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医療 洛和会音羽病院

誤嚥のご縁にならないために

~誤嚥性肺炎について知ろう~

投稿日:2019年2月27日 更新日:


はじめに

誤嚥(ごえん)とは、食べ物などを誤って食道以外に飲み込むことを言います。現在、日本人の死因の3位が肺炎です。その中で誤嚥性肺炎は、誤って気管に飲み込んだ食べ物が肺の中に入り、肺炎を起こすと考えられます。誤嚥を防ぐには、食事の際に正しい姿勢を取ることが大切です。さらに、肺に入った食物は口の中にあった雑菌などによって肺炎を起こすことから、口の中の健康を保つことも重要です。本日は誤嚥性肺炎を防ぐ正しい食事の取り方と口の中の衛生についてお話しします。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

誤嚥の仕組みと原因

通常、誤嚥すると人間の防御本能から、むせてしまいます。誤って気道に入った食べ物を吐き出そうとするのです。誤嚥に気付かない人、誤嚥を起こしやすい人はどんな人でしょうか。まず、飲み込む力の少ない人、むせる力の弱い人が挙げられます。このほか、脳梗塞やパーキンソン病に加えて、高齢者や認知症の方も誤嚥を起こしやすいといえます。声帯まひのある方や胃管を挿入しているなど、機械的な問題がある場合も考えられます。

誤嚥を防ぐには姿勢から

誤嚥を防ぐには、まず正しいポジショニング(姿勢)を取ることが重要です。あごが上がっていると、食べ物がのどを通りにくくなります。食事の際は必ずあごを引いて食べてください。次に、食べ物をかむときは、口を閉じてください。口を開いた状態での食事は誤嚥のリスクになります。食事介助をするときには、必ず下の方から口に入れるのが基本です。ベッドやいすの過剰なリクライニングも禁物です。ご本人ののどの位置を確認しながら食事介助をすることが大切です。

口腔ケアの重要性

誤嚥性肺炎の原因となる菌は、ほぼ口の中にいる菌(雑菌)です。口の中の衛生状態を保つことが誤嚥性肺炎の予防になるのです。口腔ケアの基本は歯磨きです。口腔内の乾燥を防ぐことも大切です。入れ歯ケアも忘れてはなりません。最も重要なのは、ご本人の口の中をしっかりと見てあげることです。口内炎や抜けかかっている歯、痛みを感じている歯があれば、歯科受診が必要です。歯の症状が進んでいないか半年から1年に1回は歯科の定期検診を受けるようにしましょう。

食事の内容にも注意が必要

誤嚥をよく起こす人は食事内容にも気を付けてください。サラサラの食べ物には「とろみ」を付けた水分に浸して食べさせてください。ポロポロとした食事(パンやご飯)には適度な水分を含ませて少量ずつ与えます。モチモチとした食べ物、特にイモやモチは粘り気が多く、食事の際は注意が必要です。また、のどに引っ付きやすいペラペラしたワカメやのりも要注意です。

病院で行う誤嚥性肺炎の治療

誤嚥性肺炎が起こった場合、病院ではどんな治療を行うのでしょうか。急性期の治療は、まず必要があれば酸素の投与を行います。このほか、抗生物質の投与や点滴、それに食事制限も加わります。いずれも肺炎の重篤化を食い止める療法です。急性期から回復期には食形態を徐々に上げていきます。リハビリでは特に言語聴覚士の介入を必要とすることもあります。口腔ケアには、急性期から看護師のほか歯科医師、歯科衛生士が加わり、リハビリを兼ねた誤嚥の再発防止に努めます。食形態は、ゼリー状の流動食からペースト状の食物、細かく砕いた刻み食、柔らかい食物まで徐々に一般食に近付けていきます。

そうは言っても原因は加齢変化

誤嚥のほとんどの原因は加齢変化や認知症の進行、脳梗塞の後遺症です。誤嚥から完全に縁がなくなることは避けられません。そこで、注目されるのがACP(advanced care planning)という考え方です。患者さんやご家族、医師などが人生の終末期における治療方針などを繰り返し話し合うものです。言い換えれば、患者さんの意向に沿った医療を提供することです。つまり、病気や認知症が原因で自分の意志を伝えることができなくなる事態に備えて、事前によく話し合い、患者さん本人にとって過不足なく医療やケアを受けられる仕組みです。昨年11月、厚生労働省はACPの愛称を「人生会議」に決めて普及を図っています。

救命と延命の境は曖昧

ある事例をご紹介します。認知症のある90歳の男性は何度も誤嚥性肺炎を繰り返しています。今回は特にひどい肺炎になりました。もう1人は60歳の男性です。今まで、特に大きな病気はなかったのですが、重篤な肺炎になってしまい、呼吸不全に陥りました。2つの事例では、いずれも、挿管しての人工呼吸が考慮されます。しかし、前者では、その行為自体が延命になる恐れが高く、後者では、救命につながる可能性が高いです。同じ医療行為でも、現在の状況や本人・家族の価値観によって意味が異なります。正解のない問題ですが大事なことは、ご本人・ご家族の価値観を鑑みながら、治療に当たる医療者と一緒に、なすべき医療行為に関して事前に相談することではないでしょうか。


プロフィール

[eyecatch]洛和会音羽病院 呼吸器内科
森川 昇(もりかわ のぼる)

  • 専門領域
    呼吸器全般
  • 専門医認定・資格など
    日本内科学会認定内科医
    結核・抗酸菌症認定医

洛和会音羽病院

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