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医療 洛和会音羽病院

感染防御機構と免疫

~風邪とぜんそくの分かりやすい話~

  • 2019年11月27日
  • 洛和会ヘルスケアシステム
    70周年記念講演・ディスカッション

投稿日:2019年11月27日 更新日:

11月27日は、洛和会ヘルスケアシステムの70周年記念講演として、大塚医院(京都市山科区)の大塚健院長が「感染防御機構と免疫 ~風邪とぜんそくの分かりやすい話~」と題して講演。続いて洛和会音羽病院 洛和会京都呼吸器センター 所長 医師 長坂行雄が「風邪とぜんそく」と題して講演した後、2人で地域での呼吸器疾患の現状や予防などについて話し合いました。

講演「感染防御機構と免疫 ~風邪とぜんそくの分かりやすい話~」

講師:大塚医院 大塚健院長

はじめに

風邪をひいたら熱が出ます。なぜでしょうか、という話をします。

体内にばい菌が入って風邪を引きます。すると、白血球やリンパ球が、そのばい菌をやっつけます。でも、生まれて初めて体にばい菌が入ったとき、白血球などはばい菌を殺しに行きません。まだ免疫細胞がばい菌を体に悪さをする物だと、識別できないからです。

ばい菌が体内に入ると、人間の体にある体温調整中枢の設定温度が40度に変わります。そうすると発熱し、その熱でばい菌を殺します。この熱を冷やすために汗をかきます。一度、これを経験すると、免疫細胞はばい菌を覚え、抗体ができます。

免疫とアレルギー

免疫細胞が、ばい菌ではないのにばい菌と勘違いして起きるのが、アレルギーです。感作といって、繰り返される刺激によって免疫細胞が機能してアレルギーを起こします。

皮膚にもアレルギーがあり、スギなどの花粉をばい菌だと勘違いしたのが花粉症です。洗剤などもずっと使っていると感作されて、アレルギーが起きます。

アレルギー性鼻炎とぜんそくは同じ症状で、気管の上の方で起きるのがアレルギー性鼻炎、下の方で起きるのがぜんそくです。アレルギー性鼻炎では苦しくても死にませんが、ぜんそくでは死ぬことがあります。ちなみに同じような呼吸器の炎症を起こしますが、COPD(肺気腫)は全く別の病気です。

自己免疫性疾患とは

同じ免疫機能が関係した疾患に、自己免疫性疾患があり、一般に膠原病と呼ばれます。自分の体の中の臓器を異物だとして免疫機能が働く病気で、関節リウマチや甲状腺に起きるとバセドウ病や橋本病です。

SEC(全身性エリテマトーデス)や自己免疫性肝炎や潰瘍性大腸炎も、この病気です。潰瘍性大腸炎は安倍首相が1期目でこの病気によって体調を崩し、首相を辞職したことで知られています。今は効果のある薬が開発され、首相も再登板しています。

ウイルスと細菌

風邪などの原因になるばい菌は病原体、つまり微生物です。病気を引き起こす微生物にはウイルスと細菌があります。

ウイルスが引き起こすのは、インフルエンザやはしか、風疹などで、細菌が起こすのは肺炎球菌による肺炎などです。

いずれも微生物ですが、ウイルスは細菌の50分の1と極めて小さく、細胞を持ちません。細菌はそれに比べ大きいです。ウイルスは仕組みが細菌と異なるため、抗生物質は効きません。ですから私たちは患者さんを診察するとき、まず細菌が原因か、ウイルスが原因かを考えます。治療方法が全く違ってきますから。

講演「風邪とぜんそく」(洛和会音羽病院 洛和会京都呼吸器センター 所長 医師 長坂行雄)

風邪とは

風邪はウイルス感染です。主に喉がやられますが、気管支や全身、胃腸にも影響することがあります。普通は数日で治ります。
その「普通」とは、高齢者でたばこをあまり吸っていなかった方たちです。たばこ病(COPD=肺気腫)があると「普通」ではなくなります。

