- 日時:2018年9月26日
- 講師:洛和会音羽病院 外科 医長
医師 水野 克彦(みずの かつひこ)
はじめに
皆さんのなかには、急におなかが痛いなどの症状が出て、病院で診察や検査を受けた人も多いでしょう。そのとき、「もし、病気が見つかったら怖い」、「まさか、手術を受けることになったら」という不安が頭をよぎったのではないでしょうか。初めてのことに不安を抱くのは当然です。
そこで、本日はそういう場合に、診察や検査を受けるときの心構えや注意すべき点についてお話しします。
こんな症状はないですか?
病気を発見する手掛かりの一つは、本人の自覚症状です。外見からはうかがえないおなかの痛みや胸やけ、吐き気、便が出ないなどは、まず本人が気付くことが出発点になります。こうした症状がある、さらに症状が続くようだと皆さんは不安に思われることでしょう。検査は痛いのだろうか、苦しくないのか。もし、手術にでもなったら、怖さはより一層増していきます。
検査は怖い
大きな不安を乗り越えて、いよいよ病院で受診します。「もし、病気が見つかったらどうしよう」とまた不安を覚えます。
私は、消化器を専門にする外科医です。消化器とは、食道から胃、小腸、十二指腸、大腸など食べ物の通り道の臓器をいいます。診察や検査を行っていて、いつも残念なのが「もう少し早く検査を受けられていたら」ということです。病気の発見が遅れ、症状が悪化し、進行すればなお怖いことになります。
ですから、患者さんには一歩を踏み出す勇気をもって、病院に足を運んでもらいたいです。
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不安や希望は、言葉で伝えて
あなたは、勇気を振り絞って診察室に足を運びました。私たち医師は十分な時間を割いて症状や痛みなどについて問診し、あなたの話に耳を傾けます。しかし、あなたの症状や経過は、あなたしか知らないのです。不安要素も含めて、詳しく症状を聞きたいのです。「万が一、○○だったら困るので検査を希望します」とはっきりと言葉で伝えることが大切です。
「様子を見ましょう」に不安が
診察が終わって、医師から「様子を見ましょう」と言われました。あなたは、すぐに疑問を抱きます。「いったい何に注意して様子を見ればいいの?」「何日間、様子を見ればいいの?」など、次々に不安や疑問が頭に浮かびます。
こんなときは、「どのような症状が出たときに受診すればいいですか?」と尋ねてみましょう。小さな疑問でも、残さず医師に投げかけてください。
検査は痛い?苦しい?
では、実際の検査は痛いのでしょうか。苦しいものなのでしょうか。
採血は、多くても10ccほどです。
CT検査やMRI、腹部エコーは、放射線などを使って患部の様子を調べる検査で、痛みはありません。
上部消化管内視鏡検査は一般には「胃カメラ」と呼ばれるもので、食道からカメラのついた細い管状の内視鏡を胃まで通し、直接内部を観察します。胃カメラを飲み込む前には、鎮静剤で吐き気を抑えます。
下部消化管内視鏡検査は「大腸カメラ」と呼ばれるもので、主に大腸内に病変がないかを観察します。検査前に下剤を飲む必要があります。
検査自体に要する時間は胃カメラで10分程度です。最初はつらいかもしれませんが、検査の意義を考えてお受けください。
手術前の説明には同伴者を
検査が終わり、あなたは手術を受けることになりました。「手術は恐ろしいものではないか」「痛いのではないか」と、不安が一段と高まります。
手術日までに、私たち医師は患者さんに事前の説明を行います。今の病状や手術の目的・方法、改善が予想される点などについて、じっくりとお話します。可能であれば病状の説明は患者さん1人ではなく、ご家族などに同席してもらうのがいいでしょう。聞き漏らしや誤解を防ぐ意味もあります。
一番重要なのは、患者さん自身に理解してもらうことです。患者さんと医師の信頼関係はこうした機会に生まれます。
日ごろから注意すること
診察から検査へと進み、ようやく手術が終わって退院した後に注意すべきことをお話します。
まず、痛みなど不快な症状が続く場合は、遠慮なく病院で受診し、相談しましょう。特に、お住まいの近所に顔見知りのかかりつけ医があれば、日中は安心です。夜間救急での受診は、詳細な検査が制限されることが多いので、避けるべきでしょう。普段から顔見知りのかかりつけ医の存在が心強いものになります。
おわりに
体調に異変を感じ、何らかの治療が必要になったとき、不安に陥るのには珍しいことではありません。医師の診断や検査の際、必要以上に怖がらなくても大丈夫です。不安を取り除くには、正しく治療や検査などを受け、自分の今の体の状態をよく知ることです。
それが、あなたの健康な生活を取り戻す第一歩になるのです。
プロフィール
洛和会音羽病院 外科
医長
水野 克彦(みずの かつひこ)
- 専門領域
消化器外科一般 - 専門医認定・資格など
日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医
消化器がん外科治療認定医
日本消化器病学会専門医
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