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医療 洛和会音羽病院

心臓カテーテル治療ってどんな手術? ~狭心症、心筋梗塞の診断・治療~

投稿日:2016年12月14日 更新日:


はじめに

本日は、日本人の死亡原因の上位を占める虚血性心疾患のうち、狭心症と心筋梗塞について、原因や症状、カテーテルを用いた治療法についてお話しします。

狭心症と心筋梗塞の違い

心臓の筋肉に血液を送り込み、酸素と栄養を届ける大切な働きをしているのが心臓を取り巻く冠動脈です。冠動脈は3本の主要動脈と分枝した細い動脈で心臓全体を覆っています。動脈硬化が進んで、冠動脈の血液の流れが悪くなった状態を狭心症といい、さらに状態が悪化して完全に詰まってしまった状態が心筋梗塞です。
狭心症、さらに心筋梗塞に至ると、非常に危険です。狭心症の場合は、胸の圧迫感など一時的な発作で済むことが多いのですが、進行して心筋梗塞を起こすと激しい痛みに襲われ、最悪の場合には心臓の停止・突然死を招くことがあります。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

狭心症とは?

原因

酸欠状態になった心臓が発作を起こすことで起こります。階段を上がったり、走ったり、緊張や興奮したときなどに、心臓に負担がかかると酸欠状態になり発作を起こすことがあります(労作性狭心症)。また、睡眠中や安静時に、冠動脈が痙攣(けいれん)し、血管が一時的に狭くなることによって発作が起こることもあります(冠攣縮(れんしゅく)性狭心症)。冠攣縮性狭心症の場合は、血管自体はきれいですので、カテーテル治療の対象にはなりません。

症状

胸に痛みや重苦しさを感じ、圧迫されたり、締め付けられたりするような痛みが5~6分間続きます。痛む場所は、左胸、胸骨の裏側などが多く、そのほか、のどやあご、左肩、みぞおちなどに痛みを感じることもあります。発作が30分以上続く場合は心筋梗塞の疑いがあります。また、発作が頻繁に起こる時は心筋梗塞になりかかっていると考えられます。

心筋梗塞とは?

原因

狭心症と同じように、冠動脈の動脈硬化が原因となります。血液の流れが悪くなる狭心症と違って、血管が完全に詰まってしまう心筋梗塞の場合は、その先の心筋の組織に壊死が起こり、激しい心臓発作を引き起こし、命を落とす危険性があります。発作が起きてから24時間以内の死亡率が高く、入院治療が必要となります。

症状

発作時は「えぐられるような」「胸の中がやけるような」「ナイフで突き刺されるような」「万力で締め付けられたような」などと表現されるほどの強烈な痛みに襲われ、重い場合は失神することがあります。圧迫感、吐き気、冷や汗、呼吸困難などを伴い、発作時間は狭心症よりも長く、通常30分以上つづくとされます。発症は命にかかわりますので救急対応が必要です。

狭心症・心筋梗塞の予防

予防には、動脈硬化にならないように血液をサラサラに保つ生活習慣をつけることが重要です。血管は加齢とともに弾力性が落ちていき、それだけ動脈硬化になりやすくなるので、日頃から以下のような危険因子を減らすような生活を心掛けましょう。

  • 高血圧・脂質異常症(高脂血症)・糖尿病
    高血圧状態や悪玉コレステロールの増加、高血糖状態が続くと動脈硬化を起こします。塩分・脂肪分の取り過ぎや、アルコールの飲み過ぎは控えましょう。
  • 肥満
    肥満は万病のもと。食べ過ぎを慎んで、適度な運動も必要です。
  • 過労・ストレス
    過労やストレスをため込んだり、興奮状態が続くと、血圧が上昇して血管に負担がかかります。睡眠を十分にとることも必要です。
  • 喫煙
    喫煙は血管を収縮させ動脈硬化を進行させてしまいます。

狭心症・心筋梗塞の診断

心電図や心エコー、血液検査、心筋シンチグラフィー(アイソトープ)、冠動脈CT、心臓MRIなどの検査をし、異常があると疑われた場合は、心臓カテーテル検査を行います。症状から急を要すると思われる場合は、直接、カテーテル検査を行うこともあります。カテーテルと呼ばれる細いビニールチューブを手足の動脈から心臓の血管へと送り込み、これを通じて造影剤を血管内に注入、冠動脈を撮影するものです。

