善、不安やうつ、ストレスの軽減などが挙げられます。
- 体力(運動耐容能)の改善:
運動することで、筋肉の量が増え、血流が良くなり、体がたくさんの酸素を取り込むことができるようになります。→運動が楽にできるようになります。 - 血管の機能の改善:
硬くなった血管(動脈硬化)の壁の伸び縮みする機能を良くする効果があります。 - 冠危険因子の改善:
冠危険因子とは、高脂血症や高血圧、糖尿病、肥満などです。運動により、脂肪を燃焼し、コレステロールを減らす、血管を広げ血圧を下げる、血糖を消費する、脂肪が燃え体重が減る、などの結果、心臓や血管の病気の危険性を下げることができます。 - 病気の症状の改善:
コレステロールが減り、血管の柔軟性が増すことで狭心症の症状が軽減したり、血流の改善で閉塞性動脈疾患の症状軽減につながります。心臓の動きを手助けする手足の筋肉を鍛えることで、心不全の症状が軽減します。 - 自律神経のバランス改善:
自律神経には、激しい運動をしたときに働く交感神経と、落ち着いているときに働く副交感神経の2種類があります。交感神経が過剰に働くと、不整脈が出やすくなり、脈拍を適切に調節できませんが、運動により交感神経と副交感神経のバランスを改善させることができます。 - 精神的な効果:
動悸や息切れ、疲れやすい、胸の痛みなどの症状により、日常生活が制限される状態が続くと、精神的にも落ち込みやすくなりますが、運動することで気分転換にもなり、症状が改善することで精神的にも良い影響があります。
運動はどんなことをしたらいいの?
運動の方法・種類は、大別すると、ストレッチ、有酸素運動、レジスタンストレーニングがあります。
買い物なども運動になります。週1回、まとめ買いするより、1日1~2回、歩いて買い物に行くだけでも適切な有酸素運動になります
6~20の指数は、10倍すると心拍数(1分間)となる勘定です
息を止めて行う無酸素運動が中心です。スクワットやかかと上げなどで筋肉を鍛えます
自宅ではどんなことに気をつけたらいいの?
自宅では、自分で自分の体の変化などをチェックするセルフモニタリングをしてください。
洛和会丸太町病院では、外来心臓リハビリに通院されている方に「心臓リハビリテーションノート」という冊子を配布しています。活用して自己管理能力を高めましょう。
私も心臓リハビリをやってみたいけど、どうしたらいいの?
当院の心臓リハビリは、心臓内科医師の指示のもと、検査・治療と並行しながら実施します。
- 検査:
採血や心臓エコー、心電図など。 - 治療:
点滴や投薬、カテーテル治療など。 - リハビリ:
立つ・歩くなど、日常的な動作から開始、状態により持久力練習を追加します。 - 入院から外来への移行:
入院中に持久力練習まで実施した患者さまには、外来でのリハビリ継続を推奨します。症状改善に加えて再発の予防が重要なため、外来継続にて適切な運動負荷・習慣の獲得を目指します。外来移行後は、自宅での運動を継続実施することが重要です。
一般的なケースでは、心臓の治療とリハビリ入院が2週間ほど、その後、外来へ移行し、自宅で運動する傍ら週1~2回程度、病院のリハビリに通い、3カ月、5カ月後にリハビリの効果判定を受けます。2週間に一度、主治医の診察を受ける際に、リハビリ運動をする患者さまも多いです
おわりに
心臓リハビリとは、心臓・血管疾患の症状を軽減させるとともに、再発予防として行われるものです。
自分で症状の憎悪に気付き、早めに病院を受診できるよう自己管理(セルフモニタリング)能力を高める必要があります。
適切な運動負荷を知り、自宅で実施することが重要です。
質疑応答より
Q 筋トレや有酸素運動をしたら、心臓の能力も上るのですか。
A 適切な運動をすることで、心臓の機能が上がる場合があります。機能は変わらなくても、症状を改善できる人もいます。以前より疲れにくくなったと言われる方が多いです。もちろん、中には激しい運動は良くない方もいますので、主治医によく相談されてから運動されるとよいでしょう。
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