- 開催日:2017年10月11日
- 講師:洛和会音羽病院 救命救急室 主席課長 片桐 円(かたぎり まどか)
はじめに
本日は、救命救急センターの役割や救急救命士の仕事、救急車を呼ぶ際に重要なこと、京都市の救急事情などについてお話しします。
救命救急センター・京都ER
私が働いている救命救急センター・京都ERがある洛和会音羽病院は、第3次医療機関に位置づけられています。第1次は一般の診療所、第2次は救命センターのない病院です。洛和会音羽病院は、民間病院としては、近畿地方で初めて第3次医療機関としての指定を受けました(2012年3月)。
365日24時間「断らない救急」を掲げている洛和会音羽病院は、過去10年間、救急車の受け入れ率(応需率)99%以上を維持しています。救急車の受け入れ拒否根絶のための砦ともいえます。
年間救急受け入れ実績:一昨年、昨年と、6,000件を超える受け入れ実績があります。(京都市内の全救急隊搬送実績は約72,000件)
ER型救急:専門領域を問わず、救急診療専門スタッフが24時間常駐し、1日に概ね80人の患者さまを診療しています。
京都の救急医療充実のために
京都府災害拠点病院に:2015年4月から、京都府災害拠点病院となり、災害時の傷病者の受け入れや医療救護班の派遣などを行う災害に強い病院となりました。
京都DMATの一員に:京都府緊急災害医療チーム(京都DMAT)の一員として、京都府からの要請を受けて府内全域の災害に出動します。このほか、全国規模の災害に出動するDMATチーム登録を現在、厚生労働省に申請中です。
大規模災害救助用救急車:大規模災害に対応できる医療器材を搭載した救急車です。東日本大震災の際は、福島県の病院に、医薬品など必要な医療器材を届けました。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
救命救急部発足
2015年4月、救命救急センター・京都ERの一部署として、救命救急部が発足しました。以下のような仕事を担当しています。
- ドクターカーの運用体制の充実:洛和会音羽病院を基点とした病院間搬送の強化や、災害現場へのドクターなどの派遣体制の確立
- プレホスピタルケアの充実
- バイスタンダーの重要性の啓発
- 地域活動
ドクターカーの活動
ドクターカーは、医師、看護師、救急救命士が同乗して、現場に赴きます。近隣の病院やクリニックで患者さまが急変された時、専用ホットラインを通じて救命救急センター・京都ERに出動要請がきます。このほか、事故や災害で出動した消防救急隊から消防指令センターを通じて出動依頼があった場合も、現場に急行します。
ドクターカーが対応した例:先日、1次医療機関へ受診されていた患者さまが急変され、当院ドクターカーチームが対応した以下のような事例がありました。
プレホスピタルケアの充実
救急隊員の皆さまへの研修:消防救急隊員のみなさまと症例検討などを通して、互いの救命救急技術の研鑽に努めるとともに、相互理解を深めています。
バイスタンダーの重要性の啓発
救急現場での、そばにいる人(バイスタンダー)の重要性をふまえて、応急手当や救命講習会を実施しています。
洛和会ヘルスケアシステムの全職員を対象に、年間約50回の救命講習会を開き、約1,000人が受講しているほか、一般市民向けに地下鉄山科駅前でまちかど救命講習会を開催したり、介護施設でご利用者の家族さま向けに講習会を開いています。
社会活動
地域の行事があると、救護班として出動します。
京都三大祭り(葵祭、祇園祭、時代祭)をはじめ、桜よさこい祭り(4月、京都市役所前)や京都学生祭典(10月、岡崎公園)、やんちゃフェスタ京都(11月、梅小路公園)にも救護班を出しています。このほか、松尾大社大祭(5月)や山科義士祭り(12月)、地域の運動会や防災訓練の際も、救護班を出しています。
京都市の救急を知ろう!
Q&A方式で、京都市の救急事情についてご説明します。
Q 京都市で一日何件、救急車が利用されるの? ①100件②180件③230件のうちどれでしょう。
A 正解は③。年間では、84,638件(平成28年)出動しました。
Q では、洛和会音羽病院単独では、年間何件?
A 約7,000件です。
Q 京都市消防局が持つ救急車の数は何台でしょう? ①26台②31台③42台のうちどれでしょう。
A 正解は②。昨年は梅津消防出張所に配置されました。
Q 救急車を利用される年齢で一番多いのは? ①5~10歳②40~50歳③65歳以上のどれでしょう。
A 正解は③。65歳以上が救急の57%を占めています。
Q 救急車を一番利用される区は? ①伏見区②右京区③左京区のどこでしょう。
A 正解は①。伏見区が16,666件、右京区が10,514件、左京区が7,975件でトップ3でした。
Q では、洛和会ヘルスケアシステムが所有している救急車の数は?
A 計5台(一般の救急車3台、ドクターカー1台、大規模災害救助用救急車1台)です。病院間の患者さま搬送などは、病院所有の救急車を用いています。
救急車を利用するには
119番通報をすると、各市町村の消防指令センターにつながり、必要な情報を聴取してくれます。
事前に頭の中で整理して落ち着きましょう。
応急処置が必要な場合は、電話で指示されます。
救急車の呼び方
119番につながると、次のようなやりとりが行われます。
119番通報⇒
「火事ですか? 救急ですか?」⇒
「救急です」⇒
「住所はどこですか?」⇒
「○市○町○番地です」⇒
「どうされましたか?」⇒
「父親が頭を押さえて突然倒れました」⇒
「おいくつの方ですか?」⇒
「65歳です」⇒
「あなたのお名前と連絡先を教えてください」⇒
「私の名前は○○です。電話番号は…」
救急車を呼んだ後、準備しておくこと
- 既往歴、現病歴について
- 飲んでいる薬(お薬手帳で確認できます)
- かかりつけ医
- 家族の連絡先
- 保険証、お金
これらが準備されていると、滞りなく救急活動が行われます。
人手がある場合は、救急車が来そうなところまで案内をすると到着が早くなります。
救急車が着いたときに伝えること
- 事故や具合が悪くなった状況
- 救急隊が到着するまでの変化
- 行った応急手当の内容
- 具合の悪い方の情報:持病やかかりつけの病院やクリニック、普段飲んでいる薬、医師の指示など。
重要なポイント
どこの具合が悪いかによって、伝えるべき重要なポイントが異なります。
最後に
症状に緊急性がなくても、「交通手段がない」「どこの病院に行けばよいかわからない」「便利だから」「困っているから」と救急車を呼ぶ人がいます。また、「平日休めない」や「日中は用事がある」、「明日は仕事」などの理由で、救急外来を夜間や休日に利用する人もいます。
救急車や救急医療は限りある資源です。
いざというときの皆さん自身の安心のために、救急医療の受診について、考えてみてください。
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