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医療 洛和会丸太町病院

動脈硬化は何でわかる? ~頸動脈エコー・血圧脈波検査~

投稿日:2018年4月18日 更新日:


はじめに

動脈硬化とは、本来弾力性に富む動脈が、文字通り硬くなることです。本日は、動脈硬化が引き起こす症状などをご説明した上で、動脈硬化の検査方法についてお話しします。

動脈とは

動脈とは、心臓から押し出される血液の流れるパイプのような血管のことで、全身に栄養たっぷりの血液を運びます。
動脈は高い圧力に耐えるため、三層からなる丈夫な構造をもっています。柔軟性や弾力性に富み、簡単に破れたり詰まったりしません。

ところが、食習慣、運動習慣、喫煙、飲酒などの生活習慣が、血管の動脈硬化を引き起こしていることがあります。
動脈が硬くなると、しなやかさが失われ、血液をうまく送り出せず、心臓に負担をかけます。また、血管の内側が狭くなったり、血管が詰まったり、血管が破れやすくなったりして、重篤な病気を引き起こす危険性が高まります。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

動脈硬化を起こしやすくするものは?

動脈硬化の危険因子には

  • 加齢
  • 冠動脈疾患の家族歴
  • 男性
  • 高脂血症
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 肥満
  • 喫煙
  • 運動不足
  • ストレス

などがあります。

動脈硬化がどのぐらい進んでいるか、ご存じですか?

動脈硬化は、しなやかで若々しかった血管が、老化して硬くもろくなっていくものです。
どの程度、動脈硬化が進んでいるかを調べる方法はいくつかありますが、血圧脈波検査、頸動脈エコーは、よく行われる検査方法です。

血圧脈波検査

脈波とは、末梢血管における血圧などの変化をグラフ化したものです。脈波の形をみることで、動脈硬化の程度が分かります。
CAVI(動脈硬化指標)検査と、ABI(足関節上腕血圧比)検査という二つの検査で診断します。
検査結果を同性、同年齢の人の平均的データと比べると「血管年齢」が分かります。

CAVI検査

動脈は血液を全身に送るポンプの役目を果たしています。そのポンプの内側の圧力(血圧)が変化したときのふくらみ具合を計ることで動脈の硬さを調べます。
柔らかでしなやかな血管は、血圧が上がると大きくふくらみます。しかし動脈硬化を起こした血管は、血圧が上がってもふくらみは小さいのです。
CAVI検査では、大動脈から足首までの動脈の硬さの程度が分かります。

動脈硬化症が進んでいるほど、CAVIの値は高くなり、9.0を超えると約半数が脳動脈か心臓の動脈である冠動脈の動脈硬化症を発症しているという研究結果もあります。

ABI検査 

下肢動脈に狭窄(狭くなる)や閉塞(詰まる)がないか、詰まりの程度が分かる検査です。間欠跛行、下肢の冷感、しびれ、腰部脊柱管狭窄症などの鑑別に用いられます。

脈波検査の方法

心電図検査と同様、ベッドに寝て計ります。両手両足にカフを巻き、心電電極・心音マイクを付けます。検査時間は約5分です。

検査結果報告書:書式はさまざまですが、いずれもCAVIとABIの検査結果が表示されます。

頸動脈エコー検査

頸動脈の動脈硬化を、エコーで評価する検査です。検査時に痛みはなく、寝転んでもらって検査します。首の部分にゼリーを塗り、プローブをあてて、頸動脈を観察していきます。

【観察するもの】

動脈硬化の有無

血管壁が厚くなったり硬くなったりしていないか観察します。

プラークの観察

血管の内側に隆起物(プラーク)がないか観察します。

詰まり具合の観察

頸動脈を血液が良好に流れているかどうか観察します。

実際のエコー画像

上下の矢印で挟まれたところが頸動脈です。詰まりがなく、ツルッとしています。

70歳代の男性の画像です。狭心症や下肢閉塞性動脈硬化症などの既往症がある方です。画像では、頸動脈の中に、白いボコボコしたものが映っています。動脈硬化ですが血流は流れています。

70歳代、高血圧で加療中の男性です。食事中、右手が急に動きにくくなり、立ち上がったところ右足も動きにくかったため、洛和会音羽病院救命救急センター・京都ERを受診、頸動脈エコー、MR、CTをとりました。頸動脈の中に、モヤモヤしたものが映っています。血栓ができて、右側に血液が流れていないことが分かります。

おわりに

動脈硬化は進行すると重篤な病気を引き起こします。検査は、いずれも痛くなく、短い時間ですみます。
検査に関しては、かかりつけ医や主治医にご相談ください。

質疑応答より

Q これまでこんな検査をしたことがありません。どうしたら受けられるのですか。
A かかりつけ医にご相談ください。必要なら紹介状を書いてくださりますので、病院で検査が受けられます。

Q 検査で動脈硬化が分かったら、どうしたらいいのですか。
A 主治医が診断して、薬物治療などを行います。

Q 動脈硬化は治るのですか。
A 血液をサラサラにする薬などはありますが、血管自体を若返らせるのは難しいと思います。現状を維持することが大切です。また、運動すれば血流がよくなりますから、適度な運動もいいと思われますが、いずれにしても主治医の判断しだいです。主治医とよく相談してください。

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