狭心症・心筋梗塞の治療

薬物療法(血管拡張剤、ベータ遮断薬、抗血小板剤)や、カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)、冠動脈バイパス術があります。洛和会音羽病院での治療は、9割方がカテーテル治療です。冠動脈バイパス術は、外科的治療になります。

カテーテル治療

カテーテル治療は、30年ほど前から始まりました。シースと呼ばれる器具を血管につなぎ、シースを通して、エックス線で確認しながら、血管の中にガイドワイヤーとカテーテルを挿入します。カテーテルを血管の狭窄(きょうさく)部まで導き、血管を広げて血流を復活させてやります。当初はバルーン(風船)を膨らませて血管を広げるだけでしたが、再狭窄する割合が30~40%ありました。その後、ステントと呼ばれる金属製の網目状の管を入れる治療法が登場し、再狭窄率が20~30%に低下しました。さらに10年ほど前からは、薬剤溶出性ステントが登場し、術後1年以内の再狭窄率は10%以下になりました。
薬剤溶出性ステントは、ステントの金属に抗がん剤や免疫抑制剤が塗ってあり、それが溶け出して再狭窄を防ぎます。この方法は、血管に内膜が張るまでに時間がかかるという問題がありますので、血をサラサラにする薬を2種類、1年以上飲むことで血栓閉塞を防ぐ必要があります。

症例から

①60歳代後半の男性:労作性狭心症

眼科を受診(右眼網膜動脈閉塞症)した際、労作時に息切れがするとの訴えがあり、精査目的で心臓内科へ。糖尿病や高血圧、脂質異常、喫煙(1日に15本)といった冠動脈への危険因子をお持ちでした。心エコーで心臓後壁の壁運動の低下を、冠動脈CTで多枝病変を指摘され、心臓カテーテル治療を受けることに。カテーテル検査の結果、冠動脈の3カ所に狭窄が見つかりました。1泊2日の手術を2カ月間で計3回、通常使うものより細いカテーテルを用いて薬剤溶出性ステント留置術を行い、回復されました。

②70歳代半ばの男性:無症候性心筋虚血

糖尿病、高血圧、喫煙歴あり。自覚症状はありませんでしたが、健康診断で運動負荷試験をしたところ、陽性に。冠動脈CTを撮影したところ、冠動脈の一部に石灰化を伴う狭窄があることが分かり、入院治療することになりました。石灰化して詰まった血管を広げようと試みましたが、血管が硬すぎて、最小バルーンが通りませんでした。このため、ロータブレーターという器具(カテーテルの先端に小さなダイヤモンドの粒を装着した丸い金属性の器具が付いている)を用い、それを高速回転させることで血管内壁の石灰化した硬い部分を削り、バルーンを広げてステントを設置することに成功しました。

③40歳代後半の男性:急性心筋梗塞

胸痛を訴え受診されました。冠危険因子は脂質異常症と喫煙(1日に20本)。この方は8カ月前に薬剤溶出性ステントの留置手術をうけていましたが、緊急冠動脈造影をしたところ、以前に入れた2本のステントの間が詰まっていました。手術で細いカテーテルを入れ、血の固まりを抜いてやると血流が回復しました。発症後、すぐのカテーテル治療だったため、心臓へのダメージがほとんどなく、リハビリも順調に実施でき、12日間の入院後、元気に退院されました。

洛和会音羽病院の心臓内科

洛和会音羽病院の心臓内科には、不整脈治療(心筋焼灼術など)や、冠疾患カテーテル治療、末梢血管カテーテル治療など、心臓内科の専門医が集っています。(2016年4月から京都府立医大循環器内科の関連病院にも加わりました)心臓専用のカテーテル室もリニューアルし、スタッフ、医療設備ともそろっていますので、安心して治療に臨んでいただけます。心臓に関連することでお困りのことがありましたら、ぜひご相談ください。


プロフィール

洛和会音羽病院
心臓内科 副部長 [ICU/CCU室長 兼務]
横井 宏和(よこい ひろかず)
[冠疾患カテーテル治療部]

  • 専門領域
    冠動脈インターベンション、末梢血管インターベンション、急性期医療
  • 専門医認定・資格など
    日本内科学会認定総合内科専門医
    日本循環器学会認定循環器専門医
    日本心血管インターベンション治療学会認定医

洛和会音羽病院

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