- 開催日:2017年6月7日
- 講師:丸太町リハビリテーションクリニック リハビリテーション部 健康運動指導士 田路 真由(とうじ まゆ)
はじめに
サルコやロコモという言葉を聞かれたことはありますか?いずれも運動(不足)と関連が深い言葉です。本日は、サルコやロコモをご説明し、日常生活の中で運動がいかに大切かをお話しします。
死亡のリスク調査から
WHO(世界保健機関)による、世界的に見た死亡のリスク調査があります。それによれば、死亡リスクのトップは高血圧です。以下、喫煙、高血糖と続き、4番目に「身体不活動(運動不足)」がきます。5番目の肥満や6番目の高コレステロールよりも、運動不足が死亡を引き起こすリスクの方が高いことが分かります。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
サルコってなに?
サルコペニアとは、もともとギリシャ語の「サルコ=筋肉」と「ぺ二ア=弱い」をくっつけた造語で、「筋肉減少症」と訳されます。文字通り、高齢になるに伴って、筋肉の量が減少していく現象を指します。
太ももの画像です。黒く映っているのが筋肉で、20歳代女性の方が多いことが分かります。一般に、人間の筋肉は40歳ごろから減り始め、65歳ごろを機に減るスピードが速まり、80歳ごろにはピーク時の3~4割まで減ってしまうと言われています。
ロコモってなに?
ロコモティブシンドロームの略称で、「運動器症候群」と訳されています。運動器とは、体を動かすのに必要な骨や筋肉、神経などのことです。運動器の障害や衰えによって、歩行困難や要介護になるリスクが高まる状態のことをロコモと言います。2ステップテストや立ち上がりテストで判定することができます。
足の筋力が弱いと、大股で歩けなくなります。立ち上がりテストは、座った状態から両足または片足で立ち上がれるかを調べます。70歳以上なら、座っていた高さ10cmの台から両足で立ち上がれれば、70歳以下なら40cmの台から片足で立ち上がれれば、ロコモではないと判定されます。
7つのロコチェック
ご自分がロコモかどうか、次のような自己チェックの方法もあります。以下の項目に、一つでも当てはまれば、ロコモの可能性があります。
- 片脚立ちで靴下がはけない。
- 家のなかでつまずいたり滑ったりする。
- 階段を上がるのに手すりが必要である。
- 横断歩道を青信号で渡りきれない。
- 15分くらい続けて歩けない。
- 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である。
- 家のやや重い仕事(掃除機の使用や布団の上げ下ろしなど)が困難である。
介護とは
「要介護状態」とは、誰かの助けがないと日常生活が難しい状態をさします。要介護認定では、介護の必要度を以下のように分類しています。
- 要支援1、要支援2:食事や排せつなどは自分でできるが、日常生活の一部に介助が必要。
- 要介護1:歩行や立ち上がりが不安定。入浴などの日常生活の一部に介助が必要。
- 要介護2:歩行や立ち上がりが困難。日常生活全般に部分的な介助が必要。
- 要介護3:歩行や立ち上がりができないことがある。食事や排せつなど日常生活全般に介助が必要。
- 要介護4:歩行や立ち上がりがほとんどできない。理解力が低下。日常生活すべてに介助が必要。
- 要介護5:歩行や立ち上がりができない。理解力が低下。介助なしでは生活ができない。
サルコとロコモの悪循環
サルコぺニアで全身の筋肉量が減ると、転びやすくなります。転んで骨折し寝たきりの介護生活になると、体を動かす機会が減ります。そうなると、一層、筋肉量が減り、転びやすくなり…と、悪循環してしまいます。それを断ち切ることが大事です。
サルコチェック その1
皆さんも一度、やってみましょう。「指輪っかテスト」です。両手の親指と人差し指で指輪っかをつくります。足のふくらはぎの一番太い部分を指輪っかで囲んでみてください。輪っかで囲めなければサルコペニアの可能性が低くなり、ちょうど囲めると可能性があるとされ、隙間ができるようなら可能性が高いといわれます。
サルコチェック その2
年齢、身長、体重、腹囲、握力で計算ができます!
- 年齢 ( ) 歳
- 身長 ( ) m (例 150cm→1.5m)
- 体重 ( ) kg
- 腹囲 ( ) cm
- 握力 ( ) kg
- BMI(体格指数 肥満度の目安)
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)⇒ ( )
BMI22が一番良好な状態です。25以上なら肥満、18.5以下はやせ過ぎと判定されます。
BMIを用いて、以下の式で骨格筋指数を計算します。
【男性】
0.3626×BMI-0.047×腹囲-0.011×年齢+5.135
【女性】
0.156×BMI+0.044×握力-0.010×腹囲+2.747
骨格筋指数で、男性7.77、女性6.12未満は、サルコぺニア予備軍、男性6.87、女性5.46未満は、サルコぺ二アです。
サルコペニア肥満
サルコぺニアは一般に痩せている人に多くみられますが、太っていてもサルコぺニアである人もいます。それが「サルコぺ二ア肥満」です。
サルコペニア肥満は、筋肉が少なく、脂肪が多い状態です。生活習慣病にかかりやすく、歩行能力の低下が起きやすい状態で、結果的に介護・寝たきりになりやすい状態です。
どの体型の人が長生きしている?
図を見て、どの体型の人が長生きか、当ててください。
長生きしている体型は、上の2つ(標準体型とメタボ体型)です。
では、逆に長生きが難しい体型はどれでしょうか。答えは、サルコ肥満体型の人です。
まとめると
メタボ(肥満)であることに気を付けることも大事ですが…。
↓
それ以上に、特に高齢者は、サルコぺニアになることを予防することが大事です。
↓
それを意識して、適度な運動を日常生活に取り入れることで、元気に健康な毎日を送ることができます。
サルコ、ロコモは予防できる
最初に示した「世界的に見た死亡のリスク」の表をもう一度、見てください。このうち、2番目の「喫煙」を除く上から5項目(高血圧、高血糖、運動不足、肥満、高コレステロール)は、運動で防ぐことができます。
運動を始めるのに遅すぎるということはありません。以下にお示しするのは、私が働いている丸太町リハビリテーションクリニック併設の洛和メディカルスポーツ京都丸太町に入会された80歳代女性の数値です。入会時と1年半後を比べると、骨格筋量が増え、体脂肪率が下がり、バランス感覚が向上…と、すばらしい効果が表れています。
運動は1人ではなかなか続きにくいですので、友達と一緒にやるのもお勧めです。
厚生労働省は「プラス10」を呼び掛けています。1日のうちで、10分、時間を作り、運動をしましょうという呼びかけです。特別な運動でなくても、家事の合間にちょっとスクワットをしてみたり、片脚立ちをしてみたり、工夫するだけでOKです。
少しでも運動を続けることで、元気な生活を送ることができます。洛和メディカルスポーツ京都丸太町も、そのお役に立てると思います。ご興味がおありの方は、ぜひ一度、見学にお越しください。