はじめに
「看護小規模多機能サービス」という言葉を知っておられる方はいらっしゃいますか? やはり少ないですね。聞き慣れない人がまだ多いと思います。介護保険がスタートした後、遅れてできたサービスで、まだ始まってから歴史が浅いですから。
介護保険が2000(平成12)年にスタートした後、6年遅れて2006(平成18)年に小規模多機能型居宅介護(小規模多機能サービス)が始まり、その後、2012(平成24)年に看護小規模多機能型居宅介護(看護小規模多機能サービス)ができました。ともに便利で利点が多く、もっと知っていただきたいサービスです。
なぜこのサービスが生まれたの?
小規模多機能サービスは、それまであった「宅老所」をモデルに介護保険に組み込まれたサービスですが、看護小規模多機能サービスは、日本看護協会が「在宅療養を支えるために訪問看護と小規模を合わせたサービスがあれば」と提案して生まれました。
京都市には、小規模多機能サービスは110事業所ありますが、看護小規模多機能サービスはまだ6事業所しかありません。ちなみに通所介護(デイ)は249事業所、グループホームは129事業所あります。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
小規模多機能サービスと看護小規模多機能サービスの違いは?
小規模多機能サービスは通所、宿泊、訪問介護の3つのサービスを提供し、看護小規模多機能サービスはその3つに加え、訪問看護を行います。ともに在宅での地域密着型のサービスで、事業所で通所(デイサービス)と宿泊のサービスを提供し、病院や地域と連携し訪問介護など他のサービスとも連携する点は同じです。ともに利用は登録制で、登録者数は最大29人です。
両方のサービスの介護保険の基本単位は別表の通りです。小規模多機能サービスは要支援の人も対象ですが、看護小規模多機能は要介護1以上の人が対象です。
看護小規模多機能サービスの特徴・登録制
看護小規模多機能サービスは登録制で、以下の点が特徴です。
- 月々の介護保険サービス料が定額
- 登録中は通所介護や訪問介護、短期入所に関して、他のサービスは利用できない(それまで利用していたサービスは終了)
- キャンセル料は発生しない
- 状況に応じて柔軟にサービスが組める
定額の単位・料金で何度でも利用でき、福祉用具や訪問リハビリ、居宅療養管理指導といった外部サービスも使えます。
特徴・ケアマネジャーも協働
ケアマネジャーが専任という以下のような利点もあります。
- 担当ケアマネジャーは看護小規模多機能(あるいは小規模多機能)サービスの専任
- 利用者にとって窓口が一本化し利用しやすい
- 状況に応じてより有効なプランを構築できる
専任のケアマネジャーがいつも事務所にいて、看護師と情報交換しやすいのも利点です。
特徴・同じ職員で4つサービスを提供
通所、宿泊、訪問介護、訪問看護の4つのサービスを同じ職員で提供するのも特徴です。
- 環境の変化を少なくして安心感を提供
- 通所⇔宿泊の移行がスムーズ
という利点があります。
利用者の全国平均を見ると、介護度は小規模多機能サービスが2.5、看護小規模多機能サービスが3.5です。
看護小規模多機能サービスを生かした支援の例
<医療処置が複数回必要な場合>
「インスリン注射が毎日必要だが、医療処置であるため宿泊できる施設がない」と困っていた人の場合、看護小規模多機能サービスを利用すると、服薬管理やインスリン選定の相談など主治医との連携もスムーズにいきました。基本365日のサービスである利点を生かせます。
<病状が不安定な場合>
「肝性脳症予防のため確実な薬の内服や点滴治療が必要な病状であるため、通所や宿泊介護に不安がある」利用者の場合、小規模多機能(看護小規模多機能でも)サービスでは看護師を毎日配置しており、自宅訪問も同じ看護師が対応し、利用者に安心感を持ってもらえます。
<ショートステイ対応>
「難病により経管栄養が必要な利用者がショートステイを希望するが、管を入れているため受け入れてくれる施設が少なかった」ケースでは、看護小規模多機能サービスの宿泊機能を生かし、レスパイトの要望に対応しながら医療処置も行えました。小規模多機能サービスの機能に加え、高い医療対応もできるのが看護小規模多機能サービスです。
<看取りにも>
「看護小規模多機能サービスの利用中に看取りの時期になったが、入院はせず自宅での最期を希望しているとき」は、自宅でも、看護小規模多機能サービスのデイサービスの利用や宿泊時でも最期を迎えられるように体制が整えられます。なじみの場所で、入院せずに最期を迎えることが可能になります。
小規模多機能の特性を生かした支援の例
次の2つの図を見てください。左のような介護の状態では、もし利用者が一人で過ごすことが危険になった場合、困ります。その場合は右の図のように、小規模多機能サービスを使ってデイサービスの利用時間を拡大し、一人で過ごす時間を減らすことができます。
もう一つ、左側の図のように訪問介護が1日複数回必要な場合、小規模多機能サービスを使うと、右側の図のように臨時訪問を使ったり、安否確認の電話を入れたりして柔軟に対応できます。他のサービスの場合はキャンセル料がかかりますが、小規模多機能では状況に応じて柔軟に対応できます。
最後に
看護小規模多機能サービスは、老衰やがん、認知症などがある方、医療処置が必要な方が自宅で生活を続けられるように支えていくサービスです。登録制の利用なので、なじみのスタッフや利用者同士の関係ができます。また、利用者の状況に応じて柔軟なサービスでの支援が可能です。
施設でどういうことをしているか、以下の写真を見ていただくと、より理解していただきやすいと思います。地域の人が訪れてフラダンスを披露していただいている様子と、リビングに掲示された利用者さんが作った作品です。楽しそうに過ごされているのが、伝わるかと思います。
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