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医療 洛和会丸太町病院

その腹痛は大丈夫?

~胆石の診断から治療まで~

投稿日:2018年8月24日 更新日:


はじめに

胆のうは、肝臓の右下にぶら下がるようにしてある袋状の臓器です。胆管と呼ばれる管で肝臓と十二指腸をつないでいます。胆のうの役割は、肝臓でつくられた胆汁という消化液を一時的に貯めて水分を吸収し、濃縮します。食事の刺激によって胆のうが収縮すると、胆汁は胆のうから胆管を通って十二指腸内に流出し、主に脂肪の消化分解の手助けをします。胆石というのは、胆管や胆のうの中で胆汁成分が固まってできた固形物のことで、これによって生じる激しい痛みなどの劇的症状が胆石症です。

胆石症って何?

胆石に関連して起こる腹痛を「胆石発作」と呼ぶことがあります。これは、食後、特に脂肪食(油もの)を食べたあとに多いと言われています。痛みの部位は、みぞおちから右の上腹部で、背中や右肩が痛くなることもあります。胆石があると、急性胆のう炎を起こすことがありますが、そのときには、痛みと発熱以外に黄疸が出ることもあります。上腹部の痛み、発熱、黄疸がそろったときには急性胆管炎を併発していることが疑われます。ただ、胆石があるからといって、必ず痛みがあるとは限りません。胆石を持っている患者さんの約半数に腹痛があるものの、半数には症状がないとされています。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

出典「患者さんと家族のための胆石症ガイドブック」(日本消化器病学会)

胆石があると、がんができやすい?

少なくとも、現時点では胆石を持っているからといって、必ずしも胆のうがんになりやすいとはいえません。しかし、無症状でも胆石があると分かってからの期間が長い患者さん、胆のうの中に胆石が充満している患者さん、胆のうの壁が厚い患者さんなどは、胆のうがんに注意して経過をみていく必要があります。痛みなどの症状がある胆石の場合は、基本的に胆のう摘出術などの治療が必要になる場合がほとんどですので、専門医への受診をお進めします。

胆石は手術したほうがいい?

胆石による痛みがある場合は、何らかの治療が必要になります。胆石があっても痛みのない人は半数です。痛みのない場合、基本的に手術の必要はありません。ただ、将来的に痛む可能性が高い場合や、胆のうポリープのある場合は、胆のうがん発生の危険性もあるため、対応を検討する必要があります。

胆石の手術って、どんなもの?

胆石の手術は基本的に、胆のうごと取り出します。現在では、「腹腔鏡下胆のう摘出手術」といって、小さな傷で社会復帰が早くできる手術方法が第一選択ですが、胆石の状況や患者さんの状態によっては、おなかを開ける開腹手術を行う場合もあります。「胆のうが炎症を起こしていて摘出が必要なことが多い」「壁が厚くなっている場合、がんを合併している可能性がある」「胆石を取り除いても、胆石を再び形成する危険性がある」のがその理由です。

出典「患者さんと家族のための胆石症ガイドブック」(日本消化器病学会)

胆石手術の実際は

腹腔鏡下胆のう摘出手術の中で、最も普及している手術方法について説明します。おへそ、みぞおち、右わき腹、右肋骨の下あたりに穴を開けて手術器具を挿入します。へその穴からカメラを挿入し、残りの3つの穴から手術器具を使用して、胆のうを体外に取り出します。手術は全身麻酔で行い、手術時間は麻酔を含めて3時間、入院は3日から5日程度の期間が必要です。傷が小さいので体への負担が軽く、早期社会復帰が可能です。

出典「患者さんと家族のための胆石症ガイドブック」(日本消化器病学会)

胆石を薬で溶かすことはできる?

手術をせずに、薬で溶かすことのできる胆石は、コレステロール胆石(全体の60%)だけです。しかも、直径が15ミリ未満(できれば10ミリ未満)の小さく浮く胆石だけです。さらに石灰化のないコレステロール胆石のみ、治療の効果が期待されます。また、胆のうの働きが悪く、胆のうの中に溶かす薬が入らない場合は効果がありません。胆石を薬で溶かすときは「胆のうの働き(機能)が正常であること」という条件が加わります。これらのことを考えると、適応となるのは全体の約10%程度なのです。胆石の溶解に要する期間は、胆石径1ミリに対しておよそ1カ月だと計算して薬を内服し、有効か無効かを判断します。完全に溶けてしまうのは適応症例の約18%、再発は1年で17%、3年で40%というデータがあり、以降も溶解療法に使用した薬を飲み続ける必要があります。

小さく壊して取り除くことはできる?

では、胆石を小さく壊して取り除くことはできるのでしょうか。体外衝撃波(ESWL)といって、体外から患部に衝撃発生装置を当てて胆石を細かく壊す療法があります。胆石が完全になくなる可能性は55%、再発率は1年で20%、5年で40%程度と言われています。この療法の問題は、壊せると判断された胆石でも100%取り除くことができないことと、再発してしまうことです。10年間での再発率は60%と推定されています。また、治療経過中に何らかの理由で胆のうを摘出する手術になった例が36%に達したという報告もありますので、専門医とよく相談して治療を選ぶことが大切です。

出典「患者さんと家族のための胆石症ガイドブック」(日本消化器病学会)

胆のうを取り除いた後は通院が必要?

胆石症の治療として、胆のうを取り除いたあとは、多くの場合、問題なく経過しますので、自宅でゆっくりと療養すれば、病院に通う必要はありません。胆のうを取り除いたからといって、定期的に通院する必要はないのですが、腹痛などの症状があるときは病院を受診してください。

出典「患者さんと家族のための胆石症ガイドブック」(日本消化器病学会)


プロフィール

洛和会丸太町病院 消化器センター外科
副部長
米田 政幸(よねだ まさゆき)

  • 専門医認定・資格など
    日本外科学会外科専門医
    日本消化器外科学会消化器外科専門医/指導医
    日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医

洛和会丸太町病院

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