風邪とぜんそく

風邪もひどくなると、気管支炎がひどくなってぜんそくに似た症状になります。風邪は、アレルギーの有無で悪化の程度が違います。アレルギーがある人が風邪を引くと重症化しやすいです。

風邪の症状として、喉痛、鼻汁、鼻閉、咳、たん、息苦しさ、呼吸するとき「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音がする喘鳴(ぜんめい)、頭痛、下痢の9つがあり、調べたところ、咳の症状あれば半数の方に3つ以上、喘鳴があると6割の方に4つ以上の症状が見られました。

風邪をこじらせると、症状が悪化します。気管支に空気が通りにくくなり、ぜんそくのような症状になります。たばこを吸っていた場合は、より頻繁に喉からゼーゼーという音が出ます。

風邪は気道炎症ですが、それが末梢に広がっていきます。風邪でゼーゼーと呼吸し、特に夜間に咳がひどく、ぜんそく状態のときは、ぜんそくの治療をすれば治ります。ぜんそくの吸入薬もよく効きます。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

呼吸とは何?

呼吸とは体の活動に必要な酸素を取り込み、身体活動でできた炭酸ガスを体の外に出すことです。

その際に大きな意味を持つのが肺活量です。肺活量は英語で、vital(生命の)capacity(大きさ)と言い、肺活量が多いほど長生きします。実際に肺活量の少ない人は早く死んでいます。肺活量を維持することは極めて重要です。たばこはこの肺活量を減らす一番の原因です。

喫煙をやめれば延命できる

性別、年齢別の喫煙率の推移は左の表のようになっています。年々減っていますが、なお喫煙者は多いです。
また、たばこを吸い続けた場合とやめた場合の余命の変化を年齢別のグラフにしたのが、右の図です。男性の場合、40歳でやめた場合は余命が3.5年違います。女性では同じ40歳でやめたら、2.2年違います。

2~3年の寿命の違いなら、好きなことをした方が得だと思う方もいるかもしれませんが、例えば肺気腫になった際、何年かの激しい息切れが続き、何度も救急車で病院に運ばれます。そして肺炎を繰り返します。呼吸困難になり、一冬に10回、20回と病院に救急搬送される人もいます。寿命だけでなく、そういう苦しみに遭わないように、たばこを辞めることをお勧めします。

風邪かと思っても危ない咳

2週間以上続く咳や血たんを伴う咳、大量のたんを伴う咳の場合は、必ず病院で受診してください。血たんがある場合は急性気管支炎の恐れがあります。

聴診器では何を聴いているの?

医者に診察を受けると、聴診器を当てられると思います。聴診器では、次のような胸の音を聴いています。

  • 肺胞の音(正常な場合は「スースー」という音です)
  • 喘鳴(ぜんそくなどのときは「ヒュー」という音がします)
  • クラック(肺炎などの際の音で「パリパリ」という音がします)

聴診器でこういう病気や異常が見つかります。

レントゲンでは何を見ているの?

咳などの症状があれば、肺のレントゲン写真を撮ります。もし異常な影があれば、肺炎やがん、結核が疑われます。
もし異常がないのに咳があれば、気管支炎やぜんそくの可能性が高くなります。
CTで調べることもあります。次の左の図の場合は、右下葉に肺炎がありCOPDであることが分かりました。
また、右の図は結核が分かった人です。普通のレントゲンでは区別が困難です。この方はすぐに隔離しました。

なぜ肺機能検査をするのですか?

