- 開催日:2017年5月10日
- 講師:洛和会音羽病院 アイセンター 医長 丹羽 雄一(にわ ゆういち)
はじめに
緑内障は、中途失明の原因にもなる恐ろしい病気です。「今、見えていれば安心」と思うかもしれませんが、気付かぬうちに進行している場合があります。人は外界からの情報の90%を「見る」ことから得ています。「見える喜び」をこれからも持ち続けるために、緑内障という病気を知ってください。
物が見える仕組みと、白内障
緑内障について説明する前に、まず物が見える仕組みや、白内障についてお話ししましょう。対象からの光線は、角膜から入って、前房→(瞳孔)→水晶体→硝子体を経由して、網膜に像を結び、視神経によって脳で認知されます。
白内障は、文字通り、水晶体のレンズが白濁して、光が網膜に届かない病気です。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
緑内障ってどんな病気?
では、緑内障とは、どんな病気でしょう。「緑」とありますが、眼のどこかが緑色に変わるわけではありません。
緑内障の定義は、診療ガイドラインによれば、以下の通りです。
「緑内障は、視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である。」
何を言っているか、わからない人がほとんどでしょう。以下にやさしく説明します。
緑内障は眼圧で視神経が傷つき、ゆっくりと視野が狭くなっていく病気です
眼圧とは、目の圧力のことで、眼の硬さといってもいいでしょう。タイヤに例えれば、空気圧にあたります。正常な場合は、適度な圧力が網膜や視神経にかかっているのですが、緑内障の場合は眼圧により視神経が必要以上に圧迫され、血流が悪くなり、徐々に視神経の組織がやられていきます。
眼底検査では、視神経のへこみが大きくなっていることで緑内障と分かります。
緑内障の進行と物の見え方
緑内障の初期は、視野の中心を外れたところに暗点ができますが、自覚症状は少ないです。
中期になると、暗点が拡大し、視野欠損が広がりますが、この時点でも自覚症状は乏しいことが多いです。
末期になると、視野狭窄が進み、視力低下が明白になります。ここまでくると、気付きますが、放置すると失明に至る恐れがあります。
暗点ができると言いましたが、実際に視野が欠ける部分は黒くなるのではなく、白っぽく雲がかかったような、ぼやけた光景になります。
緑内障の特徴
- ゆっくり進行するため、初期の段階では自覚症状がない。
- 失われた視野は、治療しても改善しない。
ではなぜ、初期の段階では気付かないのでしょうか。理由は、両目があるからです。
緑内障は、片目ごとに発症するため、片目が緑内障になっても、もう片方の目が視野の欠損を補って、正常に見えるのです。
実は、40歳以上の20人に1人は、緑内障にかかっており、年齢が高まるにつれ、有病率も増えていきます。
しかも、ほとんどが未治療で、治療を受けている人は、わずか1割と言われています。
緑内障は、日本の中途失明者の原因の第1位を占めており、視覚障害者手帳を給付されている人の4人に1人がそれにあたります。
緑内障は進行を抑えることができます
緑内障は、目の圧力(眼圧)で視神経が傷つくことで発症します。一度弱ってしまった視神経は、元通りにすることはできません。
しかし、緑内障は、眼圧を下げることで進行を抑えることができます。
適切な治療を続けていけば、視野と視力は十分保っていけます。
治療方法は、点眼薬(薬物治療)と、レーザー手術・外科手術があります。
早期発見、早期治療が重要です。
緑内障と診断されても、毎日きちんと点眼薬をさして眼圧を下げてやれば、生活が不自由になるレベルの視野の欠けは防ぐことができます。
眼圧が正常なら大丈夫でしょうか?
実は、眼圧が正常なのに緑内障という「正常眼圧緑内障」の人は多く、日本人の緑内障患者の約7割が正常眼圧緑内障です。このタイプの緑内障は、視神経が弱く、眼圧に負けてしまう人に起こります。
この場合でも、眼圧を下げてやることで、緑内障の進行を抑えることができます。
緑内障の検査
- 眼圧測定:接触式と、非接触式(目に空気が飛んでくる)の2つの方法があります。
- 眼底検査:眼の奥(眼底)の血管、網膜、視神経を調べます。
- 視野検査:機器をのぞき、1点を注視したときに見える範囲(視野)を測定します。
緑内障の治療 薬物療法
点眼薬で、眼圧を下げてやります。目の中の水(房水)の量を減らすことで、眼圧を下げる方法です。房水が作られるのを抑える薬や、房水の排出を良くする薬があります。ちなみに房水は、目の中の水で、目の外側に出る涙とは異なります。
緑内障の治療 レーザー手術・外科的手術
薬で眼圧が下がらないときは、手術で治療します。房水の排出口である繊維柱帯にレーザーを当てて、目詰まりを減らしたり、房水の排出口を部分的に取り除いたり、切り込みを入れたりして房水の流れを良くしてやります。
緑内障 Q&A
Q 気を付けたほうが良い食べ物はありますか?
A 食べ物に制限はありません。また、緑内障に良い食べ物も特定されていません。
Q ブルーベリーの効果や、サプリメントで緑内障に効くものはありますか?
A 緑内障に関する研究結果はありません。
Q お酒はやめたほうが良いのでしょうか?
A 飲酒により眼圧は一時的に下がります。でも、飲み過ぎには注意してください。
Q タバコはやめた方が良いのでしょうか?
A 喫煙と緑内障とは直接の関係はありませんが、健康のために禁煙してください。
Q 運動しても良いのでしょうか?
A 運動が眼圧を下げます。逆立ちで眼圧は上がりますが、あまり心配いりません。健康のために、適度な運動をしましょう。
Q 読書やテレビで目を使いすぎるのは良くないですか?
A 眼を使うことで緑内障が悪くなることはありません。
Q 今はよく見えているので大丈夫でしょうか?
A 緑内障は早期では自覚症状がありません。早期発見のために検診を受けましょう。
Q 眼圧が正常なら大丈夫でしょうか?
A 眼圧が正常な緑内障もあります。日本人の緑内障の7割は眼圧が正常な緑内障です。
視野を維持していくために
緑内障になっても、日常生活に制限を加える必要はありません。
3つのバランスがとても大事です。それは、「定期検査を受ける」「リラックスして過ごす」「点眼薬を忘れない」ことです。
早期発見、早期治療を行うために、眼科を受診するか、眼底検査のある人間ドックを受けましょう。
プロフィール
洛和会音羽病院 アイセンター
医長
丹羽 雄一(にわ ゆういち)
- 専門領域
緑内障、白内障 - 専門医認定・資格など
日本眼科学会専門医
日本水晶体嚢拡張リング(CTR)講習会受講修了
トラベクトーム認定医
眼科ボトックス療法認定医
医学博士(滋賀医大)
洛和会音羽病院 ホームページ
〒607-8062
京都市山科区音羽珍事町2
TEL:075(593)4111(代)