楽しく役立つ健康講演会

医療 洛和会音羽病院

生活習慣病と予防医学

~この街における
地域連携の取り組み~

  • 2019年10月2日
  • 洛和会ヘルスケアシステム
    70周年記念講演・ディスカッション

投稿日:2019年10月2日 更新日:

10月2日は、洛和会ヘルスケアシステムの70周年記念講演として、住田内科クリニック(京都市山科区)の住田鋼一院長が「生活習慣病と予防医学 ~この街における地域連携の取り組み~」と題して講演。続いて洛和会音羽病院 総合内科 部長 医師 谷口洋貴が「この街における地域連携の取り組み ~生活習慣病と予防医学~」をテーマに講演した後、2人で今後の地域医療の在り方や、病院と診療所が連携する「病診連携」について話し合いました。

講演「生活習慣病と予防医学~この街における地域連携の取り組み~」

講師:住田内科クリニック 住田鋼一院長

はじめに

私は山科区でクリニックをやっています。今日は生活習慣病と皆さんの健康管理についてお話しします。生活習慣病は文字通り、生活習慣が原因で起きる病気です。その予防のためにはどうしたらいいのでしょうか。実は薬を飲むよりも、まずは原因となっている生活習慣を直してほしいのです。医者は皆さんに薬なんか飲んでほしくないのです。そういう予防医学の勧めと、診療所と病院の連携についてお話しします。

生活習慣病とは

生活習慣病とは、運動不足や食事を中心とした生活習慣が原因となって起きる病気です。肥満や糖尿病、高血圧症、脂質異常症をはじめ、動脈硬化からつながる虚血性心疾患、脳血管疾患、そして、がんも含まれます。

また、生活習慣と関連のある疾患として、肝臓病、腎臓病、肺疾患、高尿酸血症(痛風)、アレルギーがあり、さらに生活機能障害(低下)をもたらす認知症、骨粗しょう症、歯周病なども生活習慣病と関わりがあります。

これらの病気は互いに関連し合っており、一つの病気だけを治せばいいわけではありません。文字通り生活習慣が原因となって長年かかって進行します。少しずつ良くしていくことが大切です。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

血管疾患のリスクを高める高血圧

高血圧になると、脳卒中での死亡率が約4倍、心筋梗塞での死亡率が約6倍に増えます。生活習慣病の一つである高血圧の治療は、それくらい重要なのです。

また、病院に入院する人は3人に1人が生活習慣病です。入院理由が脳血管疾患の人は全体の12.8%、がんが10.1%、心疾患(高血圧性のものを除く)が4.3%などとなっています。いずれも体を動かさないなど、生活習慣が理由で起こる病気です。その習慣を変えて、ぜひ健康に長生きしてほしいと思います。

介護の大きな原因も生活習慣病

次のグラフを見てください。介護が必要になった病気も、生活習慣病が多くを占めています。認知症が18%、脳血管疾患(脳卒中)が16.6%、心疾患(心臓病)が4.6%を占めています。

ではなぜ、生活習慣病が大病を引き起こすのでしょう。次の図を見てください。動脈硬化とは血管(動脈)にコレステロールがたまって内側が細くなった状態をいいます。血管をボロボロにするのが、生活習慣病です。それが心臓の冠状動脈に起きると心筋梗塞や狭心症、はく離した血栓が流れ出し、脳の血管に詰まると脳梗塞、腎臓の血管に起きると腎動脈狭窄症、首の血管に起こると頸動脈狭窄症、足の血管に起きると下肢閉塞性動脈硬化症になります。

これらの病気の原因が、あなたの生活習慣なのです。病気を予防するためには生活習慣を変えていくことが大事です。ごろっと横になってテレビを見ていてもいいですが、見ながら足を動かすとか運動する工夫をしましょう。

生活習慣病を予防するには、まず食事

生活習慣病の予防は、図のようなピラミッドを見ていただくと分かりやすいです。生活環境の改善による予防が1次予防です。続いて病気の早期発見が2次予防、病気の再発・重症化予防が3次予防です。

1次予防の生活環境の改善には、食事療法、運動療法、節酒、健診の勧め、禁煙、睡眠・休養、ストレスの軽減、歯の治療があります。難しいことではありません。努めて歩くようにして生活習慣を改善し、ストレスをためないようにしましょう。

食事は、バランスの取れたものを食べることです。家族みんなで、いろいろな食材を満遍なく取ることが大切です。また、塩分を取り過ぎると血圧が上がって循環器疾患のリスクが高まったり、胃がんのリスクが上昇したりします。摂取する塩分は、男性は1日7g、女性は8g以内に抑えましょう。食べ方も注意しましょう。うどんは麺だけを食べて、塩分の多いスープは飲まないようにしましょう。

