- 開催日:2017年12月7日
- 講師:丸太町リハビリテーションクリニック リハビリテーション部 理学療法士 山口 弘佑(やまぐち こうすけ)
はじめに
高齢者がふらついて倒れることは珍しくありません。原因の一つに姿勢やバランスが関係しています。今回は自分の姿勢やバランスを把握すること、自己管理できるようにすることについてお話しします。
姿勢について
良い姿勢について
良い姿勢とは以下のような基準を備えている姿勢のことです。
- 力学的立場:支える面で安定している
- 生理学的立場:疲労しにくい
- 運動生理学的立場:エネルギー消費量が少ない
- 心理学的立場:感情と心の持ち方が前向き
- 作業能率的立場:作業の効率が良い
- 美学的立場:見た目が美しく左右対称
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
悪い姿勢について
良い姿勢と反対に悪い姿勢は、支える面が不安定で重心の位置がずれています。そのために骨と筋肉のバランスが崩れ、エネルギー消費量が多くなります。また背骨がゆがんで弯曲に異常を来し、痛みや疲れを招きます。
バランスについて
本人の身体能力、動作の難しさ、バランスに影響する要因についてそれぞれ説明します。
本人の身体能力を構成するもの
身体能力には体を構成する神経や筋肉、感覚器官などが関係しています。そして目で見た情報は神経を通って脳に伝えられ、脳で情報が統合・処理されます。脳からの指令で運動や姿勢・バランスの保持が行われます。
動作の難しさ
動作の難しさは、動作が静的か動的かによって違います。例えば、座る、立つなどの動作は静的でバランスがとりやすく、歩く、ジャンプするなどは動的のためバランスがとりにくいです。
このほか重心の位置や、路面が平坦か凸凹か、視覚条件(開眼か閉眼か)などもバランスに影響します。
痛みと疾患
姿勢が悪いと、痛みが出やすくなります。
後弯前弯型の人は、膝の内側や前側に痛みが生じます。
疾患について
姿勢の影響を受けやすい疾患には、以下のものがあります。
- 変形性頸椎症
- 頸椎症性脊髄炎
- 肩関節周囲炎
- 腱板損傷
- 脊柱管狭窄症
- 椎間板ヘルニア
- 脊椎圧迫骨折
- 腰椎すべり症
- 変形性股関節症
- 変形性膝関節症
- 大腿骨頚部骨折
- 外反母趾
- 足底筋膜炎
機能障害について
悪い姿勢によって起こる機能障害には、以下のようなものがあります。
- 痛み:肩や膝などの関節が痛む
- しびれ:足先や肘などがしびれる
- 硬さ:肩が上がらないなど
- 弱さ:筋力が衰える
- 疾患と機能障害の治療について:疾患は医師が治療します。機能障害は理学療法士が治療します。
バランステスト
バランスが取れているかどうかを測るテストを紹介します。
直立位検査
ロンベルグ試験や片脚立位検査があります。
機能的検査
以下のような検査法があります。
あなたのバランスはどうでしたか?
1つでも基準を満たさないテストがあればけがや転倒のリスクが高くなります。
けがや転倒を防ぐエクササイズを以下に紹介します。
セルフエクササイズ
エクササイズのうち股関節・内転筋のエクササイズでは、骨盤が安定し姿勢が良くなります。
体幹を鍛えると腹圧が上昇し、脊椎が安定化して姿勢が良くなります。
脊椎と骨盤を安定させる筋肉は、腸腰筋、内転筋、腹横筋です。
股関節エクササイズでは足元のボールを前後にも動かしたり、仰向けに寝て片膝を立てボールをはさんだまま足を上げ下げする運動もあります。
エクササイズで良い姿勢に改善しけがをしないからだづくりをする。
今後も良い姿勢を保持し自己管理することが大切です。
まとめ
姿勢とバランスは、身体能力、環境など多くの要因が関わっています。
悪い姿勢は痛みを招き、多くの疾患や機能障害につながります。
バランスチェックで基準を満たさないと、ケガや転倒のリスクが高くなります。
バランステストで自分の状態を把握し、エクササイズで自己管理しましょう。