- 開催日:2016年7月22日
- 講師:洛和会丸太町病院 看護部 手術センター 主任 手術看護認定看護師 武内 未来子(たけうち みきこ)
はじめに
手術を受けることになれば、誰でも不安に感じます。本日は、不安を少しでも和らげていただけるよう、手術前後の検査や手術中の看護などについて詳しくご説明します。
洛和会丸太町病院には、3種類の手術室があります
手術ルーム1では、主に脊椎手術を行っています。Oアームという装置で、手術中も体内の様子が確認でき、精度の高い手術ができます。
手術ルーム2は、バイオクリーンルームで、人工関節置換術など、無菌的な手術が行われています。
3と4は、他の整形外科手術や、外科、泌尿器、耳鼻科などの手術を行っています。
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手術が決定したら
手術を受ける疾患によって、より専門的な検査が必要な場合がありますが、今回は一般的な検査について説明します。
- 一般採血検査
術前の状態把握に有効です。(全身状態や栄養状態が分かります。)
貧血・輸血の適応、感染や炎症の有無が分かります。
血糖値、腎臓や肝臓の機能が確認できます。
血液をさらさらにする薬(抗血栓や抗凝固薬)を飲んでいる方は、薬が体にどれだけの効果を及ぼしているかが分かります。 - 心電図
不整脈や心筋梗塞の有無を調べます。既往歴も分かります。
心エコー検査を追加し、心臓の動きや心臓内の血液の流れを見ます。 - 胸部レントゲン
心臓の大きさ、肥大の有無を調べます。
肺や気管支の状態が分かります。
肺の状態によってはCT検査を追加します。 - 呼吸機能検査
肺活量や、1秒間にどの程度息が吐ききれるか確認します。
全身麻酔時の酸素の取り込み機能を見ます。
手術後に肺の合併症を起こす可能性の有無を判断します。
もちろん、血圧や脈拍なども確認します。血圧手帳などがあれば、ご持参ください。
麻酔科医による術前診察
主治医から手術の説明を受けた後に、麻酔科医による診察を行います。
検査の結果から、以下のような身体的な診察を行います。
- 手術以外の現在治療中の病気について(高血圧、糖尿病、喘息など)
- 今までかかったことのある病気や手術を受けたことがあるか
- 手術を受けた際のトラブルの有無(麻酔の覚めが悪かった、痛みがあったなど)
- 現在服薬中の薬の量や種類
- アレルギーの有無(食べ物や、ゴム製品へのアレルギー)
(麻酔の成分の中に大豆や卵を使っているものがあります。靴下のゴムでかぶれるような人には必要な対策を取ります。) - 口が大きく開けられるか、頸椎症など首の動きに異常がないか
- 家族に麻酔を受けて調子が悪くなった人はいないか
- 家族に筋肉や血液の病気がないか(筋肉の病気の中で、麻酔の成分に反応する病気があります。)
入院前までの、家での過ごし方の注意点
血をさらさらにする薬(抗血栓・抗凝固薬)は、指示があれば休薬してください。
普段通りの生活で大丈夫です。食べ過ぎずに水分をよく摂り、可能であれば適度に運動してください。
当日入院で手術を受ける方は、最終の食事や水分摂取時間に気を付けてください。
入院・手術前日
入院時に追加の検査を行うことがあります。
病棟看護師から術前オリエンテーションを行います。
手術室看護師による術前訪問を行います。
手術室看護師による術前訪問
目的:カルテや患者さまの情報から、看護上の問題点を抽出し、看護計画を立てます。(皮膚が弱い、かぶれやすい…など聞かせてもらいます。)また、担当看護師と顔見知りになり、手術による不安などを和らげ、安心して手術が迎えられるよう援助します。手術中は、看護師が患者さまに代わって思いをお伝えします。
手術を受ける
手術室に入る前に、手術用の衣服を着た患者さまに、前室で本人確認をします。ネームバンドを確認し、どこの手術を受けるかを伺います。その後、手術室に入って麻酔を受けます。手や足が台から落ちないよう、バンドで固定します。
手術室からの退室
麻酔から覚めて血圧や脈拍、呼吸が安定していることを確認し、病室に戻ります。手術直後に意識はありますが、少し眠く感じることがあります。痛みがある場合は、我慢せずにすぐに看護師に伝えてください。
よくある疑問にお答えします
Q 手術前日から絶食をするのはどうしてですか?
A 食べ物を消化する時間を計算し、胃の中を空っぽにしておく必要があります。麻酔の影響で胃の中の食べ物が逆流すると誤って肺に入り、手術後に肺炎を起こす危険性があります。水分は指示された時間まで摂ることができます。
Q 家で飲んでいる薬は、手術の日も必要でしょうか?
A 血圧を下げる薬など、事前に必要と判断した薬は当日も飲んでいただきます。しかし、血液をサラサラにする薬(抗血栓、抗凝固薬)や、血糖値を下げる薬(血糖降下剤)は、薬の種類や手術によって飲む場合と飲まない場合がありますので、必ず確認し、指示を守ってください。
Q 手術室に指輪や入れ歯などを着けて入っていいでしょうか?
A 指輪やピアスのアクセサリーは全て外して来てください。手術中は体がむくみやすく、指を締め付け血のめぐりが悪くなることがあります。また電気メスを使用することがあるため、やけどの危険もあります。入れ歯は、口に呼吸の管を入れるため、着けていると外れて気管に入る恐れがあるので外して来てください。
Q 手術前にインフルエンザワクチンを接種したのですが大丈夫でしょうか?
A 基本的には1~2週間前に接種するのが良いですが、急な手術の場合は延期しないことがあります。ワクチンによる反応で熱が出ることがあるので、風邪との区別がつきにくいことがあります。熱が出た場合、可能であれば2日以上空けて手術することが望ましいです。
Q 普段からお酒をよく飲むのですが、麻酔に影響しませんか?
A お酒を飲む量や回数は麻酔には影響しません。しかし、お酒により肝臓の機能が落ちている場合は、使用する麻酔の種類や量を慎重に扱う必要があります。また、手術後、麻酔から覚めるまでに時間がかかることもありますので、お酒はほどほどでよろしくお願いします。
Q 手術後に目が覚めるか心配です。
A 手術中は麻酔科医や看護師が常にそばにおり、患者さまの状態を見ています。麻酔薬を調整し、中止することで手術後は徐々に目が覚めていきますので安心してください。
Q 手術後の痛みが心配です。
A 手術中から注射や神経ブロック、硬膜外チューブで痛みの調整を行っています。これらは手術後の痛みに対しても効果があります。また、点滴から痛み止めの薬を入れることもあります。手術の大きさや個人差によって痛みの感じ方は違うので、痛みは我慢せずにお伝えください。
おわりに
手術に関するギモンは解決したでしょうか? 手術に関することなど、何か気になることがありましたら、いつでも相談にいらしてください。お待ちしております。
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