運動療法の勧め ~プラス10の勧め~

普段から元気に体を動かすことで、糖尿病や心臓病、脳卒中、がん、足腰の痛み、うつ、認知症などになるリスクを下げることができます。毎日、今より10分多く体を動かしてみませんか。それが「プラス10の勧め」です。

現在、運動している方は、それに10分プラスしてください。買い物に行って、スーパーマーケットを1周プラスして歩いてください。それで、だいたい15分余分に歩くことになります。そういう風にして、無理せず「プラス10分」体を動かしてください。テレビを見ながらでも、椅子を使って屈伸するとか、あるいは体操を日課にするとか、生活習慣を変えて健康寿命を延ばしてください。

病気の早期発見

健診などで病気を早期発見するのも大切なことです。高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病のほとんどは自覚症状がありません。そのため、健診などで早期発見し治療することが重要になってきます。お孫さんに会いに行くつもりで、身近なかかりつけ医に来ていただければと思います。

地域に「根ざした」病診連携

今、より良い医療を提供するために診療所や病院が役割を分担し、皆さんを紹介し合う「病診連携」という住民、患者の視点に立った連携体制をつくっています。

「病診連携」では、こんなときどうするでしょうか。例えば、熱が出たとき-。

  1. 熱が出たが、元気
  2. 熱が出て悪寒・戦慄があり、しんどい
  3. 熱が出て悪寒・戦慄があり、動けない

1.は自宅で安静にする、2.は住田内科クリニックに行く、3.は救急車で洛和会音羽病院へ-が正解です。

では、こういうときは?

96歳の男性。元々、自分のことは自分でできる状態でしたが、「しんどい」という訴えがあり、病院で検査しましたが原因が分からず、自宅で経過観察になりました。でも、寝たきり状態が続くと足腰が弱くなります。2週間寝たきりの状態が続き、困った家族からかかりつけ医に相談があった-というシチュエーションを考えてみましょう。

こういう寝たきり状態が続いて全身状態が悪化するのを「負の連鎖」と呼びます。そういう状態になる前に相談する身近な場所が、かかりつけ医です。

「病診連携」ではこういう場合、かかりつけ医が洛和会音羽病院に連絡し、検査を行い現在の病状を詳しく把握します。体力の低下を招かないように必要に応じて洛和会音羽リハビリテーション病院に入院し、リハビリなどを行い、体力低下を防ぎます。そして退院後のリハビリの方針を決め、自宅環境を調整して退院し、自宅ではヘルパー派遣などを受けながらリハビリを続けます。これが病院連携の一つのパターンです。

洛和会音羽リハビリテーション病院に行くことで、これまで服用していた不要な薬も選択し整理できます。皆さんの個々の状況に応じてサポートできるのが、病診連携です。それをどういう風に活用するのか、かかりつけ医や病院に聞いてください。


講演「この街における地域連携の取り組み~生活習慣病と予防医学~」

講師:洛和会音羽病院 総合内科 部長 医師 谷口洋貴

はじめに

私は洛和会音羽病院の総合内科で部長を務めています。まず当院を簡単に紹介します。ベッド数548床で、そのうち一般病棟が415床、緩和ケア病棟が14床、認知症治療病棟などが119床で、救命救急センターを持ち、CT2台、MRI断層撮影装置2台、RI検査装置1台などを備えています。厚生労働省の臨床研修病院や救命救急センター、京都府災害拠点病院、地域医療支援病院、京都府がん診療推進病院などの指定を受けています。

近隣には、腎疾患に対する充実した総合診療体制を持つ洛和会音羽記念病院、地域包括ケアを支えるリハビリテーション病院である洛和会音羽リハビリテーション病院があり、これら近接する「音羽3病院」がそれぞれの個性を生かして地域の開業医さん(診療所)と連携して地域の医療を守っています。

生活習慣病とは

生活習慣病はかつて「成人病」と呼ばれていましたが、1980年代から生活習慣が深く関与していることが判明し、呼び方が変わりました。がん、脳血管疾患、心臓病の3大死因も生活習慣病との関わりが強いです。

生活習慣病のうち、糖尿病は患者が890万人(推定)いて、予備軍も含めると2,210万人に上るといわれています。高血圧は3,970万人(推定)、脂質異常症ははさらに多く、4,220万人(推定)に上るといわれています。

よく聞く「メタボリックシンドローム」という言葉があります。内臓脂肪症候群と訳されています。生活習慣病と似ていますが、「肥満」を中心に考えた言葉で、内臓脂肪に着眼し、内臓脂肪が多いことが生活習慣病や動脈硬化を起こすと考えられています。基準になる具体的な数値は表の通りです。