肺機能検査をすると、ゼーゼーといわないぜんそくが分かります。また、COPDでは肺の傷み具合が分かります。いずれも治りにくい咳の代表格です。

気道の炎症

モルモットに咳の発作を起こさせると、気道上皮のせん毛が傷つきます。次の図の「誘発前」と「誘発1分後」を比べると、はっきり分かります。
その傷は、発作の1週間後もまだ残っています。咳は気道を傷つけます。ですから、咳の発作は我慢せず、素早い対応と予防が必要です。

たばこの消費量とCOPD死亡率

次の図を見てください。1920年~2000年の数字ですが、たばこの販売本数とCOPDで死亡する人の比率(人口10万人当たり)をグラフにすると、たばこの消費量と男性のCOPD死亡率は同じように増えています。
喫煙がCOPDとつながっていることがはっきり分かります。

吸入ステロイドの普及の効果

下の図を見てください。ぜんそくによる死亡者数とぜんそく薬である吸入ステロイド剤の販売額の関連を表したグラフです。ステロイド剤の販売額が増えるのにつれて、ぜんそくで死亡する人の数が減っています。

ぜんそくのステロイド剤は副作用がありません。怖がらずに使ってください。

高齢者は肺炎ワクチンを

2014(平成26)年10月1日から、高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンが定期接種となりました。

肺炎球菌には93種類の血清型があり、定期接種で使用される「ニューモバックスNP」(23価肺炎球菌ワクチン)はそのうち23種類の血清型に効果があります。この23種は成人の重症の肺炎球菌感染症の約7割を占めます。

ある程度、年齢が高くなると、肺炎にかかりやすくなります。次の図を見てください。基礎疾患があると、年齢に伴って重症の肺炎球菌感染が増えます。注意してください。

肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンを併用する効果

肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンを併用すると、肺炎の入院が減少します。

左側の図の、棒グラフの右側が「インフルエンザワクチンのみ」使用の場合、左側が「インフルエンザワクチンと23価肺炎球菌ワクチン」併用の場合です。効果が明確に確認できますね。
その併用が、肺炎に伴う医療費の減少にもつながっています。それを示したのが右側の図です。医療費の減少がはっきり示されています。

最後に

最後に復習です。風邪とは急性のウイルス感染です。主に喉がやられますが、気管支や胃腸、全身にも影響します。たばこを吸っていなければ数日で治ります。


ディスカッション

大塚医院 大塚健院長 (以下 大塚院長)
気管支ぜんそくの方は症状に波がありますね。ずっと薬を使っていた方がいいのでしょうか?

洛和会音羽病院洛和会京都呼吸器センター 所長 長坂行雄(以下 長坂所長)
症状がなくても、炎症が起こらないようにする予防の意味で使った方がいいです。患者さんが自分で判断して薬を減らされることがありますが、発作がなくても使い続けていただいた方がいいです。

大塚院長
使い続けても何ら問題がありませんからね。

長坂所長
10年、20年使っていても大丈夫な薬です。高血圧の薬も飲み続けて全く問題ありませんが、ぜんそくの薬もそれと同じです。

大塚院長
気管支ぜんそくには大気汚染とかいろいろな原因が絡んでいます。部屋をきれいにするのも必要な対策ですね。

長坂所長
大気汚染と洛和会音羽病院の受診者の数が相関しているという研究があります。
今年のインフルエンザはどうですか?

大塚院長
私の医院ではまだ患者さんは少ないです。

長坂所長
洛和会音羽病院も少ないですが、半分くらいの方が予防接種を終えておられますね。肺炎球菌ワクチンも半分くらいの方が接種しておられます。肺炎球菌ワクチンは誤嚥性肺炎にも効果がありますから、ぜひ接種していただきたいですね。


プロフィール

大塚医院
院長
大塚 健(おおつか けん)

 

  • 略歴
    京都府出身
    1991年 京都府立医科大学卒業、京都府立医科大学附属病院 第三内科(現 消化器内科)勤務を経て、2000年より大塚外科医院(現 大塚医院)を継承開業

洛和会音羽病院
洛和会京都呼吸器センター 所長
長坂 行雄(ながさか ゆきお)

 

  • 出身大学
    名古屋市立大学医学部 昭和47年卒
  • 専門医認定・資格など
    日本内科学会認定内科医/指導医
    日本呼吸器学会専門医/指導医
    日本感染症学会認定医/専門医/指導医
    日本アレルギー学会認定医/専門医/指導医
    インフェクションコントロールドクター(ICD)
    ECFMG certified
    臨床研修指導医
    日本胸部疾患学会認定医/指導医

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