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医療

普段の生活で体を動かしましょう

~いつまでも美しく健康に過ごすために~

投稿日:2019年7月10日 更新日:

はじめに

美しいとはどういうことでしょうか? 辞書で調べると、色、形、音などの調和が取れていて快く感じられるさま、人の心や態度の好ましく理想的であるさまと書いてあります。

これを見ると、「若い」は美しいことの条件ではありませんね。お年を召していても美しい方はたくさんいらっしゃいます。なぜ皆さん、ここに来られたのでしょうか。もっと美しくなりたいからではないでしょうか。体の動かし方を覚えて普段から体を動かしていただけたら、より美しくなることができます。

健康とは

では健康とは何でしょうか。健康の定義について、WHO(世界保健機関)憲章はその前文で「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます」と定義しています。

大きな病気にかかったり、持病があることは健康の条件ではないのです。病気にかかっていても健康な人は健康なのです。

いつまでも健康で美しい著名人は

皆さん、「いつまでも健康で美しい著名人は?」と尋ねられると、どういう人が思い浮かびますか。

三浦 雄一郎さん。2009年、86歳で南米の最高峰アコンカグア(標高6961メートル)の登頂に挑戦された人です。ニュースで見て、知っておられる方も多いと思いますが、医師に止められて登頂は断念され、代わって息子さんが雄一郎さんのリュックを持って登頂されました。

三浦さんは私たち理学療法士の日本理学療法士協会のポスターのモデルを務められ、「私は明日のために今を『あきらめない。』」というメッセージとともに写っておられます。いくつになっても夢に挑戦し続けることに共感し、協会のポスターに登場してもらいました。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

三浦さんとは

三浦さんのお父さんは山岳スキーヤーで、三浦さんの子どもたちも含め皆、山登りやスキーで活躍する家系です。

三浦さんの活躍の足跡を表にしました。1964年にスピードスキーで時速172.084キロメートルの当時の世界記録を樹立し、1970年にはエベレストのサウスコル8000メートル地点からスキーでの滑降を成功させギネスブックに掲載されました。2003年に70歳で、エベレストに当時の世界最高齢で登頂し、2013年には80歳で3度目のエベレスト登頂に成功し世界最高齢記録を更新しました。

でも、以前の三浦さんは違っていました

三浦さんの年表を見ると、53歳から17年間、ぽっかりとブランクがあります。実はこの時、三浦さんは身長164センチメートルで体重が90キログラム近くあり、狭心症発作、高血圧、糖尿病、高脂血症と生活習慣病のデパートのような状態でした。当時診察した医師から「余命3年」と言われたことがあるそうです。

そのとき、三浦さんの父が「99歳になったらモンブランをスキーで滑り降りる」と言い出し、とうとう達成しました。そういう父親を見て、自分ももう一度復活しようと自分を奮い立たせました。自分が何もしなくなったのは目標がなくなったからだと考え、エベレストに登る目標を立て、トレーニングを積みながらメタボを治しました。

三浦さんがやったトレーニングは?

三浦さんが始めたトレーニングは「ヘビーウオーキング」といって、足首や背中に重りを付けて歩くことです。片足に約4キログラム、両足で約8キログラム、背中に15~20キログラムの重さを装着し約10キロメートル歩いてトレーニングしました。いきなりできたわけではなく、少しずつ重さを増やして体を慣れさせ、数年でこの重さでトレーニングできるようになりました。

三浦さんの筋肉量を調べたところ、85歳で22.3キロありました。一般の方では、50代で18.2キログラム、60代で18.3キログラム、70代で18キログラムです。それらの世代と比べて約2割多く、大学で柔道やサッカーをやっている若いスポーツ選手と同じか、それ以上の筋肉量です。

実は年齢とともに減少する筋肉量

私たちの筋肉量は20代頃をピークに減っていき、50代頃から急速に減少します。筋力の衰えや筋肉量の減少を感じたら、「フレイル」が影響しているのかもしれません。

フレイル(frail)とは、加齢で心身の活力(筋力・認知機能・社会とのつながり)が低下した状態のことです。図のように、多くの人が健康な状態からこのフレイルの段階を経て要介護状態になると考えられています。

フレイルは何が悪いのでしょうか? 表を見てください。84カ月後の状態を見ると、プレフレイルの状態の人は生存率が80%、フレイルの状態の人は60%の生存率です。フレイルの状態では、生物学的に生存可能な年数が短くなります。

フレイルでの状態で起きる健康障害の危険度を見ると、転倒の発生は1.3倍に増え、移動能力の悪化が1.5倍で、死亡するリスクも2.2倍に増えています。高齢女性に限った調査では、移動能力やADL(日常生活動作)低下の危険性がさらに高いと報告されています。

フレイルチェック

自分がフレイルになっていないか、チェックしてみましょう。

「イレブンチェック」というテストがあります。11の項目をチェックし、Q3~Q11で左側にチェックした項目が6~9あった人は筋肉量が維持できている可能性が高いです。0~5の人は筋肉が弱まっていたり、健康に心配なところがあったりする可能性があります。

「フレイルチェック」というテストもあります。図の5項目のうち、3つ以上当てはまる人は「フレイル」、1~2つ該当する人は「フレイル予備軍」です。

しかし、フレイルは可逆的で、意識して行動すれば予防や回復が可能です。

行動次第でフレイルは改善します

フレイル調査の開始時点から1.5年後の変化を見ると、死亡する人もいますが、かなり多くの人が「前フレイル」状態に戻っています。「前フレイル」の人もかなりの人が「健常者」に戻っています。

フレイルは改善できるものです。運動と栄養、社会参加がポイントです。運動はまず、今より10分多く体を動かすことです。栄養は、バランスの良い食事をみんなで楽しく取ることです。社会参加は自分に合った活動を見つけることです。運動については厚生労働省が、今より10分多く体を動かそうという「プラス・テン(+10)」を呼び掛けています。

自分に合った運動を

健康な人のための身体活動量の新基準が作られています。表の通りですが、65歳以上の人は、強度を問わず身体活動(生活+運動)を毎日40分することが勧められています。身体活動は運動だけに限りません。生活の中で体を動かすことも含まれます。例えば、ラジオ体操10分+歩行20分+植物の水やり10分でもいいのです。

18歳~64歳の人は、3メッツ以上の強度の身体活動を毎日60分することが基準です。メッツとは運動の強度で、安静に座っているときの強度を1メッツとして計算し、3メッツは普通の歩行の強さです。

運動でなくても、家事などで体を動かすことでもいいのです。家事の運動量も多く、掃除、片付け(床拭き、風呂掃除、草むしり)を15分行うと、ウオーキング(時速6キロメートルの速度)の15分相当の運動量になります。

他にも早歩きをする、家電のリモコンを使わない、まとめ買いせずに日々買い物に行く、地域のイベントに参加するのも良い身体活動です。自分に合った活動をしましょう。

活動的な生活でフレイル予防

活動的な生活をすることが大切です。孤立したり家に閉じこもっているとフレイル状態になりやすく、認知機能も低下しやすいと指摘されています。週に4回以上出掛ける女性と比べ、あまり外出しない女性は1.7倍フレイルになりやすいです。また、身体活動が高いほど認知機能低下の危険性が低くなります。

まとめ

加齢は誰にでも訪れますが、「年のせい」と考えられてきた体や心の衰えの多くは、手入れ(運動や活動)を行うことで回復や予防ができることが分かってきました。日々、自分の生活に合わせて運動や活動をして、これからも美しく健康に過ごしましょう。

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