生活習慣病と洛和会音羽病院

生活習慣病を見つけるのは健診です。洛和会音羽病院では健診(1次健診)として、法定の特定健診、定期健診、がん検診、任意のレディース健診、PET-CT健診と、人間ドックを行っています。
健診は当院の健診センターのほか、かかりつけ医など地域の診療所でも行っています。1次健診で異常を指摘された際は、病院の各診療科で2次健診を受けることになります。

病診連携とは

病診連携とは病院と診療所との連携のことです。普段の診療は地域のかかりつけ医(診療所)に、精密検査や入院が必要になれば、かかりつけ医が病院に紹介してくれる仕組みです。病院での待ち時間が短いほか、紹介状なしに病院で受診する際に必要になる「選定療養費」もかかりません。

洛和会の病診連携

洛和会音羽病院では、診療所から病院を「紹介」してもらい、患者さんの症状が落ち着いたら、かかりつけ医のところに戻ってもらう「逆紹介」を行っています。

また、診療所で状態の悪い方がおられた場合、診療所の医師から当院の救急に連絡していただくと、状態によっては当院の医師などが救急車に同乗し、診療所に向かうドクターカーの仕組みがあります。

地域包括ケアシステム

要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで続けることができるように助け合う体制が地域包括ケアシステムです。それぞれの地域の実情に合った、医療・介護が一体となって提供される体制を目指しています。かかりつけ医を中心にして、私たち病院が助けるという仕組みです。行政と医療との連携も重要になります。

こういう体制が生まれたのは、団塊の世代が75歳以上になる「2025年問題」が背景になっています。2025年には国民の4人に1人が75歳以上になり、認知症の人も確実に増えると予測されています。それを支えるために生まれた仕組みです。

まとめ

洛和会ヘルスケアシステムは洛和会音羽病院、洛和会音羽記念病院、洛和会音羽リハビリテーション病院の3病院がそれぞれの性格を生かして連携し、地域の皆さまや開業医の方に貢献していきます。開業医の方々との連携はその要にあるものです。当会も「地域包括ケア」における地域医療を担う病院の一つです。

ディスカッション

洛和会音羽病院 総合内科 部長 谷口洋貴(以下 谷口部長)
地域医療の連携について総論は話しましたので、住田先生が経験された病診連携の実例を紹介していただけませんか?

住田内科クリニック 院長 住田鋼一(以下 住田院長)
以前、唇の動きがおかしい患者さんを診察したとき、こちらでは脳の検査ができませんので、洛和会音羽病院に検査をしていただき、そのまま治療をお願いしたことがありました。

谷口部長
病院にはそういう検査機器がありますからね。開業医の方にはぜひ活用してほしいです。

住田院長
洛和会音羽病院でMRI検査を受け、大きな脳梗塞が見つかり、すぐ専門医に治療をお願いできた例もあります。

谷口部長
病診連携は進んでいますね。その他の疾患ではどうですか?

住田院長
整形外科になりますが、腰痛を訴える患者さんが来られたのですが、以前、私が救急外来をやっていたときの経験からおかしいと感じて、洛和会音羽病院に紹介したことがあります。腰痛は大きな病気が絡んでいることがありますから。

谷口部長
腰痛は例えば尿路結石が絡んでいたり、いろいろな原因がありますからね。

住田院長
また年に数例ありますが、歩かせられない患者さんのときは洛和会音羽病院のドクターカーに来ていただきます。ドクターカーはありがたいです。

谷口部長
私たちも車内で治療ができるので安心です。病院は在宅生活を見据えた診療が重要な時代になっています。クリニックではどうですか。在宅のリハビリも重要になっていますね。

住田院長
当院でも在宅診療を行っていますが、在宅でのリハビリのウエートが大きくなっています。広い意味でのリハビリの専門スタッフが必要だと感じています。また、未病の方の治療が大切になると思っています。


プロフィール

住田内科クリニック
院長
住田 鋼一(すみだ こういち)

  • 略歴
    神戸市出身
    金沢医科大学卒業
    岸和田徳洲会病院
    洛和会音羽病院 総合診療科・腎臓内科・リウマチ科
  • 専門医認定・資格など
    総合内科専門医
    日本腎臓学会腎臓専門医
    日本透析医学会専門医
    日本内科学内科認定医

洛和会音羽病院
総合内科 部長
谷口 洋貴(たにぐち ひろたか)

  • 専門医認定・資格など
    日本内科学会認定専門医/認定医
    日本救急医学会救急専門医
    日本医師会認定産業医
    臨床研修指導医
    臨床研修プログラム責任者

洛和会音羽病院

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TEL:075(593)4111(代)

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